第254話 メテオストライク
「オイオイ……、まさか……」
帝国側の動きに気が付いたティノ。
魔獣を相手にするのに集中していたせいで、気が付くのが遅れてしまった。
そのことに気付いた時、帝国側が何をするつもりなのかすぐに気が付き慌てるような声を漏らす。
「あいつら、この魔獣ごと……」
帝国側がやっていたのは、魔導士たちを集めての大規模破壊魔法。
しかも、集まった魔導士の数がかなりの大人数。
その人数での魔法となると、ティノだけでなく魔獣たちも一緒に攻撃をくらってしまうだろう。
このまま時間がかかればティノに倒されてしまうだろうが、この魔獣たちはかなりの戦力になる。
自分と一緒に攻撃をして倒してしまっては、その折角の戦力を失ってしまう。
そんなもったいないことをするだろうか。
「……必要ないって言いたいのか?」
少し考えて、ティノは考えを改めた。
帝国側はこの戦いに勝ち、ひとまず大陸の統一を果たすのを優先に考えているのかもしれない。
そのためには、最大のネックになるティノの始末を優先したのかもしれない。
ティノを始末出来れば、もう魔獣のことどうでも良いと考えたのだろう。
「撃て!!」
大人数によって集結させた魔力が一定数を越えた所で、ある魔法が発射された。
巨大岩石の落下によるメテオストライク。
土魔法によって凝縮された岩石が、落下と魔法による加速が相まって、音速レベルで上空からティノへ目掛けて落下してくる。
「このっ!!」
岩石が接近してきているのにも関わらず、魔獣たちは命令通りにティノへの攻撃を続けてくる。
このままでは、ティノは成すすべなく魔法の餌食になってしまう。
そのため、ティノはまず土魔法で手を作り魔獣たちの足を掴み、その場から動けなくする。
それ自体に長時間抑えて置ける威力はなく、単純にメテオストライクに対応するための時間稼ぎだ。
“パリンッ!! パリンッ!!”
「ぐっ!!」
ティノがメテオストライクに対応するために考えた時間は数秒。
そんな時間で魔法による転移をしている時間はないし、逃げることも不可能。
ならば、迎え撃つしかない。
魔導兵器による攻撃を防いだ時のように、魔力障壁を何重にも展開してメテオストライクを抑え込もうとすることにした。
しかし、一枚一枚に結構な魔力を込めているが、まるで薄いガラスを破壊するように速度を落とさず落下してくる岩石。
「こ、この野郎!!」
必死に魔力障壁を張り威力を抑えようとしつつ、ティノはあることも同時に行う。
“ドーーーン!!”
いくらティノが化け物染みた戦力を有していようとも、所詮は個。
しかも、色々と魔力を消費した状態で、多数によって集められた魔力に勝つのには不可能。
岩石はそのまま落下し、そのエネルギーによって大爆発が巻き起こった。
それに対応するように王国兵は防壁の上から一時的に下り、爆風が治まるのを懸命に耐える。
「…………な、何て威力の魔法を……」
爆風が治まると、防壁の前には巨大なクレーターができ上がっていた。
それを見た一人の王国兵は、あまりの結果に体の震えが止まらなかった。
「流石にこの魔法で生き残ってはいまい……」
遠く離れていても強い風に視界を塞がれていた将軍の一人が、噴煙巻き起こる魔法の結果に笑みを浮かべる。
彼らにとってティノは王国討伐に置いて最大のネック。
連れてきている魔導士の魔力を総動員してでも倒すべき相手。
何度も仕留めたと思っても姿を現すゾンビにも似た存在に、恐怖の対象でしかない。
多くの魔導士の魔力を犠牲にしても、この魔法で仕留めることができないとなると、もうどうしようもない。
「え~い!! 煙を払え!!」
「ハッ!!」
これまでのことから、煙のせいで結果が分からないことがもどかしく、将軍は兵士の一人に風を送って煙を払うように指示する。
指示を受けた兵は数人で魔法の風を起こし、メテオストライクによって巻き起こった土煙を払った。
「………………バ、バカな……」
土煙が払われて全貌が見えてきた時、帝国の将軍たちは目を見開いて驚きの言葉を呟いた。
それもそのはず、
「ぐぅ……」
跡形もなくなっているはずのティノが、ボロボロとはいえ膝をついた状態で生きているのが確認できたからだ。
「ハハ……、諦めずにがんばってみるもんだ」
魔力を大量に消費し疲労感が押し寄せてくるなか、ティノは笑みを浮かべて小さく呟く。
ティノがいるのは爆心地から離れた位置。
それが、ティノの生き残った理由だ。
魔力障壁を何枚張っても、メテオストライクを止めることは不可能と考えたティノは、考えを改めた。
止められないのなら、直撃をしなければいい。
障壁で僅かでも威力を抑え、それと同時に岩石に魔力を放出して落下地点を移動させた。
膨大な魔力と引き換えに魔法の直撃を回避することに成功したティノは、爆発によって高速で飛んできた石を雨のように受けて傷を負っただけで済んだ。
しかし、それらの衝撃は至近距離の銃の弾丸を薄い魔力障壁で受け止めたに等しい。
それが無数。
体中の痛みから察するに、所々骨が折れているだろう。
「グッ、グルル……」
「や、やべえな……」
メテオストライクをずらしたことで、魔獣も巻き添えを食らわずに済んだらしい。
しかし、ティノ同様大ダメージを受けて怪我を負ってボロボロになっている。
もう片方は爆心地に近かったせいか、衝撃に耐えられず体にいくつも穴を開けて血を足れ流して地に伏している。
出血量を見る限り生きているとは考えにくいし、探知をしても生命反応は感じられない。
生き残ったのが片方の魔獣だけだったということは、ティノにとってせめてもの救いだ。
「ガアァー!!」
「ぐぅ!」
体中から血を流しながらも、呻き声を上げて走り始める魔獣。
ティノを仕留めるという命礼をこなす為だろう。
しかし、これまでのように高速とは言い難い。
どこか痛めているのか、それとも……
「お前も魔力が減っているか……?」
どうやらこっちの魔獣が生き残ったのには理由があったらしい。
ティノのように魔力障壁を張るのではなく、自分の身を守るように魔力を全力で放出して衝撃を和らげたことで生き残ったのだろう。
魔力が底を付いているからこれまでのような動きができなくっている。
「かかれ!!」「殺れば昇格だ!!」「俺の物だ!!」
「っ!?」
ティノに向かって来るのは魔獣だけではなかった。
あの爆発で生き残ったことは心底恐ろしいが、魔力が無くなったと判断した帝国兵が今ならティノを仕留められるだろうと手柄欲しさに襲い掛かって来たのだ。
「フゥ~……しんどいな」
魔獣に帝国兵、ティノには回復薬を飲む間もない。
体中痛み魔力は残り少ない。
絶体絶命と言ってもいい状況。
「うがっ!!」「ぐあっ!!」
手柄欲しさに我先にと迫り来る帝国兵。
魔獣の攻撃を躱したティノに剣を振り下ろすが、連携もくそもない。
襲い掛かってきた2人の帝国兵の攻撃を躱し、ティノは拳を顔面にねじ込む。
「グルァ!!」
「ムンッ!!」
帝国兵の相手をしているうちに魔獣が襲い掛かってくる。
これまで程の威力はなくても、今のティノなら直撃したら即戦闘不能に追い込まれることだろう。
これまでと同じように生身の殴り合いでは分が悪い。
「グ、グルル……」
「帝国兵は結構いい剣使ってんな……」
ティノへの攻撃をした魔獣だったが、交差した後に脇腹を斬り裂かれていることに気付く。
その言葉通り、ティノは先程の帝国兵の剣を奪い取り、自分で使うことにした。
魔力のない状況でティノが信じられるのは剣の腕。
これなら魔力を使わずとも多くの敵を討ち倒せる。
「少しでも多く道連れにしてやる」
残り少ない魔力で、多くの敵を前にしたティノは、誰に言う訳でもなく呟いたのだった。




