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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第8章
235/260

第235話 将軍の出陣

今年初の投稿です。今年もよろしくお願いします。

去年は月1だけの投稿でしたが、今年からできる限り週1投稿できるようにしたいと思います。


「奴隷だけで勝利することは無理だったか……」


 帝国の皇帝ヴィーゴは、奴隷兵がやられて行く様につまらなそうに呟く。

 これまで奴隷兵に手こずっていた王国兵が、段々と成長するかのように抵抗の度合いが強くなっているのが気に喰わないのかもしれない。


「想定内です。むしろ、奴隷兵だけでここまで来られれば十分の戦果です」


「それは分かっていたが……」


 腹心のダルマツィオが、冷静な口調でヴィーゴに告げる。

 元々、奴隷兵たちの質が落ちて来ていたのは分かっていた。

 そのため、手を出しづらい冒険者にまで手を出すことになったのだ。

 王国に残った冒険者たちが参戦してくるという報復を受けるとは思っていたが、それはある程度計算で来た。

 そもそも、ヴィーゴは冒険者なんて職業の存在を疎ましく思っていた。

 手に入れた魔物の素材などを売って資金を得たりしているようだが、それを得る場所は帝国内部。

 つまり、帝国内の物を売り買いして資金を得ているも同義。

 それで得た資金が、帝国内に税金として一銭も入らないのが気に入らないらしい。

 今回のことで、ついでにギルドと呼ばれる物もこの大陸から消してしまおうということになった。

 むしろ、王国の冒険者たちが巻き込まれてくれて願ったりかなったりだ。


「後は将軍たちに任せましょう」


「暴走しないか?」


 冒険者たちを潰すにも準備は万全だ。

 帝国内の将軍たちには冒険者の対処を指示してある。

 将軍たちは、ヴィーゴが冒険者ギルドを潰そうとしているのは分かっている。

 倒せばヴィーゴへの株が上がり、地位向上と安定を得られると思っているらしく、モチベーションは高い。

 元々、今の将軍たちは3兄弟のうち誰にも付かなかった者たちばかりだ。

 死んだ兄2人についていた者たちは、当然ヴィーゴが皇帝になった時に降格もしくは粛清した。

 最初からヴィーゴについていたダルマツィオ以外は、信頼を全く得られていない。

 ここがその信頼を得るチャンスだと思っているはずだ。

 そのため、功を得ようと仲間割れしないかが、ヴィーゴには不安要素だ。


「恐らく大丈夫だと……」


「何故だ?」


 ヴィーゴの心配をよそに、ダルマツィオは平然とそれを否定した。

 理由を理解しているかのようだ。

 そのため、ヴィーゴは理由を尋ねた。


「奴らは仲が良くないですが、強さは認めあっています。他の軍の足を引っ張り会うようなことはないかと……」


「そんなことして俺の気分を害するような奴はもうここにはいないか」


 帝国の将軍は、馬鹿ではやっていけない。

 たしかに脳筋のような者もいるが、それはそれでちゃんと成果を出しているから生き残っているのだ。

 ミスすればすぐに降格とまでは行かないが、他の将軍たちとの差ができていいく。

 ヴィーゴに気に入られれば、右腕のダルマツィオ程とは言わないまでも優位な地位へと付けるかもしれない。

 その考えから、仲間の足を引っ張る者も出てくるかと思ったが、さすがにそれをした時のヴィーゴへの心証は地に落ちる。

 それを分からない者がいないというのは、ヴィーゴとしても好ましいことだ。


「ようやく出番か……」


「皇帝陛下へのアピールにはもってこいだな……」


「右腕はダルマツィオの奴が上手く治まったが、まだチャンスはある!」


「ここが勝負どころだ」


 奴隷兵が減り、王国側の兵と冒険者たちは勢いに乗っている。

 そこで、ようやく出動命令が出たことを喜ぶ者たちがいた。

 ヴィーゴとダルマツィオが話していた、帝国の将軍たちだ。

 3兄弟の誰につくかで悩んでいた者たちだが、それはある意味一番生き残る機会を考えた結果出した考えだった。 

 誰かについて失敗すれば、確実に死につながる。

 ならば、皇帝が決まってから結果を示すことで地位を得ればいいという判断だった。

 一番可能性が低かったヴィーゴになった時は、完全にダルマツィオの一人勝ちの状態になってしまったが、むしろそれでよかったという思いもある。

 二番手の地位が得られるチャンスがあるということなのだから。

 四人はそれぞれ戦う範囲を決め、その場所へ向かって自身たちの率いる兵たちを進軍させ始めたのだった。


「将軍たちが出撃しました」


「そうか……」


 将軍たちが鼻息荒く出て行ったのを見届けたダルマツィオが、ヴィーゴへと報告する。

 それに、ヴィーゴは頷きで返す。


「……例の策はどうなった?」


 報告を受けたことで、しばらく戦場ではたいした変化が起きないだろうという判断をしたからか、ヴィーゴは将軍たちのことはすぐに興味が失せたようにダルマツィオに問いかけた。

 数の有利を考えれば、将軍たちがそのうち有利にことを運ぶだろう。

 それを、もしかしたら加速させられるかもしれない策を裏で動かしていた。


「もうすぐという報告が入りました。上手いこといっているようです」


「そうか……、楽しみだ。マルコが慌てふためく姿が見えないのが残念だが……」


 昔から、「将を射んとする者はまず馬を射よ」という言葉があるが、ヴィーゴは違う。

 真っすぐ将を射るのがヴィーゴの戦い方だ。

 マルコを弱らせるための策が上手くいっているというダルマツィオの報告を受け、ヴィーゴは不敵な笑みを浮かべるのだった。



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