第227話 砲撃開始
書いてる途中の文章を予約設定しておいたら、日付を間違えていたらしく、投稿されてしまっていました。
中途半端で訳の分からない文章を見てしまった皆様、申し訳ありませんでした。
「5台か……」
トウセイ砦から、このピノパルーデ砦に王国軍が逃走をしていた時、あの魔導兵器の威力は見た。
一発で数千の人間を塵と化すことができる威力だ。
離れていれば、ティノなら躱すことができる。
しかし、それが分かっている帝国が、まともにティノへ撃つわけがない。
そのために、ティノは軍をダヴァレイ砦へ避難させたのだ。
「ティノ殿! 我々はどうすればよろしいですか?」
軍の避難を悟られて、追いかけられたらこの砦が無駄になる。
あの魔導兵器と引きかえなら、おつりがくる成果だ。
そのために、残った200人程の兵には役に立ってもらわなくてはならない。
「この城にまだ兵がいると分かせるように敵に姿を見せていてくれればいい」
「分かりました」
軍の大半が避難をしているのを悟られないためにも、残った兵には帝国へダミーとして姿を見せていてもらえればいい。
恐らく、帝国はティノに避けられないように、砦目掛けて魔導兵器の攻撃を放ってくるはずだ。
200人程しか残っていないのだから、ティノが砲撃を避けてしまっても構わないのだが、それではもう兵がいないことがバレる。
そのためには、ティノが砲撃を防がないとならない。
あの兵器を見た時から、ティノはこの先も続く戦いに邪魔になると思っていた。
兵器を潰す機会をどうにか作らなければならないと思っていたが、いくら奴隷兵とは言っても、ティノ相手では無駄に数を減らすだけだと判断したのだろう。
早々に勝負に出てきてくれたのには、ティノにとっても兵器破壊の機会ができて好都合だ。
「5発防がないといけないのか……」
数千を一撃で消し去るような威力を抑えるのは、ティノでも骨が折れる作業だ。
それを5発止めなければならないとなると、魔力が持つか分からない。
兵器破壊の機会ができたのはよかったが、それを一人で防がなくてはならないのには、ため息を吐くしかない。
「俺が兵器を破壊したのを見たら、全員ダヴァレイへ向けて逃げろ」
「分かりました」
帝国の魔導兵器は大きく、とてもすぐに量産できるような物ではない。
なので、壊してしまえば王国との戦争をやめて一時休戦にでもしない限り、再度投入できるとは思ない。
そんなことになれば、同じような兵器を王国側が作り出さないとも限らない。
あそこまでの威力を出すには、相当な人間を使い潰さなければならなくなる。
教育や訓練を行っていない奴隷兵を大量に集めた所で、使える代物ではない。
きっと魔導士もなかなり消耗させるはずだ。
魔導士は兵器以上に育て上げるのに時間がかかる。
しかも、魔導士王国ともいわれたハンソー王国が、今ではルディチ王国の領土になった。
愚王から救ってくれたと思っている元ハンソーの魔導士たちは、ルディチ王国軍に参戦を申し出てくれている人間が多い。
数で勝るとは言っても、帝国にはかなりの大打撃になる。
何としても兵器の破壊をしなければならない。
「じゃあ、行ってくる」
「はい」
今から強力兵器と対峙しなければならないのにもかかわらず、ティノは特に気負った様子なく砦から出て敵軍へ向けて歩き出した。
◆◆◆◆◆
「出てきましたね……」
「魔導砲の威力は見てるだろうに、よく出てこれるよな」
帝国軍の将軍のダルマツィオは、砦から出てきたティノを見て皇帝であるヴィーゴへ話しかけた。
ティノさえいなければの話だが、帝国としては兵器がなくても、数の有利で王国に勝利を収められると思っている。
王都で使うつもりでいたが、邪魔になる要素のティノはここで消しておきたい。
兵器を扱うヴィーゴとしても、兵器の威力には寒気がする。
それを見て、これだけの数が並んでいるのを見ても戦う気力が落ちないのには、ヴィーゴからしても敵ながら感服する思いだ。
「しかし、それも予想通りですね」
「あぁ……」
ティノが姿を見せ、王国軍が前の砦から逃走する際、兵器の威力を見せたのはわざとだ。
魔導兵器の脅威をティノに見せ、今の状況を作るのが目的だった。
兵器を使うことを見せれば、ティノが壊しに出てくると読んでいたからだ。
王国には、他に兵器を相手にできるような人間なんていない。
というより、この兵器に一人で挑むなんて馬鹿は、むしろティノくらいのものだろう。
それだけティノの実力が、馬鹿げたレベルなのだ。
「やれっ!」
「かしこまりました」
ティノを引きずり出せたのは予想通り。
ならば、ヴィーゴとしても好都合。
ここで、ティノを潰せるなら、この戦争の勝利は帝国のものだ。
その勝利のため、ヴィーゴはティノへの砲撃の指示を出し、それを受けたダルマツィオが部下へと砲撃開始の合図を出した。
「第1砲! 発射用意!」
「ハッ! 第1砲用意完了!」
合図を受けた砲撃兵の隊長は、魔力が込められてある魔導兵器の照準の最終確認を指示し、それを受けた照準操作兵がチェックを行い、確認終了を告げる。
「第1砲発射!!」
“ズドンッ!!”
次に砲撃兵隊長の合図を受け、係の兵が魔導砲発射のボタンを押した。
地面が揺れたと錯覚するような振動と共に、ピノパルーデ砦目掛けて魔導砲が発射された。
「来たか……」
強力な砲撃が向かって来ているのにもかかわらず、ティノは冷静に体内の魔力を練っていた。
これまでの長い年月によって、恐怖という感情が無くなったという訳ではない。
ただ、焦ったり恐怖をすることでミスが生まれる。
それが一番危険なことだと理解しているだけだ。
「ハッ!!」
気合いと共に、ティノは魔導砲を防ぐため、練った魔力を使用して魔力による防御壁を発動させたのだった。




