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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第8章
222/260

第222話 変態

明けましておめでとうございます。

昨年の内に投稿予定でしたが、バックアップが消えており急遽書き直していて遅くなってしまいました。

今年も本作品で楽しんで頂けたら幸いです。

「クソッ!?」「帝国の奴らめ……」


 恐らく前と同様に自爆攻撃を企んでいるのだろう。

 奴隷兵の子供たちが突っ込んでくることを、王国兵たちは苦々しい表情で呪詛の言葉を呟く。

 殺らなければこちらが殺られる。

 見た所10歳前後の子供たちを仕方がないとはいえ手にかけなければならない状況にされ、帝国兵を憎く思うのは当然のことだろう。


「ん!?」「何だ!?」


「様子が変だぞ!?」


 向かって来る子供の奴隷兵に向けて弓や魔法の遠距離攻撃を放とうとしていた王国兵たちだったが、その子供たちに異変が起きていた。


「グゥッ!?」「グァッ!?」「フグッ!?」


 奴隷の子供たちの足元に魔法陣が出現したと思ったら、どの子たちも頭や体を掻きむしるように突然苦しみだした。


「何だ!?」


 隊長のベルナルドも、本来ならば攻撃の好機と見て命令を出す立場なのだが、訳の分からない状況にその機を逃した。


「グアアアァァァ……!!」


「っ!?」「化け物!?」


 少しの間苦しんでいたと思ったら、子供たちの体が急激に変化し始めた。

 骨がきしみ、皮膚や肉が破壊と再生をするかのように繰り返す。

 精神・肉体のどちらか、もしくは両方がそれに耐えきれなかったのか、事切れるように倒れて動けなくなる者たちが多数だ。

 しかし、生き残った者は元の姿からは想像できないような異形に変化を遂げ、自我があるのかも疑わしいような奇声を発している。

 その姿を見た王国側の兵は、何が起きたのか理解ができず慌てたような声が広がる。


「グルルル……!!」


「っ!? マズイ!! 総員攻撃を開始しろ!!」


 化け物へと変化した子供は、目の前で武器を構えている王国兵たちを敵と判断したのか、じわじわと砦に向けて接近してきた。

 こちらを攻撃対象に設定したと判断したベルナルドは、慌てて兵たちに攻撃の指示を出した。


「ガアアァァーー!!」


「くっ!? お構いなしか!?」


 王国兵たちは指示通りに弓と魔法による攻撃を開始するが、たいして効いていないのか化け物たちは進行を止めることはなく、むしろ攻撃を受けた痛みで怒りが増大したのか、地を蹴る力に威力を込め、一気に王国兵たちに向かって突進をし始めた。


「グアッ!?」「ゴアッ!?」


 化け物たちは、矢や魔法が当たって傷を負っても関係ないかのように突っ込み、王国兵たちを殴り飛ばした。

 元々は子供だったが、肥大した肉体から繰り出す攻撃は常人を軽く凌駕し、その拳で王国兵の肉体をミンチへ変えていった。


「クッ!? 引けっ!!」


 数体だけならばその化け物も潰せることができるだろうが、変化を遂げた化け物は数千にも及ぶ。

 多少の矢や魔法を受けても怯まず、動けなくなるまで暴れる回る化け物たちに王国兵は手を焼かされる。

 多くの王国兵が殺られ、どんどん数が減らされていく。

 陣形も崩されて来たことで、化け物だけでなくその背後に控える帝国兵たちも攻め込んでくる可能性が出てきた。

 そうなれば軍に大打撃を受けてしまうと考えたベルナルドは、兵たちに砦への帰還を命令した。


「閉門!!」


 兵たちが砦内へ帰還を果たしたことを確認したベルナルドは、追いかけてくる化け物の侵入を阻止するように門を閉じさせた。

 元々数において不利な王国軍は、この砦の門を何重にもしてかなり強固なものにしておいた。

 攻城兵器でも破壊するのには時間がかかる代物だ。


「グルァァーー!!」


“ドゴンッ!!”“ドゴンッ!!”


 閉門して少し遅れ、化け物たちが追い付いてきた。

 しかも、化け物たちは向かって来た勢いそのままに門へと突進した。


「……おい、おい」


 拳が潰れるのもお構いなしに門を殴る化け物たち。

 無駄のように見えるその攻撃によって、強固なはずの門が少しずつヒビが入り始めた。

 その光景を見て、城壁から攻撃をしている王国兵たちは焦りを覚えた。

 それも当然で、化け物に変化して攻撃力が上がったと言っても、攻城兵器並の攻撃を繰り出してくるとは想像できない。


「マズイ!? このままでは破壊される……」


 化け物同士は攻撃し合わないだけの理性があるのか、殺到した化け物たちは交互に門を破壊しにかかる。

 門はどんどんヒビが入って行き、壊れるのも寸前に近付いてきた。

 その光景にベルナルドは慌てた。

 いくら化け物に変化したからといったも不死身ではない。

 王国軍も何もしない訳ではなく、砦の城壁から攻撃をしたことで化け物の数は減らしている。

 しかし、門を突破されたら大惨事になる。

 周囲を取り囲んで攻撃できるのなら化け物とはいえ対処はしやすいが、砦内で味方のことを注意しながらの戦闘となるとかなり手こずるだろう。

 それもまだ数百は残っている化け物だけでなく、帝国軍もなだれ込んでくる可能性がある。


“ドガンッ!!”


「「「「「っ!?」」」」」


 ベルナルドが不安に思っていたことが現実になり、とうとう化け物たちによって門が破壊された。


「「「「「グルルル……!!」」」」」


 両手の拳から血を滴らせながら、化け物たちはゆっくりと破壊した門から侵入してきた。


「近接戦闘部隊!! 化け物の侵入を防げ!!」


「「「「「おうっ!!」」」」」


 これまでの戦いで、化け物たちは自爆をする気配がない。

 それを感じ取ったベルナルドは、これまで待機していた近接戦闘の部隊をぶつけることにしたのだった。

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