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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第7章
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第206話 セコンドとの再会

 ハンソー王国とミョーワ共和国の救助依頼を受けたルディチ王国の国王マルコは、軍を率いてハンソーの都市奪還を開始した。

 ミョーワの援軍として来ていたハンソーの精鋭軍と合流し、まだ統制の取れていないイーヴォ率いる反乱軍は、ジワジワと領土奪還を余儀なくされて行く事になる。

 

「よう! セコンド!」


 ルディチ軍の進行と時を同じくして、ティノは新皇帝ヴィーゴと睨みあうミョーワの陣地に姿を現し、顔見知りの共和国副大統領のセコンドの背後から軽く挨拶を交わした。


「……ティノ、お前も動いてくれたのか?」


 セコンドが、大統領のプリモ・ロッシとイーヴォ(イラーリオ)の父サント・ディ・ハンソーに両国が生き残る提案したのは、一度は同盟を拒否したルディチ王国への助力の嘆願だった。

 その提案を受けたプリモとサントは最初の内は却下していたが、セコンドの説得によってその提案しか生き残る可能性が無いと理解したがゆえの決断だった。

 その提案をしたセコンドも、ルディチは動いてもティノまで動いてくれるかは賭けに近かった。

 現皇帝ヴィーゴの兄サウルを騙すのに、ミョーワは以前ティノに利用された事がある。

 その時以来の再会だが、今回はティノの戦力が救いの為、セコンドはその事は忘れて対応する事にしている。


「当たり前だろ」


「……ティノか?」


 振り返ったセコンドの前には、顔の上半分を覆い隠すような仮面を付けたティノがいた。

 その事を不思議に思ったセコンドは、疑問の声を上げたのだった。

 セコンドとも出会って長い年月が経過している。

 そろそろティノが老けていない事に気付かれる可能性があった為、念の為ティノは仮面を被ってセコンドの前に現れたのだった。

 ティノは何の根拠も無いが、数年前から自分の不老のスキルは他人に知られる事によって消え去るスキルだと感じている。

 本当に根拠も無く、もしかしたら他人に知られても何の変化も起きないという可能性も考えているが、胸騒ぎが収まらない為、容姿を隠すという選択に達したのだった。


「勘違いするなよ。お前らに手を貸すのはルディチの為だからだ」


 ティノの建前的には言った通りだが、本音としては長い間慣れ親しんだ土地を引っ越すのが嫌だからと言う単純な理由からである。


「……そりゃそうだ」


 ティノの思惑はセコンドにも理解できないが、言っている事が正しい事は理解できる。

 ハンソーやミョーワの国が無くなれば、この大陸では帝国とルディチだけになる。

 建国時よりも拡大したとは言え、国としての規模の差はあまりにも大きすぎる。

 とてもではないが1対1では勝ち目がない。

 その為には、ルディチとしてもこの2国に今消えられるのは迷惑な話である。


「ここでミョーワが潰れてしまったら、ルディチが次にやばくなるからな……」


 セコンドもその事は理解しているだろうから、ティノは素直な言葉で述べた。


「分かっている。それでもお前の化け物じみた戦力がある事は心強い」


「化け物とは失礼だな……」


 セコンドの軽口に、ティノも軽い口調で返した。


「お前が化け物でなかったら何だって言うんだ?」


 帝国との戦いが始まってからここしばらく忘れていた笑顔でセコンドは話しかけた。


「まぁいい、言っては何だが、俺が来たからって帝国に勝てるとは限らないぞ?」


「安心しろ、我々もそこまで都合よく考えてはいない」


 どうやら、セコンドはティノがいれば勝てると言った感覚を持っているような雰囲気を持っているように思えたが、どうやらちゃんと理解していたようだ。


「それで? どうやって帝国を打ちのめすんだ?」


「お前は好きに攻撃をして敵を少しでも減らしてくれれば良い。帝国の敵兵の生き残りを我々が相手する。単純な作戦だろ?」


「単純すぎる。奴らはゴキブリのように数を増やす。上手く大量に潰せたからと言って、次から次へと増えて来るぞ?」


 帝国には沢山の奴隷兵が存在する。

 今回のミョーワとの戦いでは、幾度となく奴隷兵による自爆攻撃を行って来て、ミョーワに大打撃を負わせてきた。

 更に、減った分だけ補充を行うから手に負えないと言った所である。

 

「分かっている。しかし、それしか我々には奴らに勝つ……いや、撤退させる事方法は無い」


 帝国の奴隷兵の中には、以前までヴィーゴの兄のセルジュやサウルに仕えていた実力ある戦闘員も紛れている。

 ヴィーゴが皇帝になった時、セルジュやサウルのような無能に付いていたような見る目の無い奴は、自分への忠誠が期待できないと思い、奴隷兵として使い捨てる事にしたのだった。

 そのような連中は自爆などではなく、普通の兵のように戦わせるようにしている。

 自爆兵と実力ある戦闘兵を上手く使いこなし、本隊は痛手を負う事無く有利に事を運ぶのがヴィーゴのやり方の様である。


「まぁ、なるべく頑張ってみるが、俺自身が危なくなったらさっさとお前らを見捨てて逃げるからな?」


「……はっきり言うんだな。そんな風にならない事を期待しているよ」


 ティノの性格を何となくだが知っているからこそ、そう言った無責任な事を言われても、セコンドは腹を立てる事なく対応した。


「そうだ! まだ大統領には会っていないんだろ?」


「そういえばこれまでちゃんと挨拶した事なかったな」


 革命軍の時から何度となく顔は見ているが、よくよく考えてみたらちゃんと挨拶をした事は無かった。

 ミョーワ内で色々と動き回り、あまり良い印象を持っていない事は分かっているが、この機会に挨拶をしておく事にした。


「ついて来てくれ。紹介するよ」


 大統領のプリモ・ロッシに会いに行く為、ティノはセコンドの後に付いて行った。


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