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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第7章
201/260

第201話 崩御

 ティノから逃げ出したイーヴォは、それから姿を消して見付ける事が出来なかった。

 何を企んでいるのかは分からないが、ルディチ王国に対して進軍するような雰囲気を周囲からは感じ無いので、どうやら別の事を企んでいるのだろう。

 何にしても、ティノはルディチの家に帰り、ティノが帰って来た事で大喜びしたミルコの相手をしてしばらく過ごす事になった。

 そんなティノが過ごすルディチ王国に、突如デンオー帝国の皇帝ダヴィドが崩御したとの知らせが入って来た。

 突然の知らせでルディチやハンソー、ミョーワの3国は驚きを隠せないでいた。

 元々長男セルジュ、次男サウルの二人が敗北して命を落としてから少しずつ体調を崩し始めたとの事だった。

 皇帝の後釜には自動的に三男のヴィーゴが皇帝の地位に就く事になったらしい。

 この事から、3国ではヴィーゴが食事に少しずつ毒を加えて毒殺したのではないかと言う噂が流れた。

 その噂が帝国にも流れたが、そんな事をしなくても残っている子供はヴィーゴ一人しかいないのだから、態々毒殺などしたりしないと誰も信じたりする事は無かった。


 そんな中、新皇帝ヴィーゴがミョーワへの侵攻を開始したとの知らせが入って来た。


「おい、おい、親父が死んでも関係無しかよ……」


 ティノも聞いた時思わず呟いてしまった。

 父の皇帝が無くなってしばらくのが間は大人しくしているかと思ったら、ヴィーゴからしたら関係ないようである。


「まさか父上が亡くなるとは思わなかったな……」


「そうですね……」


 ミョーワへ侵攻する行軍中に、ある街に宿泊する事になったヴィーゴは、部屋で一息つきながら右腕の部下のダルマツィオと共に呟いていた。

 ヴィーゴ達からしても、今回の父ダヴィドの崩御は予想外の出来事だった。

 医療班の者達から聞いた話によると、数年前から内臓の一部に障害を負っていたらしい。

 それを誰にも告げずにいたらしい。

 自分が弱い所を見せるわけにはいかないという理由だったらしい。


「それにしてもこの時期に亡くなるのはついてないですね?」


「そうだな……、本当は大人しくしているべきなんだろうが、これ以上計画を遅らせるわけにはいかないからな……」


 チリアーコが帰らなくなり通信係がいなくなり、イーヴォ達と連絡を取るのに時間がかかった。

 イーヴォは転移石を持っているのでそれを使えば良いと思ったが、転移石は使えば使う程石自体に負荷がかかり、壊れて使用出来なくなる。

 イーヴォ自身、緊急避難の為に使う以外ではなるべく使わないようにしている。

 なので、チリアーコのように気軽に使う事は出来ないのはつらい所である。

 チリアーコがいた時は、この大陸であったならある程度の距離はその日の内に通信出来たのだが、今では2、3日かかってしまうのが困ったところである。


「チリアーコがいなくなったのがきついな……」


「……ですね」


 いなくなった事で初めて転移使いのありがたみを再認識した2人だった。


「そういえば闇魔法使いの育成はどうなった?」


「やはり適性がある人間でないとむずかしいですね……」


 チリアーコの有用性に目を付けたヴィーゴは、帝国内にいる奴隷を集め、闇魔法の訓練を強制的にさせて他にも転移魔法を使える人間を作り上げようとした。

 しかし、闇魔法の才能がある人間は極めて少ない。

 チリアーコのような人間は極めて異例である。

 育成は上手く行かず、どの奴隷もある程度のレベルに達してから成長が見れなくなっている。


「まぁ、その内出来る人間が出て来るだろう……」


 成長は遅くなったが僅かずつだが成長はしている。

 ヴィーゴは、時間がかかっても使用者が出てくれば良いくらいの感覚でいる。


「イーヴォの奴は本当に動きますかね?」


 ダルマツィオはまだイーヴォの事を信用しきれていないので、この侵攻も若干の不安が残っている。


「確かにあいつも裏で色々考えているのかもしれないが、今回の作戦には必ず協力してくるはずだ。奴にとっては望んでいた物が手に入るのだからな」


「……そうですね」


 今回の作戦にはイーヴォの協力が必要だ。

 それに今回の事で一番得するのはイーヴォではないかと思っている。

 なのでヴィーゴからしたらイーヴォの協力はあると確信している。



◆◆◆◆◆


 数日後、帝国はミョーワに対して攻撃を開始した。

 帝国の数による攻撃に脅威を感じたミョーワは、同盟国のハンソーに協力を要請した。

 ハンソーからしたら、帝国が迫ってきているという情報が入った時からいつでも援護に向えるように準備していたので、すぐさま行動を開始したのだった。


「予定通り動き出したようだな?」


「イーヴォ様、我々も行動を開始いたしましょう!」


 部下の男と共にイーヴォは、王都から軍が行動を開始したのを密かに眺めていた。

 そして、部下の男は鼻息荒く行動の開始を提案した。


「そう慌てるな。すぐに始めたら帝国にも恩が売れないじゃねえか。あのハンソー軍がミョーワの国に入るまで行動は待つんだ」


「なるほど! さすがっすね!?」


『せいぜい頑張ってくれよ。新皇帝さん……』


 密かに自分達の価値を上げる事を企みつつ、イーヴォはハンソーの王城を見てほくそ笑んでいた。


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