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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第7章
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第198話 報告

 チリアーコの遺体は近くの魔物の餌にして、ルディチ王国の王都のトウダイの町に帰ったティノは、その足でアドリアーノのもとに向かった。


「チリアーコは殺したのか?」


「あぁ、ミルコの協力もあって上手くいった」


「ふふん!」


 ティノの言葉を聞いて足元に立つミルコは、嬉しそうに胸を張ってドヤ顔をしていた。


「でっ? 態々その報告に来てくれたのか?」


「それもあるが、チリアーコが最期に気になる事を言っていたのでな……」


「気になる事?」


「あぁ……」

 

 ティノは事のあらましをアドリアーノに説明した。


「帝国とハンソーが組んでいる? 本当にそんな事があるのか?」


 ティノの説明を受けたアドリアーノは、聞いた事もない情報に疑問を口にした。


「さあ? チリアーコから聞くまで考えた事もなかっな……」


 帝国は体制さえ整えばいつでも攻めてくる可能性がある。

 それはハンソーも同じで、多少なりとも領土を拡大したルディチと戦って戦力を落として帝国の攻め入る隙を与えたくないはずである。


「ハンソーが動くとしたらミョーワも動いているはずだが、そんな兆候もない。チリアーコが嘘をついたという可能性もあるが、さすがに死に際に嘘をつくとは思えないんだよなぁ……」


「そうだな……」


 ティノは他の国へもちょくちょく調査に行ったりしていたが、どの国も現在はルディチ同様戦争よりも内政に力を入れている感じに思える。

 その為、チリアーコが言っていた事が起きているとは思えないでいた。


「ここで考えていても分かる事でもないし、取り敢えず探ってみるよ」


「そうか……、済まないが頼む」


 いつもの事だが、ティノが動き回ってくれているおかげで、ルディチの国は先んじて行動が起こせるので助かっている。

 ティノの情報収集力と戦闘力は、アドリアーノもある程度理解しているつもりだ。

 とは言っても実力の底は未だに理解できていないが……

 今回もその力を借りる事になり、アドリアーノは感謝の言葉を述べたのだった。


「気にするな。俺自身の為でもあるしな……」


 元々はのんびりと過ごす事が好きなティノにとって、フェンリルの親子と過ごす日々は中々楽しい日々である。

 マルコの時とは違い、日に日に成長を続けるミルコを鍛えるのも新鮮で楽しいうえに運動不足解消になっている。

 この親子もそのうち出て行くのだろうが、それまでは平穏に過ごしたいものである。

 その為にはマルコがこの大陸を統一してくれるのが一番なのだが、二つの貴族家が消滅してツカチとヤタの町の新しい領主をどうするかで忙しいだろうし、他の国に囲まれているルディチから動く訳にも行かないだろう。


「じゃあな!」


「じゃあな!」


 ティノは一言告げて、アドリアーノの前から去っていった。

 ティノと手を繋いだミルコも、ティノの真似をして出て行ったのだった。



◆◆◆◆◆


「何じゃ? 帰って来たと思ったらまた出て行くのか?」


 ハンソーの国の動向を探る為、フェンリルのミーナに説明する為にティノは一旦自宅に帰った。

 そして帰ってティノが説明したら、ミーナは呆れたように言って来たのだった。


「お主も我等同様静かに暮らすのが好きな人間だと思ったのだが……」


 最近になってティノは色々と動き回っている。

 フェンリルのミーナからしたら、この国が滅んだとしても他の地でのんびりと過ごせれば構わないのだろう。

 しかし、長い事生きて来たティノにとって、やっぱりこの地が一番のんびり出来るように思っている。

 王も自分の子孫だし、他の国に比べれば思い入れも少しはある。


「俺にはここが一番過ごしやすいんだ。だからこの地に災いが起きそうなら潰してしまうのが手っ取り早いだろ?」


「そんなもんかの……?」


 ミーナはティノの言葉に首を傾げた。

 どうやらティノとは違い、ミーナはこの地にこだわりは無いようである。


「ミーナはここは気に入っていないのか?」


 この数年一緒に過ごして来たが、ティノから見てもミーナもこの地を気に入っているように感じていた。

 しかし、あまりこの地が攻められそうになっていると聞いてもあまり反応を示さないでいる。

 その事が気になり、ティノはミーナに問いかけた。


「我もこの地は気に入っておるぞ……」


「そうか? あまり気にしていないように感じたんだけど?」


「確かにこの地は気に入っているが、それは人の作る料理が気に入ったからじゃ。他の国に行っても同様にうまい飯が食えればそれで良い」


「なるほどね……」


 いわれてティノは思わず納得したのだった。

 ティノも長い年月の生活によって料理は多少出来る。

 とは言っても簡単な料理なのだが……

 それに引き換え、フェンリルであるミーナは元々人間と関わる事は少なく、食事は仕留めた動物や魔物を生のまま食べる事しかしてこなかった。

 なので、ティノや他の人間が作る料理は新鮮な感覚で、とても美味に感じ気に入っている。

 人間の料理が上手い事を知った今では、人間の料理が食べられればどこでも構わないようになってきた。

 ティノとミルコが動いていた時も、ティノから貰ったお金で食べ歩きしまくっていた程である。


「ミルコは今回ミーナと留守番な」


「え~! 今回も連れてってよ!」


 何故かティノが大好きなミルコは、連れていってもらえない事に文句を言って来たのだった。


「今回はお前の相手をしている暇はない。大人しく待ってろ」


「ちぇ!」


 今回の調査は結構面倒くさい事になりそうなので、ミルコを置いていく事にしたティノは、ごねるミルコの頭を撫でて優しく諭した。

 頭を撫でられて嬉しいミルコは、渋々納得したのだった。


「じゃあ行ってくる」


「行ってらっしゃい」


 ミーナとミルコのフェンリル親子を置いて、ティノはハンソーの調査に向かうのだった。


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