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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第7章
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第194話 違和感

 ヤタの町で一泊した翌日、ティノはミルコを連れてルディチ王国の王都トウダイに戻った。

 トウダイに戻ると、ティノはその足でアドリアーノの所に向かった。


「…………なっ、何だと?」


 ティノから渡された2通の手紙の内容を見て、アドリアーノは驚愕の表情になっていた。

 元々建国当初から自分達ではなく、マルコが国王になる事を快く思っていなかったとは言え、他国と組んで内乱を仕掛けて来るとは考えてもいなかった。


「よりにもよってハンソーに帝国だと……?」


 ハンソーからしたら、帝国と戦う前にルディチを潰しておきたいという所なのだろう。

 帝国と戦うにしても、後顧の憂いを無くしてから戦いたいという事なのだろう。

 帝国の場合は、ハンソーとミョーワの同盟国にルディチが協力する可能性を絶っておきたいのかもしれない。


「どちらにしても行動に移す前に見つかって良かったな。これを証拠にあの2貴族家を潰しておく事が出来るからな」


「そうだな。早速マルコ様にこれを見せに行くとしよう」


 アドリアーノに手紙を渡したので、これ以上ここにいる理由が無くなった。

 その為、アドリアーノの部屋から出て行こうとしたとき、


「…………ところで、その子はどこの子だ?」


 ティノと一緒に来ていた少年に疑問に思っていたアドリアーノは、ようやくその事を突っ込んでみた。

 この部屋に入って来た時から、ティノの服を掴んで側を離れないでいるミルコを、訝しげな表情で見つめた。


「俺ミルコ! 父ちゃんの子供!」


「父ちゃんじゃねえって……」


 ミルコの言葉に動揺したアドリアーノは、ティノの反論を聞こえていなかったらしく?


「…………えっ? ティノ、お前の子なのか?」


 などと言ってきた。


「いや、違う…………が、世話をしている」


 別に勘違いされたとしても構わないのだが、ティノは一応否定しておいた。


「…………そうか。もしかしてその子とこれを探しに行ったのか?」


 かなり重要な話なのにも関わらず、話し合いの場に連れてきたのだからもしかしたらと思い、アドリアーノは尋ねてみた。


「まあな。その手紙2つ共こいつが見付けたんだ。ありがたく思えよ」


「うん。俺見付けた! 2つ共、同じ匂いがしたんだ!」


「………………何? ミルコ、本当に見付けた手紙は同じ匂いがしたのか?」


 ミルコの何気ない一言に、ティノは違和感を感じたのだった。


「うん。本当だよ」


「…………どういうことだ?」


 この言葉にティノは思考を働かせ始めた。

 ミルコが嘘を言うとは思えない。

 嘘を言う意味がないからだ。

 だとしたらおかしな事になってきた。

 カセターニもグリマンディも、それぞれ別々の国と内通していたにも関わらず、同じ匂いがするなどということがあるとは思えない。

 ティノは、ミルコの鼻の良さを分かっているつもりだ。

 匂いを間違えるとは思えない。


「…………その手紙は誰かが画策した罠かもしれない」


 同じ匂いがするということは、同一人物が身分を偽って2貴族に接触したと言うことだろう。

 どこの誰だかは分からないが、それに2貴族が乗せられたのだろう。


「どちらにしても2貴族の捕縛をするべきだ。そしてどんな人間が接近してきたのか尋問する必要があるな」


「分かった。急いで両家の当主を登城するよう指示を出す」


 ティノの考えを聞いたアドリアーノは、険しい顔付きになり返事を返してきた。


「じゃあ、俺達は家に帰る。尋問して情報が手に入ったら教えに来てくれ」


「バイバイ!」


 そう言うとティノは、ミルコを連れて部屋から出ていった。

 ミルコはアドリアーノに手を振りながらティノに付いて行ったのだった。


「…………フウ~、相変わらずあいつは面倒な事を持ってくるな……」


 ティノ達が居なくなった後、アドリアーノは思わず溜め息が出てしまった。

 ティノが自分の所に来るときは、大体面倒な事になる。

 しかし、決してこの国に……マルコにとって放っておけない事が起きそうな時に現れる。

 危険が起きる前に知らせて貰えるので、はっきり言ってありがたい存在である。

 今回も、王都に隣接する両方の町から攻められていたら、とてもではないがマルコを護りきれるか分からない。


「今回も助けられたな……」


 ティノは以前、マルコが成人したのだし、王という立場になったのだから、これからは自分で道を切り開いて行くように言っていたが、結局の所自分が育て上げたマルコの事が気になっているようである。

 その事をティノは口に出さないが、なんだかんだ言って結局はマルコの為に動いてくれている。

 ティノとマルコには、アドリアーノから見ると切っても切れない絆の様なものがあるのかもしれない。

 マルコが王になってから側で支えている自分以上に、ティノはマルコの役に立っている気がしてならない。

 自分もマルコの為に頑張っているつもりだが、ティノには何となく敵わない気がしている。

 しかし、それでも全く構わない。

 結局はマルコを……そしてこの地が繁栄して行くことが、マルコの父フランコが望んだ未来だったからだ。


「さて、動くか……」


 思考を止めて、アドリアーノは2貴族の捕縛の指示を出しに動き出したのだった。

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