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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第7章
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第192話 探し物

「ふぁ~……」


「おい、しっかりしろよ」


 いつもならば寝ている時間の為か、ミルコは眠そうに欠伸をしている。

 しかし、ミルコの潜入訓練も兼ねているので、ティノはそれを窘めた。

 夜になり町中が静まり返った時刻、ティノ達は行動を開始したのだった。


「ところでどこ行くの?」


『バカ! 念話で話せ!』


 宿屋から出て、闇夜の町中を屋根伝いに走って領主館を目指した。

 その途中、ミルコはあまり今回の潜入の事を理解していないのか、普通に話しかけてきた。

 緊張感が無く、しかも物音を立てる事を控えるべき時に、交わしている人間しか分からない念話ではなく、場合によっては人に聞かれるかもしれない普通の会話をして来た事に、ティノは念話で強目に叱った。


『ごめんなさい……』


 叱られたミルコは、しゅんとなってしまった。

 しかし、すぐに気を取り直して真剣な顔付きになった。


『今回ここの町の領主が内乱を画策している噂がある。それが本当かどうか調べる為に潜入するんだ』


 その表情を見て、ティノは今回のこの行動の理由をミルコに説明してあげた。


『何で父ちゃんがこの国の為にそんな事しなくちゃならないの?』


 今回やる事を聞いたミルコは、素直に思った事をティノに尋ねてきた。


『3年前位にお前を助けた奴がいただろ?』


『…………あぁ、父ちゃんに似た魔力をした人? 確かこの国の王らしいね?』


 以前の戦争時、マルコの魔力を感じたミルコは、ティノが近くに来たと勘違いして戦地に近付き、巻き添えをくらって死にかけた。

 その時瀕死のミルコを助けたのがマルコだった。

 その事を、ミルコの母親のミーナが簡単に説明していたらしい。


『そいつは俺の…………親戚みたいなもんだ。だからちょっと探っといてやろうと思ってな……』


『ふ~ん』


 別に自分がマルコの先祖だと伝えても良かったのだが、未だに不老であることを隠しているティノは、躊躇いながら嘘をついた。

 ミルコはそれを素直に受け入れたのだった。




『………あそこ?』


『そうだ』


 領主館から少し離れた場所でティノ達は一旦止まり、館の周辺を探知し始めた。


『誰かいるか?』


『うん。12人かな?』


 幼体とは言えフェンリルのミルコは、探知だけでなく鼻を利かせて館の内部を探った。

 今はまだティノ程探知の精度は高くないが、その内ティノを越える事が出来るだろう。


『まぁ、この距離なら簡単だな……』


 3年前の戦争時、まだ色々と訓練をしていなかったとは言え、数km遠く離れたマルコの魔力をティノの魔力と勘違いして探知したミルコが、1kmも無い距離の探知を間違える事はない。

 ミルコが言ったように、カセターニ家は当主のチリーノとその妻、そして息子とその妻の4人家族である。

 もう1人娘がいたが、ツカチのグリマンディ家に嫁がせていて、息子の妻はそのグリマンディ家当主ダニオの娘を嫁に迎えたのである。

 その4人に専属のメイドがそれぞれ付き、チリーノには更に執事が付いている。

 そして領主館の専属料理人と調理補助、そしてメイド長がいるはずなので、ミルコが言ったように12人で間違いない。


『これからどうするの?』


『領主の書斎に入って、内乱の証拠になる書類を探す。証拠があれば言い逃れ出来ないだろうから……』


『ふ~ん、分かった』


 時間的にはそろそろチリーノ達が眠りに就く頃である。

 家に仕える者達はまだもう少し起きているだろうが、書斎に忍び込むのに別段影響はない。


『行くぞ!?』


『うん!』


““シャ!””


 一言交わし、ティノとミルコは領主館への潜入を開始した。




“カチャ!”


 2階建ての館の1室の窓を開けて、ティノとミルコは予定通り書斎に侵入した。


『何処を探したら良いの?』


『お前はそっちの本棚の方を探せ! 俺はこの机の引き出しの方を探す。手紙みたいな物があるはずだ……』


『うん』


 恐らくカセターニ家の単独で内乱を起こすとは思えない。

 何処かしらと繋がりがあるはずである。

 もしも本当に内乱を企んでいるとしたら、そのやり取りを示す手紙が何処かに隠されいるはずである。

 それを探す為、部屋の中を色々と探し始めた。


『音を立てるなよ!』


『うん』


 ティノと違い、少し雑に本棚の本を動かすミルコを見兼ねて、ティノは注意をした。

 どうやって探したらいいか分からないと言った感じである。


『そうだ!』


『ん? どうした?』


 何かを思い付いたのか、ミルコは本棚の匂いを嗅ぎ始めた。

 何をしているのか分からず、ティノは首を傾げた。


『本の中にあるとしたら、余計な匂いが混じっているんじゃないかと思って……』


『確かにその可能性があるが、本は色々な人間が触っているはずだから分かりづらいだろ?』


 ミルコが思い付きで始めた事を、ティノはそこまで鼻でかぎ分けられるとは思えないが好きにやらせてみる事にした。


『あっ!?』


『ん?』


『あったよ!』


 どうやらミルコの考えは成功したらしく、1つの本の間から1通の手紙が見つかった。


『マジかよ……』


 そこまでミルコの鼻が利くとは思わなかったティノは、思わず呟いたのだった。

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