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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第7章
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第191話 ヤタの町

「父ちゃん、これから何するの?」


「父ちゃんじゃねえって……」


 ティノが住むルディチ王国首都、トウダイの町の南東にあるヤタの町に、フェンリルのミーナの息子であるミルコを連れて来ていた。

 変化の術で人間の子供の姿をしたミルコと、手を繋いで歩いているティノは、町を歩く他の人間からしたら見るからに親子と言った感じである。

 因みに、ミルコの母親のミーナは、トウダイで留守番をしている。


「あんまり周りを見過ぎて魔力の制御を怠るなよ」


「うん」


 ミルコがミーナに変化の術を教わっていたのを見ていて、ティノも変化の術が使えるようにはなっている。

 しかし、元々フェンリル用の変化の術なので、ティノが使うとあっという間に魔力が減っていった。

 フェンリルのミーナと同等並みの魔力を有するティノでも、精々30分程度で魔力が尽きてしまう状態である。

 その術にまだ慣れていないミルコは、魔力をコントロール出来ず、時折狼である尻尾や耳が出てしまうことがある。

 王都のトウダイと違い、ヤタの町では領主を任されている貴族のカセターニ家当主チリーノが人族主義のようで、獣人も魔人も見かけない。

 グリマンディ家が領主をしているツカチの町も同じである。

 そんな中で尻尾や耳が出ていたら、町から締め出される事になるかもしれない。

 もしそうなっても、ティノが一緒なので逃げられるのではあるが、偵察に来ているので目立つ事は避けたいところである。


「取り敢えず宿を確保して、今夜にでも動く事にするか……」


「分かった」


 今回チリーノの領主邸に潜入する為にこの町に来たのだが、今回ミルコの隠密行動を訓練する為に来たのもあり、人気の無くなる夜に潜入することにした。

 幼体とは言え、フェンリルのミルコはかなりの身体能力と大量の魔力を有している。

 今まで色々な人間を教えて来たティノだったが、フェンリルに戦闘の訓練を教えるとは思ってもいなかった。

 野生の勘なのか、天性の物なのか、ティノが教えた事はすぐに吸収していった。

 ただ、魔力を大量に持っている持っているせいか、細かいコントロールがまだまだ苦手なようである。

 隠密行動では魔力を抑えることが重要なので、今のミルコには少々不安があるため、出来る限り安全に行うために夜に潜入する事にしたのだ。


「あっ、あったよ!」


 宿屋の看板を見付けたミルコは、嬉しそうに指を差して繋いでいるティノの手を引っ張った。

 ミルコにはティノが人間の文字を教えているので、看板の文字が読めたのである。


「分かったから引っ張るな!」


 ティノの後ろを付いていく子供だったマルコとは違い、ミルコは元気に動き回る感じの子供である。

 若干本能的に動く感じである。


「すいません。」


 ティノはミルコが指差した宿屋に入り、受付にいたおばちゃんに話しかけた


「はい、いらっしゃい!」


「1泊したいのですが、部屋は空いていますか?」


「はい。大丈夫ですよ」


「それじゃあ一部屋お願いします」


「お子さんまだ小さいからセミダブルのベッド1つで大丈夫かしら?」


 ティノと手を繋いでいるミルコを見て、おばちゃんが問いかけてきた。


「うん。父ちゃんと寝る!」


 ミルコはトウダイの家で寝るときも未だにティノと一緒に寝ている。

 そろそろ1人で寝るようにティノは言っているのだが、嫌だとごねるので仕方なく許している。

 何で母親のミーナではなく、自分と一緒にいたがるのかミルコに聞いたのだが、何でもティノの魔力が心地好いとの事だった。

 ティノからしたら他人の魔力を感じ分ける事は出来るが、それで気分が変わるとかいった事は今まで1度もない。

 フェンリルだからそう言ったことがあるのかと、何となく納得している感じである。


「じゃあ、こちらの部屋をお使いください」


 1部屋、1泊用の金額を支払うと、おばちゃんは部屋の番号の付いた鍵を渡してきた。


「食事は別料金になっています。1階が食事処になっているので良かったらお使い下さい」


「分かりました」


 説明を受けて鍵を受け取ったティノは、ミルコと共に2階に上がって行った。




「ここだな……」


 鍵の番号と同じ数字の部屋を見付け、ティノは鍵を開けて中に入った。


「わー!」


 中に入ったミルコは、ベッドを見付けると走り出して飛び跳ね始めた。


「あまりはしゃぐなよ」


「は~い」


 ベッドで飛び跳ねるミルコに注意して、ベッドから降ろした。


「今の内に寝ておけよ。夜に行動を開始するからな」


「うん」


“ポンッ!”


 そう言われたミルコは、変化の術を解いて狼の姿に戻った。

 別に変化したままでも寝れるのだが、狼姿の方がやっぱりのんびり出来るらしい。


『父ちゃん寝ないの?』


 狼の姿だと言葉がしゃべれないので、ミルコは念話で話すようになる。

 一緒に住み始めた頃は小さかったのだが、今は中型犬位の大きさに成長している。

 毛色も、黒かった毛から少しずつ青白い毛に生え変わって来ている。


「俺はちょっと位寝なくても平気だ」


 そう言ってソファーに座ったティノは、魔法の指輪から本を取り出し読み始めた。


『じゃあここで寝る』


 ミルコは、ソファに座るティノの足下に座って眠り始めた。


「…………まあ、いいか」


 態々ここで寝なくても、ベッドで寝れば良いのにと思いながらも、寝始めたミルコをそのままにティノは本を読み始めた。

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