第19話 出会い
ティノはリンカン王国に戻ろうと、西に向かっていたのだが、片手片足では進める距離が短く、なかなか国境にたどり着けずにいた。
「ふー、やっぱり疲れるな……」
魔物が出てきたときの為に、魔法の指輪から昔手に入れた槍を取りだし、杖がわりにして歩いていた。
「再生魔法を訓練するかな?」
ティノは武術に置いても、魔法に置いても才能は無い。
その為、才能が重要な再生魔法は、いくらのんびり屋のティノでも時間が掛かりすぎて面倒くさいと、練習はして来なかった。
「急いで帰りたいけど仕方ないか……?」
ここから国境迄、今日の移動速度だと5日位掛かる。
そして国境からトウダイ村迄は1山越えなければ着かない為、かなりの時間が掛かる。
「川で流されたら1日で着いたのにな……」
トウダイ村の山奥の川にから、濁流に流され1日で隣国のヴィットリオに拾われた事を考えると、陸で行くには時間が掛かる事に、ティノはブツブツと愚痴りながら、ここで今日は野宿する為に準備を始めた。
「戦闘面も心配だな……?」
ティノはこの体だと基本、魔法で遠距離戦闘しかなく、接近戦は少々難しい気がした。
「そうだ! 従魔術で魔物を手なずけるか?」
再生魔法で手足が治るまで、乗り物替わりや戦闘補助に魔物を使役しようと、ティノは思い付いた。
朝になり、また国境に向かってティノは歩き出した。
「スライムばっかりで従魔に向いた魔物が出てこないな……」
道の途中で出てくるのがスライムばかりで、ティノは少し残念に思いつつ歩いていた。
「出来たら犬何か良いかな? でも犬だと小さいか? そしたら狼かな? あれっ?」
ブツブツと呟きながら、従魔に適した魔物を考えて歩いていたティノの道の先に、怪我をした親子らしき2人がうずくまっていた。
「おーい! 大丈夫ですかー?」
ティノは、うずくまっている2人に向かって話しかけつつ、近寄っていった。
「どなたか知らぬが、回復薬を譲ってくれないか? 魔物にやられ、持っていたのを全て使ってしまって……」
どうやら2人共魔物にやられたらしく、怪我をしていた。
「それは大変だ! これどうぞ……」
ティノは魔法の袋から回復薬を取りだし、男性に渡した。
「アルミロ様! 回復薬ですお飲みください!」
気を失っている子供は、よく見たら結構身なりの良い格好をしている。
もしかしたら貴族なのかもしれない。
それに男性の方は子供の従者なのか、子供を様付けで呼んでいた。
「……ん、……リ、ヴィオ?」
「アルミロ様! 良かった!」
子供が意識を取り戻し、男性は心底嬉しそうな顔をした。
“ガサッ!”
「!!?」
街道沿いの林の中から1体の魔物が飛び出してきた。
「ロンブリーコギカンテ!!? くそっ! 追って来たのか?」
現れたのは、ロンブリーコギカンテと呼ばれる巨大ミミズで、Aランクの魔物である。
「あんたは逃げろ! こいつは俺達を追って来たみたいだ!」
男性はティノに向かい、そう言って子供をかばいつつ、巨大ミミズに向かって剣を構えた。
「……ハッ!」
ティノは男性の言葉に反応せず、ミミズに向かって魔法を放った。
“ザクッ!”“ザクッ!”
ミミズはティノが放った氷の柱に貫かれ、反応出来ないまま倒された。