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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
186/260

第186話 脱出

「へぇ~、こんな感じなのか……」


 拘束されたティノは、持ち物を全て奪われ地下の牢の中に入れられた。

 そこで開口一番この牢の感想を呟いたのだった。


「ここには魔力封じの結界を厳重に施された特別の牢屋だ。幾らお前でも出ることなど出来ないだろう。帝国軍との交渉まで大人しくしていろよ」


 ティノが牢屋に入ったのを確認したセコンドは、ティノ檻越しに話しかけると地下牢から去って行った。


「VIPルームですか……」


 現在ティノは、魔力封じの腕輪に隷属の首輪を付けられている。

 更にセコンドが言ったように、牢屋事態にも魔力封じが施されているらしい。


「出来立ての割りには、かなり確りした仕掛けがされているんだな……」


 ティノが大人しく捕まったのは、この牢屋に入ってみたかったからである。

 ミョーワ王国の以前の王城は、大統領や様々な省の大臣達の執務室に変わっている。

 議員と警備の人間などの関係者だけが出入り出来るのだが、これまでと違い比較的自由に多くの人間が出入りするので、犯罪者の脱走を手引きする人間がいないとも限らない。

 その事から、牢屋は別の場所に専用の施設を作っていた。

 一応この事は、ティノがセコンドに教えた事によって建設される事になったのだが、つい最近完成したのだった。

 久々にこの町に来たときちょっと散策したらその事に気付いたので、中がどんな造りなのか調べてみたくなった。

 酒場で、セコンドの指示によって兵に囲まれたとき抵抗しなかったのは、ここに連れて来られる為であった。

 結構な金額をかけて造ったのか、確りしていて頑丈そうな造りになっている。


「でも、まだ甘いな……」


 ハッキリ言って、ティノからしたらまだ平気な部類の牢屋である。

 平気と言うのは、脱走が可能と言う意味である。

 以前も付けられたことがあったが、この世界で広まっている魔力封じの腕輪は、魔力を使わなくてもティノの力をもってすれば簡単に壊し取る事ができる。


 その日はそのまま牢屋で眠り、担当らしき兵から受け取った朝食を食べたあと、誰もいなくなった所でティノはそろそろ出ていく事にした。


「出来立ての施設がどんな感じか確認出来たし、そろそろ出て行くか……」


 施設の確認という目的が済んだし、何もせずここにいるのは飽きたので、ティノは行動を開始した。


「むっ!」


“バキッ!”


 あら簡単、と言った感じでティノは魔力封じの腕輪を握り潰した。


「次はこれか……」


 魔力封じの腕輪がなくなり、少しだけ体が楽になったティノは、首に付けられている隷属の首輪に手で触れた。

 この牢屋も魔力は封じているが、肉体の力を抑える機能がついていないので、思いっきり力を込めれば出て行けそうだが、その前にはこの隷属の首輪を外さないとならない。

 ここから去って行く前にセコンドが言った、大人しくしていろとは隷属の首輪をつけているティノへの命令である。

 なので牢屋を壊そうとすれば命令違反になるので、ティノへの激痛が起こるだろう。

 腕輪を壊した程度では発動しないだろうが、流石に牢屋を壊そうとしたら首輪は発動するだろう。

 ここから出ていく為には、牢屋より先に首輪を外さないとならない。


「まぁ、魔力封じの腕輪を壊したから、僅かに魔力が使えるんだけどね」


 魔力封じの結界が張られた牢屋と魔力封じの腕輪によって、流石のティノも魔力が全然感じなかったが、魔力封じの腕輪を壊したら、その分なのか僅かに魔力を感じるようになった。

 本来この牢屋だけでも、この星に生きる全種の人族が、完全に魔力を抑え込まれるだろうが、最早人のレベルを越えた膨大な魔力を持ったティノだからこそ感じる事が出来るのである。


「こんだけの魔力でも大丈夫だろ……」


 そう呟くと、ティノは隷属の首輪に手をかざし、僅かに体に感じる魔力を集めだした。


「時間がかかるけど行けそうだな……」


 やはり牢屋の結界だけでは抑えきれず、手には魔力が少しずつだが集まってきた。


「そろそろ大丈夫そうだな」


 30分程経ち、大分手に魔力が集まった。


「ハッ!」


“バキン!”


 集めた魔力で光魔法を放つと、隷属の首輪が壊れて外す事が出来た。


「そんじゃ帰るか……」


 ティノがいなくなれば、この国は帝国との交渉も潰れて戦争に発展するだろう。

 捕まったとき外されてセコンドの手に渡った魔法の指輪も、持ち主のティノがいなければ使うことも出来ないのでただの指輪でしかない。

 セコンドからしたら、帝国との交渉時にティノに指輪を使わせ、サウルの首を取り出させようと思っていたのだろうが、全部無駄になった感じだろう。


「そうだ! サウルの首をどうにかしないと、どっか目立つ所に飾っておくか……」


 どっちにしろ、セコンドに渡した指輪はフェイクだったので無意味である。


「せいっ!!」


“メキッ!”


 ティノは思いっきり力を込め、牢屋の鉄格子をねじ曲げると、牢から出て階段を登って行った。

 牢屋のあった部屋も階段の壁にも、魔力封じがされてされているので、細かい魔力制御を要する転移が出来そうにない。


「!!?」


 階段を登りきった所には部屋があり、そこには朝食を持ってきた兵と、もう一人の担当らしき兵がいたが、ティノの顔を見て目を見開いた瞬間、声を出す事も出来ずに、衝撃を受けて気を失った。

 ティノが一瞬で鳩尾に拳を突き刺し、気を失わせたのだ。

 手加減はしてあるので、暫くしたら目を醒ますだろう。


「そんじゃ、一旦指輪を取りに帰るか……」


 気を失った兵達の部屋では、魔力封じは施されていないようなのでここから転移することにした。


出番が無かったので、ちょっとティノをフラフラさせました。

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