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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
182/260

第182話 次はサウル

「くっくっくっ………、ハッハッハッ………」


 帝国皇帝ダヴィドの次男サウルは、部下からの報告に笑いが止まらないでいた。

 リンカン王国のインテルノカンポと言う町を侵略していたサウルに、セルジュの死亡が報告されたのだった。


「帝国内での評価を上げる為に、小国を滅ぼそうと動いたのにも関わらず返り討ちだって? ハッハッハッ……」


 年子のせいで、幼少の頃から常にセルジュと比較されてきたサウル。

 武術も魔法も使うセルジュとは違い魔法特化のサウルは、常に自分の上にいるセルジュを疎ましくて仕方がなかった。

 その邪魔な存在のセルジュが、小国相手にまさか死亡するとは思ってもいなかった。

 セルジュの大失態を聞かされて、サウルは笑わずにはいられなかった。


「目の上のたん瘤がこんな事で消え去るとは思ってもみなかったな……」


「左様ですね。まさかセルジュ様が殺られるとは……」


 サウルの右腕の将軍ルチャーノは、口調的にはセルジュの死を嘆いているが、その顔はサウル同様にやけた顔をしている。

 ルチャーノもサウル同様魔法特化な為、よくセルジュに小馬鹿にされてきた。

 そのためセルジュの死を聞いたときは、サウル同様笑いが止まらなかったのである。


「正確には勝利目前にフェンリルが現れ、あっという間に壊滅されたと言う話らしいです」


 報告に来た兵士は、セルジュの死を嬉しそうに聞いている2人に、正確な情報を報告していた。

 しかし2人は、セルジュが死んだのが確実であるならば、過程の事などどうでも良いと言わんばかりに、その報告をしっかり聞いているようではなかった。


「さてと……、ルチャーノ」


「はい」


「ルディチはセルジュに弱らされている。その回復前に今度は我々がルディチを攻めるぞ」


「素晴らしい考えです。早速兵達に指示を出しておきます」


 兵士の報告を聞いている様ではなかったサウル達だったが、どうやらちゃんと聞いていたらしい。

 セルジュの軍が勝利目前まで行っていたのだったら、ルディチは今は壊滅寸前だと言うことだろう。

 ここからルディチまでは距離があるが、ルディチが軍を回復させるまでにはたどり着く事が出来るだろう。


「セルジュの報復とでも言っておけば俺の評価も上がるだろ?」


 大義名分を上げるのは簡単である。

 セルジュの報復と言えば良いだけである。

 そうは言っても、内心では報復などという気持ちなど皆無である。

 ただセルジュの軍に弱らされた国を、漁夫の利で奪い取ろうというだけである。


「失礼ながら、セルジュ様とサウル様の仲は帝国内では有名です。大した評価の上昇は見込めないと思います」


 幼少期から、セルジュとサウルの仲は軍内部でも有名である。

 その仲のサウルがセルジュの報復などと言っても、何とも思わない事は分かりきっている事である。


「……軍には効かなくても、市民には通じるのではないか?」


 サウル自身、軍内部でセルジュとの仲が悪い事が知れ渡っていることは理解していたが、まさかそんなに有名だと言うことまでは思ってもいなかった。

 さすがに市民にまで広がってはいないと思い、そういったのだが……


「失礼ながら、市民にも知れ渡っております。かといってルディチを潰せば評価が上がることは間違いありません。サウル様の狙いは正しいと思います」


「……あっ、そう」


 まさか市民にまで知られているとは思っていなかったので、サウルは言葉が出なかった。

 取りあえず出た言葉がこれだった。


「……まあいい、ルディチに向かうぞ」


「はい」


 何となく気持ちが萎えたが、評価が上がるのであればそれでいいかと思い、サウルの軍はルディチに向けて進軍し始めた。



◆◆◆◆◆


「…………何なんだ? リンカン国王の首が玉座に飾ってあったぞ」


 リンカン王国王都ナカヤに進軍した帝国皇帝三男ヴィーゴが王城に入ると、玉座の間の玉座にリンカン国王シスモンドの首が飾ってあった。

 リンカン国王を殺し、鰻登りの帝国内での評価を確固たる物にする予定で、王都に入ってから意気込んだヴィーゴだったが、何となく拍子抜けの感が否めない。


「…………何者かによって殺害されていたようですね。ここの国王は長く公爵家の傀儡だったようで、無能だと言うことで有名だったですから、謀反によって殺られたのではないでしょうか?」


 ヴィーゴの右腕のダルマツィオは、シスモンドの首を眺めながら予想を述べたのだった。


「……まあいいや、シスモンドが死んだのは確実なんだし……」


 自分の手で始末出来なかった事は残念な気持ちであるが、最終目的が達成されたので結果オーライと言ったところである。


「そうですね。誰が殺ったのかは分かりませんが、リンカンの国王が死んだ事には変わらないので良しとしましょう」


 ダルマツィオもヴィーゴ同様シスモンドの死には疑問が残るが、兵達に大きな損害を出すこと無く目標が達成出来たので、良しとすることにしたのだった。


「そんじゃあ、大陸全土にリンカンの王都奪取を宣言するか……」


「そうですね……」


 リンカン王都がヴィーゴによって支配されたことはすぐ大陸全土に広がっていったのだった。


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