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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
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第174話 犬か狼

 少しの間戦場から離れたマルコだったが、無事ブルーノを連れて自陣に戻った。

 ついでと言ってはなんだか、たまたま救った子犬も一緒に付いてきた。


「おっさん!! マルコ……様、おっさんは無事……ですか?」


 ロメオは焦っているせいか、マルコに敬語を使う事を忘れそうになりながら、ブルーノの容体を聞いてきた。


「辛うじて救う事が出来た。一応安定している状況だよ」


 マルコは手足が無くなり、様々な場所に傷が出来ていて出血が酷かった事を、慌てているロメオに説明した。

 出血が酷かったので、血液が足りなくなって気を失っているが、恐らくは大丈夫だろうと言うことも付け足しておいた。


「一緒に巻き込まれたのはバラバラだったけど……」


 ブルーノが倒して引きずって来ていたライモンドは、マルコがブルーノを助けている側にバラバラになった肉片が散らばっていた。

 敵とは言え、その状態には同情の気持ちを持たないでもいなかった。


「運の良い人だ。魔法の直撃を受けて生き残る何て……」


 魔力をほとんど使いきり、竜巻の魔法を直撃したにも関わらず、辛うじてとは言え生き残った強運に、ベルナルドは感嘆の声をあげた。

 魔力を多少でも纏っていればもっと怪我なく済んだのだろうが、ライモンドとの戦いで魔力をほとんど使いきっていたので、素の状態で食らってしまったのである。


「ハッ、ハッ、ハッ……」


 そして、マルコの足元には黒い毛並みをした子犬?、がお座りをして大人しくしていた。


「………………マルコ様その狼は?」


 それに気付いたベルナルドは何故ブルーノを助けに行って狼を連れてきたのか分からず、マルコに疑問の声をかけた。


「ん? 狼? 犬でしょ?」


 ベルナルドに問われたマルコは、犬だと思っていたので首を傾げた。


「いえ、小さいですが、その足の太さ等は狼かと……」


 小型とは言えその犬、もしくは狼は足は太く、成長すれば大きくなる事は分かりきった特徴をしている。


「ん~……、どっちでも良いよ。何か怪我してたのを助けたら付いてきちゃった」


 白狼も小さい頃から育てて来ていたので、狼の特徴は理解しているつもりではいる。

 言われてみれば足が太いが、白狼の小さい頃程でもないので、マルコはこの子を犬だと思っていた。


「……………………こいつフェンリルじゃね?」


 話を聞いていたロメオは、しばらくこの子狼を見ていてある事に気付いた。

 この近くにはフェンリルが住んでいると言う事にである。

 何となく見ていた子狼に、そんな考えが浮かんできたのである。

 半信半疑ながら、ロメオはその疑問が口から出ていたのであった。


「……………んなバカな。フェンリルって灰色っぽい毛色じゃ無いの?」


 ロメオのその言葉に、マルコは自分が聞いているフェンリルの特徴を思い出していた。

 灰色の毛並みに、巨大な体躯をした狼だという話を聞いている。

 それに引き換えこの子狼は、犬だか狼だか分かりずらい特徴した黒い毛並みをしている。

 たとえ狼だとしても、フェンリルの毛色には似ていない。


「そうですが……、子供の頃の毛色までは分からないので……」


 子供の時と毛色が変わる生物もいる。

 フェンリルの子供など誰も見たことがないので、ベルナルドは曖昧な返事を返した。


「ハッ、ハッ、ハッ……」


「「「……………………」」」


 マルコの足元にいる子狼は、マルコ達の話は興味が無いのか、ただマルコの側で落ち着いていた。

 これまでの話し合いから、僅かながら誰もがもしかしてと思い始め、その子狼を黙って眺めていた。


「…………フェンリルだったらやばくね?」


 その沈黙に耐えられず、ロメオは疑問を声に出した。


「…………お前フェンリルなの?」


 マルコもまさかとは思いつつ、足元の子狼を抱き上げ、目を見つめて問いかけた。

 もしもフェンリルなら、明らかに子供のこの子狼が、一匹でいた事がまず理解できない。

 マルコがブルーノの側に行った時、その周辺には親のフェンリルの気配はしなかった。

 気配がしていたら、ブルーノには悪いが見捨てていた可能性が高い。

 いくらマルコでも、万全の状態でない今、フェンリルと戦うなどという気持ちは持っていない。


「ハッ、ハッ、ハッ……」


 抱き上げた子狼は、マルコの顔が近付いたので、嬉しそうな顔で舌を出してペロペロとマルコの顔を舐め出した。


「……フェンリルってこんなに人懐っこいの?」


 マルコは顔を舐められ、ベチャベチャになりながら、ロメオとベルナルドに問いかけた。


「……そう言われてみると、やっぱり違うのかな?」


 マルコのいう通り、この子狼はマルコになつき過ぎである。

 瀕死の状態を救ったとは言え、ここまでなつかれる事に不思議に思っていた。

 フェンリルと言えば、天災のと呼べるような戦闘力を有する魔物で、未だかつて従魔にした人間など見た事も、聞いたこともない。

 そもそも人に懐く事はないと思われている魔物である。


「戦場に子狼って……締まらないな」


 マルコが戻り、ブルーノが生きていた事を知ったルディチ軍は活気が出て来ているのだが、マルコの方はと言うと、足元の子狼が擦り付いているので、何となくシャキッとしない感覚に陥りながらも、戦場に目を向けたのだった。


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