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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
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第172話 逃走

 戦場から離れて戦っていたブルーノが、ボコボコの顔になりながらもライモンドに勝ち、縛り上げて引きずって来た姿を見て、ルディチ軍側は歓喜の声をあげた。


「!!? ぐわっ!?」


 片手を上げて勝利の余韻に浸っていたブルーノと、縛られているライモンドに対して風魔法の竜巻が襲いかかった。

 その竜巻によって、ブルーノとライモンドは四肢を切り刻まれて森の奥に飛ばされていった。

 ライモンドは片手両足が四方に飛び散り、ブルーノも片足片手が切り飛ばされ、2人とも森の奥に消えていく姿を見るからに、生きていることはないように思えた。

 生きていても状況からいって数分の命、助けに行っても死んでいるだろう。


 その様子を見ていた両軍の兵は、その竜巻を放った人間に目を向けた。


「……使えない奴め、目障りだ」


 その竜巻を放った張本人のセルジュは、ゴミでも見るかのような目で飛んでいく2人を見つめていた。



「ブルーノ!!」


「先輩!!」



「……………テメエ! 何しやがんだ!!」


 マルコやベルナルドが驚きの声をあげ、敵味方関係なくセルジュのその行動に固まる中、いち早くロメオが行動を起こした。

 ブルーノを殺された怒りによって、一気に頭に血が上ったロメオは、セルジュ向かって真っ直ぐに突き進んでいった。


「考え無しだな!」


「!!? がっ!」


 しかし、その途中でロメオの進行を止めるように、1人の男が槍による突きを放ってきた。

 辛うじてロメオは槍の柄で防ぐ事が出来たが、咄嗟の事だった為受けた態勢が悪く、ロメオは数m飛ばされていった。


「貴様のような奴がセルジュ様に近付こうなんて100年早いわ! 貴様のような奴は副将軍である私、サンソーネが成敗してくれる!」


 そう言ってサンソーネは、立ち上がるロメオに向けて槍を構えた。


「…………テメエ、邪魔すんじゃねえよ!!」


 立ち上がったロメオは、まだ怒りで我を忘れているのか、真っ直ぐサンソーネに向かって突っ込んで行った。


「フフフ……、仲間の死に我を忘れるとはまだまだ甘いですね!」


「!!? 何だと!?」


 ロメオの槍による攻撃を難なく防ぎつつ、サンソーネは余裕の発言をした。


「テメエの仲間も殺られてんだぞ!」


 がむしゃらに攻撃をするロメオは、その態度が気に入らなく、サンソーネに問いただした。


「我々帝国軍は勝利こそが至上命題。ライモンド将軍は負けました。どんな良い勝負をしようが負け犬を始末するのは当然です」


「なっ……?」


 サンソーネは、当然と言ったような態度で言い放った。

 味方であろうともあっさりと切り捨てる態度に、ロメオは驚きで一瞬の間が空いた。


「ハッ!」


「ぐっ!」


 その隙を逃さずサンソーネの攻撃がロメオを襲い、ロメオは左肩を僅かに切りつけられる。


「戦いの最中に隙を作るようでは私に勝てませんよ?」


 攻守が交代し、今度はサンソーネの槍による攻撃がロメオに降り注いで行った。


「くっ! ふっ! つっ!」


 降り注ぐサンソーネの攻撃を、ロメオは必死になって防いだ。


「ハッ!」「タッ!」


 互いに突きを放ち、槍同士がぶつかり合った反動を利用して、2人は距離を取った。


「ふ~……、思ったよりやりますね……」


「ハァ、ハァ……」


 息切れするロメオとは対照的に、サンソーネは余裕で槍を構えていた。


「…………すぅー、ハァーー……」


 ロメオはサンソーネを見つめながら、深呼吸を始めた。


『頭に血が上って攻撃が単調だ! 冷静に相手を見て戦え!』


 そうすることでロメオは、ティノにも、そしてブルーノにも、指導を受けたとき言われていた事を思い出していた。

 ロメオは昔から怒りで攻撃が単調になる癖があり、何度も何度も2人に注意を受けてきた。

 知能の低い魔物相手ではそれでも通用してきたが、洗練された武を操る相手では通用しないことを、今ようやく理解したのだった。

 ブルーノを殺された怒りは忘れない。

 それでも冷静に戦わなければ、サンソーネには勝てそうにない。

 深呼吸をして頭が回ってきたロメオは、冷静にサンソーネに目を向けた。


「…………ほ~お、さっきまでとは全く違う顔つきになりましたね。私も本気にならないといけないようですね」


 様子が変わったロメオを見て、サンソーネはこれまでの余裕の表情から一転、真剣な顔つきになりロメオと対峙した。


「ハッ!」「ター!」


 両者とも同時に、相手に向かって飛び出した。


「セヤッ!」


「なっ!?」


 冷静になったロメオは、槍を剣のように上段から降り下ろした。

 それを驚きつつもサンソーネは柄で受け止める。


「!!?」


 サンソーネがロメオの攻撃が防いだ直後、ロメオは槍からそのまま手を放し、サンソーネの懐に一気に入り込んだ。


「喰らえ!!」


「ぐっ!?」


 懐に入ったロメオは、土魔法で岩を纏った右拳をサンソーネの腹にねじ込んだ。

 それによって、サンソーネはかなりの距離飛ばされて着地した。


「チッ! 浅いか……」


「面白い事を思い付きますね。結構痛かったですよ」


 ロメオの突飛な攻撃に驚いたサンソーネだったが、咄嗟に反応し、腹に攻撃を受ける瞬間自ら後ろに飛ぶ事によってダメージを抑えることに成功したのだ。

 とは言っても殴られた事は事実なので、サンソーネは腹を擦りながら呟いた。

 そしてサンソーネは手を降り、どこかに合図を送った。


「ロメオ!! 下がれ!!」


「!!?」


 その様子を見ていたベルナルドは、咄嗟に大声で後退の指示を送った。


「くっ!」


 ベルナルドの声に反応し、ロメオは全力で自陣に向かって走り出した。

 その直後、ロメオに向かって火や水、電撃等の色々な魔法が降り注いでいった。


「ウオーーー!!!」


 ロメオは、なりふり構わず全力で走り、降り注ぐ魔法を辛うじて回避していった。


「ウガッ!」


 もう少しで戦場の最前線と言った所で、土魔法の岩がぶつかり、ロメオの右腕がへし折れた。


「ぐうぅ……」


 痛みで呻き声をあげながら片手で槍を振り回し、敵を遠ざけ道を作りロメオは自陣に逃げ帰ったのだった。


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