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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
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第171話 拳のぶつかり合い

「オラー!!」「セイッ!!」


 ブルーノとライモンドの戦いは、ほぼ互角と言った感じで進んでいった。

 ブルーノが大剣を降り下ろすと、ライモンドは槍の穂先で受け流して躱し、そうして隙が出来ると素早い突きを繰り出してきて、それをブルーノが大剣で受け止める。

 お互いがお互いの攻撃を上手く躱し、すぐさま反撃に出る。

 そのような光景が、何度も繰り返されていた。


「ガッ!」「ヌンッ!」


 巨大な肉の塊がぶつかり合い、鍔迫り合いの形になる。


「てめえ、しつけぇんだよ。さっさとくたばれよ」


「フッ、面白い。私と互角に戦える者がまだいるとは……」


「会話になってねえぞ、この戦闘狂が!」


 お互い押される力を利用してまたしても距離を取り合う。

 味方を巻き添えにしないように、打ち合いながら少しずつ戦場から離れた場所に来た2人。


「どうやら後は魔法次第と言った所か……」


 これまでの武器による戦いは互角、後はどちらもまだ使っていない魔法を組み合わせた戦い次第でどちらに勝負が決すると言った状況である。


「ヌンッ!」


「!!?」


 ライモンドが先に動き出した。

 風の魔法を利用してこれまで以上の速度で、一気にブルーノに迫り来る。


「何だよ……」


「!!?」


 目の前まで迫ったライモンドの槍を、ブルーノは愚痴を呟きながら躱した。


「てめえも風の魔法が得意なのか?」


 ブルーノはライモンドと同じく、風の魔法を使って速度を上げて躱したのだった。

 武器が違う以外互角の2人の戦いは、そこから長期戦の様相を呈していった。



◆◆◆◆◆


「まずいな……」


 ブルーノがライモンドと戦う為に戦場から離れた事で、戦場は当初と変わらずじわじわと帝国の数による勢いに押され始めていた。

 それを見て、マルコは今にも飛び出して行きそうな感じで眺めていた。


「マルコ様。ベルナルド隊長もいるんだし、俺が行っても良いっすかね?」


 護衛役としていつもマルコの側にいるロメオが、不利な状況を見兼ねて、自分が出る事を進言してきた。


「えっ……!?」


 確かに今前線からは離れているマルコに護衛は必要としていないが、親友を危険な場所に行かせることに、マルコは若干の躊躇をした。


「……死ぬなよ。ロメオ!」


「あぁ……、任せときな……」


 戦場では多くの味方が命を落としていっている。

 少しでもその数を減らすには、早く敵を減らす事が必要である。

 ブルーノのお陰で、少しだが数を減らせることが出来た。

 しかし、まだまだ数の差がありすぎる。

 マルコは、ロメオに任せる事を決断した。


「行ってくるぜ!」


 マルコに見送られ、ロメオは気合いを入れて前線に向かっていった。



◆◆◆◆◆


 ブルーノとライモンドの互角の戦いは、魔法を使っても互角で、2時間近く経っても決着が着かないでいた。


「オラッ!」「セイッ!」


 お互い魔力も尽きかけて来ていて、身体強化に魔力を纏うこともせず、素の状態で武器をぶつけ合っていた。

 疲労のせいかお互い渾身の武器のぶつかり合いに、武器が手から離れ、遠くに飛んで行ってしまった。


「ハァ、ハァ……」「ハァ、ハァ……」


 息切れをしながら睨み合うと、2人は武器を取りに行かず、ゆっくりと相手に歩み寄って行った。


「ハァ、ハァ、やっぱり男は拳だろ?」


「ハァ、ハァ、気が合うな」


 ブルーノとライモンドは、上半身に着けていた鎧や手甲等を外し、相手の間合いの1歩手前で向かい合った。


「ハァー!」「ダァー!」


 お互い同時に近付き、拳の戦いが始まった。

 初っぱなから気合いを込めたお互いの拳が、相手の顔面に直撃する。


「ふごっ!」「ぐうっ!」


 その衝撃にお互いふらつき、ライモンドがよろけて距離が開く。


「ガァー!」


 その隙に立て直したブルーノは、ライモンドに向かって左の拳を突き出した。


「ヌン!」


「ガッ!」


 しかし、ライモンドはその拳を躱し、ブルーノの腹に拳をねじ込む。

 その衝撃に、ブルーノは体をくの字に折り曲げる。


「ハッ!」


 そこに追い込みをかけるように、ライモンドは右拳を降り下ろす。


「くっ! オラッ!」


「ゴッ!」


 その拳を左手でガードし、ブルーノはライモンドの顎を右で撃ち抜く。

 拳の戦いによって、お互い相手にダメージを与える事が出来るようになったが、拳の戦いにおいても互角の2人は、交互に拳を打ち付け合うのだった。






「ゼェ、ゼェ、……」「フゥ、フゥ……」


 拳による戦いがしばらく続き、お互いボコボコの顔に変わりつつも睨み合う2人。

 ここに来てほんの僅かな差が現れてきていた。

 ブルーノは高身長とは言え180前半、それに引き換えライモンドはほぼ190の身長、その体格による差が出てきたようである。

 ライモンドの方が体格が良い分耐久力があるようで、ライモンドの拳の方が当たる数が増えてきていた。


「ハッ!」


「ウグッ!」


 ライモンドの右ストレートがクリーンヒットし、ブルーノは吹き飛ばされた。


「ガッ……」


「ハーー!!」


 ヨロヨロと立ち上がるブルーノに、好機と見たライモンドが、止めを差しに一気に近付き右拳を振りかぶった。


「!!?」


 ライモンドの拳が降り下ろされ、長かった戦いに終止符が打たれた。








 ライモンドが膝を折り崩れ落ちていった。


「ゼェ、ゼェ……」


 ライモンドの拳が当たると思った直後、ブルーノはカウンターを放ち勝利を納めたのだった。


「ゼェ、ゼェ、やったぞ、こんちくしょう」


 勝利したブルーノも疲れと痛みで倒れ込み、大の字になりながら勝利の余韻に浸っていた。


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