第170話 出撃
昨日は投稿出来ずすいません。書いていたのが全部消えてしまい書き直しました。
金曜日も同じ事をしてしまったのですが、途中までバックアップがあったので良かったのですが、昨日はバックアップもなく全消失でへこみました。
マルコ率いるルディチ軍と、セルジュ率いる帝国軍の戦いが開始された。
「やはり押されているか……」
開始早々は、ルディチ軍も拮抗した戦いを繰り広げていたのだが、数による差なのかじわじわと押され始めていた。
その事にマルコは少し焦っていた。
このままでは後退を余儀無くされる。
ただでさえ自国の兵が怪我を負い、中には命を落としているものがいる事に、悔しい気持ちが沸き上がっている。
このまま何もしなければ、敗北は必至である。
「マルコ様。ここは俺に任せてくれませんかね?」
兵達が側にいるせいか、いつもとは違い丁寧な口調でブルーノがマルコに話しかけてきた。
「おっさん!? なに言ってんだよ!?」
ブルーノの言葉にマルコが反応するより早く、マルコの護衛役のロメオが突っ込みを入れた。
「ブルーノ……、あなたがやられたら士気が下がります。勝算はあるのですか?」
ブルーノの実力は冒険者のみならず、ルディチ軍の兵達も理解しているところである。
ルディチ軍において現在最強は王であるマルコだが、トウセイの市民を奴隷から解放する事に相当な魔力を消費しているので、前線に出る事は出来ない。
そもそも王であるマルコが、危険な前線に出る事はあり得ない話である。
ともかく、ルディチのとって重要な戦力であるブルーノが負ける事は、兵達の士気に大きな影響を与える事になる。
数の差により不利な状況であるとは言え、今ブルーノを出すのはある意味賭けといった感じだ。
その為、マルコはブルーノに自信の程を問いかけたのだった。
「勝算? 俺はこれまで幾つも修羅場を潜り抜けて来たんだ」
そう言ってブルーノは笑顔を浮かべながらも、目だけは真剣にマルコに向けていた。
その目をしっかりと見つめ返し、マルコはある決断をした。
「……ブルーノ。出撃を許可します。負けは許されませんよ」
「負けませんよ。パメラの為にもね……」
マルコと結婚し王妃となろうとも、自分の娘のように育てたパメラの事を、ブルーノは今でも気にかけている。
あの化け物のティノが言っていたように、いつの日かマルコがこの大陸の覇者になるはずだ。
マルコが平和な世を作り、その隣で幸せに笑うパメラと子供を見るまでは死ぬ訳にはいかない。
「行ってくるぜ!」
気合いの声と共に全身に魔力を纏ったブルーノは、愛用の大剣を持って一気に戦場に突っ込んでいった。
「オリャーー!!」
あっという間に最前線に辿り着いたブルーノは、大剣を一振りするごとに数十人の帝国兵を吹き飛ばして暴れ始めた。
◆◆◆◆◆
「……すげえおっさんが現れやがったな」
突然のブルーノ出現に、セルジュは驚きを隠せないでいた。
その化け物じみたブルーノの戦闘力に、セルジュは冷や汗を流していた。
ルディチ程度の小国に、あれ程の実力を持った者がいるとは思ってもいなかったからである。
「……………………」
遠くからブルーノの動きを見ているライモンドは、その様子をただ黙って見つめていた。
「どうした? ライモンド……」
黙っているライモンドの様子に、セルジュは疑問の声をあげた。
「セルジュ様。私にあの者と戦う許可を頂けませんか?」
何かを決めたようにセルジュに体を向けたライモンドは、出撃の許可を求めてきた。
「……………何故だ?」
確かに、突如現れたルディチ側の強力な戦闘力を持った男には驚いたが、対処の仕様はある。
ルディチ側とは違い、こちら側は魔導師は万全の体制である。
遠距離攻撃により援護しつつあの男に戦力を集中すれば、時間は多少かかるだろうが倒すことはできるだろう。
わざわざライモンド程の戦力を投入する理由が理解できず、セルジュはライモンドに問い返した。
「まず、このままあの者に兵を削られますと、数の有利が無くなって相手に勢いを与えてしまいます」
「……なるほど」
セルジュ自身、戦争は数では無いことは理解している。
しかし、数は力である事も事実。
帝国兵は数の有利があるからこそ、余裕が生まれ冷静に戦う事が出来ている。
その余裕が無くなってしまうと、場合によっては敗北もあり得てしまう。
その事から、ライモンドの意見に納得の言葉を呟いた。
「それと……」
「……それと?」
他に理由があるのかと思いつつ聞いていたら、ライモンドが言い淀んだ為、セルジュは首を傾げて問いかけた。
「あの者と戦ってみたいと言う、自分の我が儘です!」
いつものように真面目な顔をしたまま、ライモンドは素直に自分の気持ちを述べた。
「………プッ! ハハハハハ……、そうか、我が儘か……」
まさか良い年こいたおっさんが、真面目な顔で我が儘を言ってくるとは思わなかったセルジュは、あまりの不意打ちに思わず笑いが止まらなかった。
「良いぞ! ライモンド許可を出す。行ってこい!」
セルジュは、ライモンドの実力を誰よりも理解しているつもりだ。
確かに前線で暴れまわっている男も強いが、ライモンドならば負けるはずがない。
その考えから、セルジュはライモンドに出撃の許可を出したのだった。
「行って参ります」
そう言うと、ライモンドは槍を片手にセルジュの側から飛び出して行ったのだった。
◆◆◆◆◆
「ドラァーーー!!!」
既に数百人の帝国兵を蹴散らしているブルーノは、更に次の集団に狙いをつけて地を蹴った。
「!!?」
その集団に向かう途中で、突如ブルーノの側面から槍による強力な刺突が向かってきた。
ブルーノは咄嗟に大剣を動かす事で、その攻撃を防ぐ事に成功した。
「我は帝国将軍ライモンド。お主の相手をさせてもらう」
「チッ! 俺相手に将軍が出てくるとはな……」
最初の衝突から鍔迫り合いのような状況になり、ライモンドとブルーノは一言言葉を交わした後、互いにバックステップをして距離を取った。
「……………」「……………」
互いに無言でにらみ合い、相手の挙動に集中した。
「ハァーーー!!」「オリャーーー!!」
僅かな時間が経過した後、2人は同時に気合いと共に地を蹴り、距離を詰め、大剣と槍によるぶつかり合いを始めたのだった。
次回おっさんVSおっさんの予定です。