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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
168/260

第168話 開戦

 予定通り元ヨカン村の跡地にて、マルコ率いるルディチ王国軍と、セルジュ率いる帝国軍が対峙した。


「ヤコボ、予定通り頼むよ」


「お任せください」


 返事をしたヤコボは、予定通り帝国軍の鎧を着用し、セルペンテ・シンミャを誘導する為森の中に入っていった。


「かかれ!」


 セルジュの合図によってマルコ達ルディチの軍に、首に奴隷の紋が印されたトウセイの人々が向かってきた。

 総勢4000以上の老若男女の人間が、武器を手に持っている。

 中にはヤコボから聞いていたように、子供の姿まである。


「あんな子供まで…………、何て奴等だ!」


 その様子にルディチの兵達は、怒りの声をあげていた。


「怒りはもっともだが、予定通り行動せよ!」


「「「「「ハッ!」」」」」


 マルコ自身も腹が立っているが、今は奴隷にされたトウセイの人達をどうにかしなくてはならない。

 怒りを抑えて、マルコは事前に説明した通り行動するように兵達に指示を出した。


「戦闘になれていない事が幸いしたかもしれませんね?」


 指示通り行動した兵達のお陰で、予定通りトウセイの人々は1ヶ所に集まっていた。

 マルコの隣に立っているベルナルドの言う通り、元々はただの市民である奴隷達は、近くのルディチ兵に向かって固まって向かっていく。

 それを利用して、ルディチ兵達は奴隷達と戦わないように動き回っている。


「魔導師部隊!!」


「「「「「ハッ!」」」」」


 マルコの合図により、魔導師部隊は魔法を発動させた。


「「「「「!!?」」」」」


 地面の土が競り上がり、ルディチ兵とトウセイの人々との間に巨大な壁が出現する。

 四方を壁に囲む事によって、1ヶ所に集まっていたトウセイの人々を隔離することに成功した。



◆◆◆◆◆


「ほ~……、上手いことやるもんだな……」


 出現した壁を見て、セルジュは感心したような声をあげた。


「だが馬鹿だな、あれほどの壁を作ったら魔導師がこれ以上戦えないではないか」


「確かにその通りですな。ルディチの王は何を考えているのか……」


 セルジュが言ったように、ルディチの魔導師部隊は大量の魔力を消費し、疲労によって息も絶え絶えである。

 帝国側からすれば、トウセイの奴隷兵は殺されても別に構わない存在でしかない。


「せめて少しでも相手の数を減らせれば良いと思っていたが、かなりの見返りが得られたな……」


 これで遠距離からの攻撃を気にすることなく戦うことが出来る。

 こちらはまだ何の損失もしていない状況でしかない。

 元々数で有利な状況だったのだが、更に有利になる事が出来た。


「では、そろそろ戦闘本番と行こうか?」


「はい」


 セルジュがそう言うと、ライモンドは手で兵に合図を送り、それを受けた帝国兵達はルディチ軍に対して行動を開始しようとした。

 その時……


「「「「「ガアアァァーー!!!」」」」」


「なっ!? なんだ!?」


「ウワッ!? 魔物だ!! 魔物の集団だ!!」


 突如森の中から帝国兵に向かって魔物の大群が押し寄せてきた。


「チッ! なんなんだあの猿共は!?」


 突然の猿の魔物達の襲撃に兵達が慌てるなか、セルジュは冷静に眺めていた。

 ヴィーゴと比べればレベルは低いが、セルジュも十分強者と呼べる類いの人間である。

 セルペンテ・シンミャ程度の魔物などで慌てるような人間ではない。


「もしかしたらルディチの奴等の仕業かもしれませんね……」


 ライモンドは、あまりにもおかしなタイミングで魔物が現れたので、何となくだがそのように判断した。

 送った斥候が戻ってこなかった事からも、何かしてくる可能性があるとは思っていたが、魔物を誘き寄せるとは思ってもいなかった。


「ふっ、面白い。どうやらただのバカでもないようだな……」


 現在自分達が魔物の大群の襲撃を受けている状況にも関わらず、セルジュは楽しそうに呟いた。


「そのようですね……」


 ライモンドも同じく手こずっている事を楽しんでいるようだった。



◆◆◆◆◆


「よし! 帝国軍は魔物の襲撃で慌てている。今の内に魔導師部隊は休息をとって魔力の回復にあたれ!」


 魔物の誘導に成功し、マルコ達ルディチ側は次の行動に出ている。


「闇魔法の使い手は付いてきてくれ!」


 そう言ってマルコは闇魔法の使い手を連れて、トウセイの市民を閉じ込めた壁に向かって走り出した。


「ハッ!」


 マルコは一気に壁に近付き、土魔法を使って壁に穴を開けた。


「トウセイ市民の諸君! 我はルディチ王国国王マルコ! これから奴隷魔法の解除にあたる。解除された人間から急いで東のダイシンの町に逃げよ! まずは子供、次に女性、そして男性の順で解除する。慌てることなく迅速に行動してくれ!」


「おぉ! 助かった。皆急げ!」


 マルコの言葉に反応したトウセイの人々は、言われた通り列を作り闇魔法の使い手に近寄って行った。

 奴隷は契約者から一定の距離を離れる訳にはいかない。

 距離が離れてしまうと、それだけで命を落としてしまうのである。

 壁に閉じ込めたまま戦う事も出来るが、魔法の飛び火でも食らったら、逃げ場のない状態なので被害は甚大なものになってしまう。

 手間がかかるが、奴隷解除をしていち早く戦場から逃がすのがベストである。

 帝国軍が猿の相手に手間取っている間に、マルコも一緒になって奴隷解除をおこなって行ったのだった。

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