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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
166/260

第166話 蛇猿

 新しく整備した街道を利用して、イチュウの市民達は迅速にダイシンの町に避難する事に成功した。

 あとは敵に擦り付ける魔物を見つけるだけである。

 その事を話し合う為に軍団長であるベルナルドと、町が山に近い事から、今までのメンバーよりも魔物の種類を知っていそうなイチュウの領主イザッコにも加わって貰った。


「あの2人は?」


 他にもこの会議に参加するように言ったメンバーがいる。

 その2人が来ていない事に、ギルド代表のブルーノは苛立ちながらアドリアーノに問いかけた。

 この国で一応貴族の爵位を与えている2人グリマンディ家のダニオ、カセターニ家のチリーノも帝国との戦いに参加するように言ったのだが……


「自分達は領地をハンソーから守る為、警戒を解けないとか言ってたね……」


 マルコに対して、2人は断りの一報を入れてきたのだ。


「体のいい言い訳に過ぎないだろ……あいつら負けたらさっさと逃げるつもりだろ?」


 ブルーノはマルコの説明を受けて、溜め息をつきながら呟いた。

 本来王であるマルコの召集に逆らう事は、許しがたい事ではある。


「……でもハンソーが何となく動いているのは本当だからね」


 マルコは、彼等の言い分もあながち嘘ではないので仕方ないと思っている。

 自分達が1国の王になれると思っていたところに、マルコが現れたことで結局小国の貴族の地位のままに戻ってしまったことで、マルコとは溝ができている状態である。


「あんまり放って置かない方が良いと思いますよ。このまま調子に乗られるとこの国にとっても良くありません」


 ブルーノ同様、ベルナルドもあの2人の行いにやや機嫌悪く、マルコに進言した。


「…………そうだね。今回のような事が続くようだとどうにかしないとね……」


 あの2人も一応ルディチの人間、溝が出来たままでいるのは後に不都合が生じるかもしれない。

 ベルナルドが言ったように、あの2人とは話し合う必要があるかもしれない。

 マルコはどうしたら良いものかと頭を巡らせた。


「……今はそれより帝国との事に集中しよう」


 すぐには思い付かないと判断したマルコは、その事をまずは忘れることにした。

 帝国に勝たなければ、先の事など言っている場合では無いのだから。


 マルコは、アドリアーノやブルーノとも話していた事を初参加の2人、ベルナルドとイザッコに説明した。


「それでしたらうってつけの魔物がおります」


 説明を終えたマルコを受けて、イザッコは心当たりがあった。


「えっ!? 本当に!?」


 やはり山の近くの町の領主であるイザッコを招いて正解だった。

 マルコは喜びが混じった声で驚いた。


「はい。セルペンテ・シンミャと呼ばれる魔物がおります。その魔物ならもしかしたら上手く行くかもしれません」


「……どんな魔物なの?」


 セルペンテ(蛇)なのかシンミャ(猿)なのか想像がつかないマルコは、説明を求めた。


「Aランクに指定している魔物で蛇のようにしつこい猿と言った所から付けられた名前です」


 その魔物の事を知っていたのか、ベルナルドが説明を始めた。


「……蛇のようにしつこい?」


「はい。通常は2、3頭で行動しているのですが、仲間が殺られたと分かると、群れ総出で報復してくるといった特徴を持っています。報復時のランクはSSランクに相当します」


「いいね。帝国にその報復をするように仕向ける事が出来れば言い訳だ!」


 ベルナルドの説明を聞いたブルーノは、今回の戦いに丁度良い魔物だと考えた。


「……ただ猿ですので、他の魔物よりも知能が高い傾向にあります。帝国に向ける場合の方法としては、帝国兵の装備をつけてその猿を殺す必要がありますが、その帝国装備が完全に帝国品で無いとなりません」


 知能が高いからか、僅かな違いを見抜く可能性があるらしい。


「……違うとばれたらどうなるの?」


 その話から、マルコは当然の疑問を問いかけた。


「……恐らく帝国だけでなく、側にいた我々に対しても向かって来る可能性が高いです」


「報復が帝国兵じゃ無くて、側の人間に向かうって言うこと?」


「はい。その通りです。最悪我々だけを報復対象にする可能性もあります」


 知能が高いと言っても猿は猿、装備品の違いに気付く事があっても、敵対関係にあるかどうかなんて理解しない。

 仲間を殺した人間と同じ装備の人間を殺しにかかろうとしたら、同じ装備をした人間がいない場合、仲間を殺した人間と同じ装備の人間ではなく、仲間を殺した人間を標的に変えると言うことだろう。

 せっかくの利用できる習性を持っているが、諸刃の剣といった側面もあると言うことらしい。


「標的にされると、とても厄介です。ヨカンの村が潰れたのもこの魔物によるものだと言われています。その名の通り、群れが潰れるまで蛇のようにしつこく標的に襲いかかってきます。我々に報復が向いたら最悪です」


「そりゃそうだ。だがその帝国装備が手に入れば問題ないだろ?」


「確かにそうですが、あてでもあるのですか?」


「…………無い! だが光が見えて来たじゃねえか!」


「そうだね。どうにかして帝国の装備品を手に入れるように手配しよう」


 この会議によってどうにか勝ち目が見えて来た。

 マルコは、帝国兵の装備を手に入れるように指示を出した。

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