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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
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第164話 罠作り

「マルコ様!」


「ん? 慌ててどうしたの?」


 ルディチ王国の王城で昼食を取り終わって休んでいたマルコのもとに、アドリアーノが慌てた様子で室内に入ってきた。

 今は元ヨカンの村の修復をすることになり、冒険者達によってそこまでの街道の整備をおこなっている途中である。

 街道の整備が終わり次第、イチュウの町への対話を始めることになっている。


「帝国の部隊の1つがこちらに向かって来ているもようです!」


「えっ!? マジで?」


 このまま領地拡大を進めていれば、その内どこかとぶつかるとマルコは思っていたが、向こうから向かってくるとはまだ考えていなかった。

 順調に進んでいるとは言ってもルディチ王国はまだまだ小国、わざわざ帝国がこの国を的にするとは思ってもいなかった。

 突然の話にマルコも信じられないでいた。


「どうなさいますか!?」


「どうって……迎え撃つしか無いでしょ?」


 帝国相手に話し合いなど通用しないことは、マルコも十分分かっている。

 どんな相手だか分からないが、どうにか勝たないとならない。


「どちらで迎え撃ちますか?」


 戦うにしても、どこでどう戦うか考えものである。

 町の近くで戦うわけにもいかないし、ルディチ王国の領地内で迎え撃てるようないい場所など思い付かない。

 アドリアーノは、その事をマルコに問いかけた。


「丁度良いとこがあるじゃん!」


「丁度良いとこ……あっ!」


 マルコの言葉を聞いて、アドリアーノもいい場所を思い付いた。


「元ヨカンの村の跡地ですね?」


 この場所はまだ再建に着手していない。

 街道の整備はもうすぐ終わるし、あそこで迎え撃つのが一番だろう。

 その答えにたどり着いたマルコとアドリアーノは、国内の兵士達に戦闘の準備を開始するように指示を出したのだった。


「あの場所で戦うに当たって、色々と罠を仕掛けておかないと……」


 ルディチ王国に攻め混むなら、元ヨカンの場所から攻め混むしかない。

 遠回りすれば他に道が無い訳ではないが、そちらはミョーワとハンソーの国の軍とかち合う事になる。

 そんな面倒な道を通るより、最短距離を進んでくるに違いない。

 来る場所と通る道が分かっているのだから、当然罠を仕掛ける必要がある。


「……あっ! あの村魔物に潰されたんだったよね?」


 どのような罠を仕掛けるか考えていたマルコは、ある考えが浮かんだ。


「はい……。そうですが……」


「そうか……、フッフッフ……」


 自分達がなるべく被害を受けず、敵だけに打撃を与える事が出来そうな手を思い付き、マルコは楽しそうに笑ったのだった。

 あの村の跡地の北は、魔物の巣窟となっている山がある。

 上手いことやってその山から村の跡地に魔物を呼び寄せ、敵になすりつける事が出来れば、自分達の被害は最小で勝利に近付く事ができるだろう。

 あとはどうやって魔物を誘き寄せるかが問題である。


「あの山の魔物で、群れで行動する魔物っていない?」


 あの山の魔物の生態が分かっていないので、どの魔物をターゲットにしたらいいか分からず、マルコはアドリアーノなら知っているだろうと思って聞いてみた。


「……まさか、魔物を誘き寄せるおつもりですか?」


 その問いかけでマルコの考えに気付き、アドリアーノは質問で返した。


「そのつもりだけど……駄目?」


「……いいえ、素晴らしい考えです!」


 マルコの問いかけに、アドリアーノは名案だと思い声が大きくなった。


「あとはどの魔物を誘き寄せるかなんだけど……」


「私もあまり詳しくは無いのですが、確か群れでは無いですがフェンリルが生息しているという話は、聞いたことがあります」


「フェンリルか……」


 フェンリル程の魔物が誘き出せたら言うこと無いが、さすがにそれは難しいだろう。

 巨大狼フェンリルは、1国を潰す事が出来ると言われるほどの戦闘力を有している。

 ランクは当然SSSランク、こちらからちょっかいをかけさえしなければ襲われる事はない。

 それ故、手を出さないでいたのだが、もしもフェンリル程の魔物を利用できたとしたら、これ程都合がいい魔物はいない。


「……フェンリルを誘き寄せる方法がないかな?」


 手を出せば敵ではなくこちらに向かって来るかもしれない。

 フェンリルがどれ程のものか分からないのに、手を出して面倒な思いをするのは勘弁願いたい。

 どうにか良い策がないか悩むが、マルコには策が浮かばず一人言を呟いたのだった。


「あることはあるのですが……」


 その呟きを聞いたアドリアーノは、言いにくそうに言葉を発した。


「どんな方法?」


 策があるなら聞いておきたい。

 マルコは前のめりになりながらアドリアーノに問いかけた。


「フェンリルに子供がいた場合、その子供を殺し、敵の軍に放り投げるという方法です」


 フェンリルが強いと言っても、子供ならば危険のランクは大分落ちる。

 子供の側には親がいるので見つけても手を出すのが難しいが、誘き寄せるとしたら子供を利用するしかない。


「その策は……何か嫌だな。こっちも危険だし……」


 手を出さなければ大人しくしている所、魔物とはいえ子供を利用されたとしたら、敵を倒しただけでフェンリルの怒りが収まるか分からない。

 こんな時だから嫌も何も無いのだが、こちらの危険があるような策はなるべく控えたい。


「……フェンリルに子供がいるかも分かんないし、他の魔物を誘き寄せる策を考えよう……」


「そうですね。山の捜索をするように指示を出しておきます」


 そもそも都合よく子供がいるかも分からない。

 その為、フェンリルは置いておいて他の魔物を誘き寄せる事になった。

 山の魔物の種類が分からないので、都合のいい魔物がいないか、アドリアーノは山を捜索して探すように指示を出したのだった。

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