表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
162/260

第162話 セルジュの思惑

 ティノによる妨害で他国が侵攻に手間取っているなか、ルディチ王国だけは順調に領土を拡大していっていた。

 しかし、他国の中でヴィーゴの隊だけは、少しずつだが侵略に成功しつつあった。


「……なかなかやるな」


 リンカン城内で足止めを図っていたティノも、ヴィーゴの実力に感嘆の声をあげた。

 他の足止めがまだ有効なのに対して、的確な指示を出すことによって、しっかりと先へ向かっているようである。


「もう少し足止めを強化する必要があるな……」


 西から侵略を始めたヴィーゴは、ティノの足止めを受けつつもダセキの町を手に入れ、次はノアの町へ向けて進行し始めている。

 現在ティノがいるリンカン王国王都のナカヤはノアの隣に位置しているので、いよいよここも危険になってきたところである。

 ルディチ王国は領土拡大に成功しつつあるが、まだまだ小国である。

 ルディチがもう少し領土を拡大するまでリンカン王国に潰れられるのは迷惑な話である。

 リンカン王都に一番早く着くのは、恐らくヴィーゴが最有力だろう。

 その為、ティノはヴィーゴへの足止め強化をすることにした。



◆◆◆◆◆


 帝国皇帝の長男のセルジュは、魔物の大群に手間取り、当初の予定より大分遅れてようやくベノの町の侵略が進んでいた。


「チッ! ヴィーゴの奴が次の町に進んでいると言うのに、我々はまだ終わらんのか!?」


 現在帝国内において、次期皇帝の最有力になっているのは、リンカンとの戦争で勝利をしたヴィーゴである。

 中にはムシュフシュを倒した事もあり、英雄扱いしている人間もいるらしい。

 これまでは、セルジュとサウルのどちらかが次期皇帝だと言われていたのにも関わらず、今は次期皇帝に2人を押す人間は全然いなくなっている。

 このリンカン侵略で領土を拡大しまくり、やはり次期皇帝は自分だと帝国民に思わせる算段だったのだが、魔物の大群と言う邪魔が入り進行が遅れていることに、セルジュは苛立ちが隠せないでいた。

 今も部下に対して荒い口調で問いかけているのだった。


「申し訳ありません。セルジュ様。市民の抵抗もあり、もう数日程かかる予定になっております……」


 問われた部下は、セルジュの口調に焦りつつも懸命に答えを返した。

 魔物の大群と言う邪魔が入ったにも関わらず、ベノの町の半分を制圧出来たのは、かなりの早さである。

 セルジュとサウルは、今回の侵略でヴィーゴ以上の名声を得ようと、大量の兵を率いて挑んでいる。

 それのお陰なのか、侵略速度はヴィーゴ以上かもしれない。


「このままではリンカン王都には、ヴィーゴより先に入ることは出来そうに無いな……」


 このままベノを侵略し終え、リンカン王都のナカヤまでは、まだ2つ、3つの町を支配してからでないと入る事は出来ない。

 当初の目的はサウルは勿論の事だが、ヴィーゴより先にリンカン王都を侵略することであった。

 しかし、現状ではかなり厳しい事になっている。


「……………ライモンド!」


 その事をしばらく黙って考えいたセルジュは、自分の右腕とも言える将軍を呼び寄せた。


「はっ! 何でごさいましょうか?」


 帝国の将軍の中でも、1、2を争う程有名な男であるライモンドがセルジュの前に現れた。

 190cm位の長身で筋骨隆々のスキンヘッドの男で、槍の名手として有名な男である。

 対人での戦闘も勿論の強いのだが、魔物の相手にも慣れていて、セルジュの隊が魔物の大群に手間取った時も、最終的にはライモンドが出張って静めたのだった。

 セルジュも武に自信がある方だが、ライモンドには敵いそうにないと思っている。


「確か北東には、何とかって言う国があったよな?」


 テーブルの上に広げた地図を眺めつつ、セルジュはある事を考えついていた。


「北東……、あぁ、ルディチ王国ですね?」


 新興国であるせいか、それともこの大陸において最小国であるせいか、セルジュはルディチ王国の名前を覚えていなかった。

 そして問われたライモンドも少し考えた後、思い出したようにルディチ王国の名前をセルジュに言った。


「ルディチ王国と言うのか? 名前はまあいい、そこはここからなら近いのか?」


「はい。確かルディチ王国は、どこの国よりも領地拡大が順調に進んでいると聞いております。その為、ここからは北東のコドウの山を越え、トウセイの町の東のイチュウの町の北で何か行っているようです」


「そうなのか!?」


 ルディチの噂も覚えていなかったセルジュとは反対に、ライモンドはルディチの噂を覚えていた。

 それにより、セルジュは驚きの声をあげた。

 どこの国もまだ侵略に手間取っていると言うのに、その名前も覚えていないような国に先を越されているとは思ってもいなかった。


「……………これは逆についてるかもな」


「……と申しますと?」


 ライモンドの話を聞いて、セルジュはある考えが頭に浮かんで嬉しそうに呟いた。


「そのルディチ王国とやらを潰しに行くぞ!」


「…………なるほど!」


 ヴィーゴ以上の成果を上げるには、丁度良い相手かもしれない。

 リンカン王都をこのまま目指すよりも、領土拡大を順調にしているそのルディチ王国を潰せば、リンカン王都を取ったヴィーゴよりも、もしかしたら評価が上になるかもしれない。


「この町を取ったら北東に向かうぞ!」


「畏まりました」


 そんな考えが浮かんだセルジュは、そのルディチ王国をターゲットにすることにしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ