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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
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第161話 跡地

「こっちの方だったよね?」


「ええ、そうよ」


 マルコ達は、ダイシンの町の近くの森から南西の方角に向かっていた。


「ん~……、言われてみると確かに轍のような物が僅かに見えるね……」


 パメラの発見の確認の為に、マルコ達はもう一度探索に来たのだった。

 すると、パメラの言っていた通り、僅かに轍の痕跡が見て取れた。

 何十年も前から放置されているため分かりにくいが、確かに石で舗装された部分がある。

 対向馬車の事を考えた広さには、草は生えているが木は生えていない。


「ここを南西の方角に修復して行けば、確かにイチュウの町に出られるかも……」


 強力な魔物が住むと言われている山を迂回しているので、それほどの危険は少ないだろう。


「ちょっと草が邪魔だな……ハッ!」


 一言呟いた後、ロメオが風魔法を飛ばし、一気に数十mの草を切り飛ばした。


「これで少しは進みやすくなったろ?」


「そうだね」


 それから、ロメオが先頭で草を切り飛ばし、マルコ達は後を付いていく形で轍跡を進んで行った。

 途中で魔物が現れたが、大した魔物は出て来なかったので、時間を奪われること無く先に向かって行った。


「ん?」


 2時間程歩き続けていると、違和感のある場所にたどり着いた。

 通ってきた轍跡と同じようにあまり木が生えておらず、草が生い茂っている場所だった。


「ここがアドリアーノが言っていた村の跡地かな?」


 そうここは昔、ヨカンと呼ばれた村があった場所である。

 よく見ると、崩れてはいるが家の形をした物が所々に残っている。


「確か魔物にやられたんだっけ?」


 3人は話しながら村の跡地を周り、周辺の様子を探っていった。


「今は魔物が住み着いている様子はないね」


 ここに来たのには、イチュウにまでの時間や安全性の確認ともう1つ理由がある。

 潰れたとは言え元々は人が住むことが出来るのだから、ここも再建してまた村を作り直してしまおうという事になったからである。


「整備すればまた村として住めるんじゃないか?」


「うん。でも、魔物が出るのはどうしようもないね……」


 マルコとロメオは同じ意見になった。

 ここの北には、強力な魔物が住み着く山がある。

 山から少し離れているとは言え、そのせいか魔物の気配をちょくちょく感じる場所である。


「かなり強固な壁を作らないとならないわね……」


 感じる気配は強力な魔物ではないのだが、毎度のように現れては安心して住めるという訳にはいかない。

 大した事ない魔物なら、壊される事のない壁を作れば良い。

 頻繁に出現するであろう魔物から、安心して住めるようにするのであればパメラのいう通り強固な壁を作る必要がある。


「魔導師部隊を使うのはな……」


 早く壁を作るのであれば、魔法を使って作るのが早い。

 魔法で壁を作ると言ったら魔導師部隊である。

 しかし、ナイホソの整備などでかなりの労働を強いた魔導師部隊に、まだ数週間位しか経っていないにも関わらずまたやらせるというのは気が引ける。

 王なのだから命令すれば動くだろうが、それはあまりしたくはない。


「……冒険者にやらせるしか無いんじゃない?」


「どうやって?」


「大人数を集めて建築の仕事をさせれば良いんじゃない? ギルド職員を監督役にすればサボらないだろうし、魔物が出ても協力すれば大丈夫だろうし……」


「ん~……、そうなると監督役のギルド職員は重要になってくるな……」


 パメラの思い付きのような提案に、マルコは考えを巡らせてみる。

 冒険者達は自由人が多い。

 他の人間に命令されて動く事など嫌な人種ばかりだ。

 仕事をしていて揉めたりしたら、監督役の職員が狙われる可能性がある。

 揉めないように上手くコントロール出来る人間か、襲われても返り討ちに出来る人間でなければ、この仕事は務まらないだろう。


「大丈夫よ。ブルーノにやらせれば良いわ」


「……あの人一応ギルマスだよ?」


 ある意味育ての親だとは言え、今はギルマスの立場のブルーノをあっさりと提案するパメラに、若干言葉に詰まりながらマルコは言葉を返した。


「大丈夫よ。ブルーノも1からの村作りなんて、きっと喜ぶに決まっているわ」


 性格も把握しているせいか、パメラは自信満々な答えを返してきた。


「ん~……、パメラが言うなら大丈夫かな……」


「だな……」


 パメラの方がブルーノの事は良く知っている。

 そのパメラが自信満々なのだから、取りあえず王都に戻ってブルーノに話してみる事にした。


「まだ王都に戻るまで時間もあるし、取りあえず草だけでも刈っとく?」


 ここまでの道も補整して貰うので、ここに冒険者達が来るには少し時間がかかる。

 せめて草を刈る時間だけでも短縮するべく、マルコは草を刈る事を提案した。


「そうだな。まぁ、魔法であっという間だけどな……」


 ロメオがマルコの提案を受けると、風魔法で刈って行った。

 3人はダイシンまでマルコの転移で来たので、マルコは魔力を温存して剣で刈り、パメラは2人が刈った草を1ヶ所に集めていた。

 3人の連係によってあっという間に草刈りを終え、マルコの転移魔法で王都に戻って行った。

 王都に戻ってブルーノに道の補整と村の再建の話をしたら、パメラが言っていたようにめちゃめちゃ乗り気になり、早速冒険者を集めると言っていた。

 他の国がリンカン王国の侵略に手こずるなか、ルディチは順調とも言えるように領土を拡大して行っていたのだった。


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