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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
155/260

第155話 人集め

 帝国同様、ミョーワ・ハンソーの同盟軍も思うように進めず、侵略に戸惑っていた。

 そんな中ルディチ王国だけが、いち速く領土拡大に成功したことが知れ渡って行った。


「ヴィーゴ様、ルディチがナイホソの町を傘下に収めたとの知らせが入りました」


 リンカン王国侵略最初の町のセキダに入り、侵略を開始した初日に、ヴィーゴはその知らせをダルマツィオから聞かされた。


「ナイホソ? 確かリンカンの東にある町だったか?」


「はい。ルディチ王都の隣にある町だったかと……」


 ケトウ大陸の西に位置する帝国からすると、他国の発展していない東の町など興味がない。

 とは言え、ある程度の情報は仕入れている。


「ナイホソは現在荒れてるって聞いたはずだが?」


 ヴィーゴは、頭の片隅に残っていたナイホソの情報を思いだし、ダルマツィオに尋ねた。


「その通りです。ナイホソは徴兵などにより荒廃しているという話です。」


「そんな町手に入れてどうしようってんだ? ナイホソの西にあるダイシンの町の方が、まだ荒れてなくて人口も多いのだから手に入れるべきだろ?」


 ダイシンも徴兵により男性の労働力が減ったが、人口が多いお陰で助け合う事が出来、どうにか荒れずに済んでいるようである。

 その情報から放っておけば、その内潰れて簡単に手に入るナイホソなど無視して、現在の状況から数を求めるルディチは、ダイシンを目指すと考えていた。


「……マルコの奴は何を考えているのだ? 今のナイホソなど手に入れても何のメリットもないだろう?」


「……私もそう思います。まさかとは思うのですが……」


 ヴィーゴの疑問に同意したダルマツィオは、ある考えが浮かんできていた。


「何だ? 言ってみろ」


 ヴィーゴは、ダルマツィオの尻すぼみの部分が気になり、話すように指示をした。


「ルディチ国王は、ハンソーの初等部しか出ていないと聞いております……」


「……それで?」


 この時点でヴィーゴはダルマツィオの言いたいことは分かっていたが、話すように言った手前、最後まで聞いてみることにした。


「武に優れていることは確かかもしれませんが、王としては凡庸なのでは無いでしょうか?」


 初等部しか出ていないからといって馬鹿だとは言い切れないが、王の立場の場合色々な分野においてのある程度の知識が必要になる。

 高等部を出ていれば、王にとって最低限の知識が得られているだろうが、マルコは初等部しか出ていない。

 血筋と武の才によって王になっただけの可能性も捨てきれない。


「……そうだな、お前の言うことも分かる。……が、俺はマルコという男がセルジュ兄貴のような体力馬鹿だとは思えない……」


「ナイホソを手に入れる理由があったと言うことでしょうか?」


「……分からんが、そうでもなければ手に入れんだろ?」


「そうですね……」


 無駄とも言えるルディチのナイホソの町取得の事を考え、2人は意見を出し合うが、マルコの意図が分からず首を傾げるばかりだった。


「まあいい、マルコの事は気になるが、我々はセキダを手に入れる事に集中しよう」

 

「畏まりました。すでに兵の編成は済んでおります。後2、3日で制圧が完了するはずです」


「さすがだな。お前の素早い行動があるから俺は楽が出来る」


「お褒め頂きありがとうございます」


 マルコが治めるルディチと争うのはまだ先の事、恐らくティノだと思われる邪魔により大幅に時間が奪われ、自分達の侵略が遅れている。

 今はこちらに意識を割かなくてはならない。

 なので、ヴィーゴはマルコの事は取りあえず置いておく事にしたのだった。



◆◆◆◆◆


 ルディチ王国の援助によって、ナイホソは少しだが復興し始めていた。


「マルコ様、外壁や田畑、そして建物なども修繕して頂いたのですが、人の方は全然目処が立たないのですが……」


 マルコが連れてきた魔導師達によって町自体は直っていったが、減ってしまった人口の部分はどうにもならず、このままではまた荒廃して行くだけなのではと思ったジルドが、マルコに尋ねてきた。


「大丈夫! ちょっと考えがあってね……」


 そう言って、マルコは胸を張って答えた。


「どのような?」


 マルコの態度からその考えが気になったジルドは、聞かずにはいられなかった。


「それは……」


「はい……」


 間を取るマルコを、ジルドは期待のこもった目で見つめた。


「秘密だ!」


 まるで子供のようにニッコリ微笑み、マルコはジルドの頭を撫でた。


「まあ、期待して待ってろよな!」


「……は、はい」


 マルコに撫でられ、髪の毛をぐしゃぐしゃにされたジルドは、髪を直しつつマルコの言葉を受け入れた。



◆◆◆◆◆


 数日後、ナイホソの町には、ルディチ王国からやって来た沢山の人達が、町に入る門の前に列を作っていた。


「マルコ様! これはどういう事でしょうか!?」


 列の様子を見たジルドは、畑を耕すマルコに慌てて聞きに行った。

 王なのにマルコが畑を耕したいと、荒れていた土地を直し始め、魔法も使ってかなりの田畑が修繕されていた。

 一応マルコの護衛役のロメオも、巻き添えをくらって手伝っていた。

 朝の畑仕事を一息ついて、マルコはジルドと共に門の列を見に向かった。


「すごいな……」


「はい!」


 外壁の上に立ち、列に並ぶ人を見て、マルコは少し驚きの言葉を呟いた。


「沢山の人です。しかも人族だけでなく獣人や魔人もいます。これはどういう事でしょうか!?」


 きっとこれが、マルコが言っていた考えによるものだと思ったジルドは、テンション高くマルコに尋ねた。


「ルディチのギルマスに頼んでおいたんだ。他の大陸の冒険者で種族に関わらず、定住する地を探している人向けの情報を流してくれって」


 魔導師達を連れてナイホソに向かう前に、マルコはギルマスのブルーノと話をしていた。



◆◆◆◆◆


「おう! 王様じゃねえか! こんなところにご苦労さん!」


 ギルドに向かい、ギルマスの部屋に入ったマルコを見て、王に対する言葉遣いとは思えない挨拶でブルーノは対応した。


「王様はいいですよ。いつもの呼び方で構いません」


 王になる前からの知り合いだし、ちょくちょく魔物の退治に一緒に出掛けているので、マルコはブルーノに王様と呼ばれるのは何だかしっくりこないのである。


「一応人の目もあるからな。ちゃんとしないと下からなめられるぞ!」


 そう言って、マルコの後に立つロメオに目を向けた。

 先程の言葉は、マルコに言っているようで、実は未だにマルコを呼び捨てにしてしまう時があるロメオに釘を刺す意味があった。

 今のところ問題にはなっていないが、場合によっては不敬罪と言われても仕方がない事である。

 ロメオがマルコの古くからの友人だと言うことを知っている人は多いので、何とかなっているが、これから軍に入る者達には、あまり良くない行動である。

 その事をロメオに何度か注意しているブルーノは、最近でも会うと注意するようにしている。


「それよりもナイホソを手に入れたらしいな? 今あそこ手に入れても意味ないだろ?」


 ブルーノもヴィーゴ達同様、ダイシンから向かうと思っていたので意外な感じがしていた。


「確かに荒れて果て、人口も少なくなってしまったけれど、残った人達を見捨てる事は出来ません!」


「……お前らしい考えだ」


 ハッキリ言って甘いと言いたいところだが、マルコの性格を考えると仕方ないかと思う気になり、ブルーノは言うのを諦めた。


「……で? ここ(ギルド)には町の修復に関する依頼かい?」


 ナイホソは、マルコも口にしたように荒れ果てている。

 そこを手に入れたのだから、修復に人が必要なのだろうとブルーノは考えていた。


「いいえ。他の大陸のギルドに連絡して、移住者を集めてください。あっ! 領主も賛同しているので種族は問いません」


「えっ!?」


 町の修復に人を集めて欲しいという話だとブルーノは思っていたのだが、マルコの言葉に意表を突かれた。


「町の修復は魔導師の人達と僕達がやります」


「えっ!? 俺も?」


 僕ではなく、僕達と言ったマルコに、今度はロメオが意表を突かれて驚いた。


「しかし、修復したとは言え何もない町に住みたがる人間なんていないんじゃ……」


 確かに魔導師達を使えば修復に人を集める必要はないが、メリットなく何もないところに住む人などいないと考えるのが普通である。


「移住者には、一軒家を無償提供します!」


「はぁっ!!?」


「人がいなくなってしまって土地が余っています。そこに魔法で家を建てて移住者に住んで貰おうかと……」


 メリットが無ければ作ればいい、そう考えてマルコは一軒家で人を集めようと考えたのだった。



◆◆◆◆◆


「……だからあんなに家を建てていたのですね?」


 外壁の修復の後、魔導師達はマルコの指示で荒れ果てた空き地に幾つもの家を建てていた。

 生き残った人達の建物は十分修復、建築されているので疑問に思っていたのだが、この為だったようである。


「上手く行ったな!」


 外壁の上から列を眺めつつ、マルコは策が上手く行った事に満足な顔をしていたのだった。


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