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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
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第146話 乱入者

 ボウシカの町、元リンカン城を利用して3国による会談が行われた。

 会談の場には円卓が用意され、他の2人の代表が視界に入るように間隔が空けられ、椅子が設置されている。

 代表の3人が椅子に座り、それぞれの代表の数歩後ろに2人の護衛が直立で立っている。


「本日はお集まり頂きありがとうございます。進行をさせて頂くハンソー王国宰相のルジェーロと申します」


 ハンソー王国の宰相は、マルコが学生時代ハンソーの王子のイラーリオの裏での行いを援助した事により失職し、現在このルジェーロが就いている。

 あの事件により、王子のイラーリオはしばらく牢獄行きとなり、その牢獄の中で散々喚き散らした後、自殺したらしい。

 イラーリオの指示とは言え、協力をした宰相はこれまでの王国への貢献を考慮して、恩情により職を失するだけで済まされた。


「私はハンソー王国国王のサント・ディ・ハンソーだ。早速だが、我々ハンソー王国としては、この同盟に反対はない」


 ハンソー王国の国王のサントがまず最初に名を名乗り、同盟への意見を言った。

 この3国の中では一番の領土を持つハンソーが、真っ先に参加を表明したことに、ルディチ王国代表のマルコと、ミョーワ共和国代表も意外な気が僅かにした。

 ハンソー国王は、慎重派な印象をどの国も感じていた。

 このボウシカを手に入れるのにも、予想より進軍が遅かった事からそういう印象が生まれたのである。


「ミョーワ共和国大統領のプリモ・ロッシです。我々は元々この同盟を言い出した身ですので、ハンソー王国同様賛成致します」


 副大統領のセコンドと話し合い、プリモはこの会談の招集を呼びかけた張本人である。

 なので、同盟の賛成は当然である。


「ルディチ王国国王、マルコ・ディ・ルディチです。我々ルディチ王国は……!!?」


 マルコが同盟への意見を言おうとした時、マルコは異変を察知し、咄嗟に身構えた。


「お前がルディチ国王か?」


「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」


 ワンテンポ遅れて、マルコ以外の参加者達も突然の乱入者の2人に対して身構えた。


「……お前は! チリアーコ!?」


「お久し振りです。ルディチ国王」


 乱入者の2人の内、1人の顔に見覚えがあったマルコは、その男の名前を呟いた。

 名前を呼ばれたチリアーコは、前回とは違い今回は名前を覚えて貰えていたので、若干嬉しそうにマルコに挨拶をしてきた。


「……挨拶はいい、何しに来た?」


「私は止めたのですがね……」


 そう言って、チリアーコは隣に立つ男の後ろに一歩下がった。


「こちらの方はデンオー帝国次期皇帝筆頭のヴィーゴ・ディ・デンオー様でらっしゃいます」


 そしてチリアーコは一緒に来た男性の事を、この場に集まった人々に紹介した。


「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」


 この言葉に、この場の全員が驚きの表情に変化した。

 帝国に対抗するために集まった会談の場に、その次期皇帝が現れるとは思いもよらなかったからである。


「……おっと! 待て待て、今回はこの会談の邪魔をしに来たのではない。ルディチの国王……マルコだったか? お前の顔を見に来ただけだ……」


 3国の護衛達が武器に手を当てて、ヴィーゴに飛びかかりそうな雰囲気を出した事に、態とらしく慌てたように制止の声をあげ、この場に現れた理由を楽しそうに発言した。


「……私に何か用でも?」


 名前を出されたマルコは、ヴィーゴを正面から見据えた。


「!!?」


 マルコと目を合わせ、少しの間見つめていたヴィーゴは、体からじわじわと魔力を出し始めた。

 それに対してマルコも魔力を放出し、もしもの時は対応出来るようにヴィーゴの挙動に注意を払った。


「「「「「「「!!?」」」」」」」


 ヴィーゴだけでなく、マルコも纏う魔力が限界が無いように少しずつ膨れていくのを、ルディチの護衛役のロメオとクリスティアーノ以外の人間は驚きの表情と共に恐怖の感情が沸き上がっていた。


『こんなのがいるうえに、ティノまでいやがるのか?』


 プリモの護衛も兼ねて付き添いで来ていたセコンドは、今更マルコの実力がとんでもない事を知り、内心かなりの焦りが生じていた。

 セコンドはいつかルディチとも戦う日が来ると思っていて、ルディチの最大注意人物をティノだと考えていた。

 今回も護衛にティノが来ると思って気を引き締めていたのだが、護衛にいないことに僅かだが気が楽になっていた所であった。

 それが蓋を開けたらルディチ国王自体が化け物だと知り、これまでルディチ王国に感じていた印象が一気に崩壊していた。


「……フッ、チリアーコの言った通りだな……」


 膨らんでいた魔力を一気に消し、確認が済んだヴィーゴは一言呟いた。


「マルコ! お前の事を気に入ったぞ!」


 そのすぐ後、ヴィーゴは嬉しそうにマルコを指差し、近寄って行った。


「!!?」


 しかしヴィーゴは近付く足を止め、バックステップしてまたチリアーコの側に立ち戻った。

 マルコの前に、ローブで顔を隠した乱入者がまた1人現れた。

 その男が纏う空気に、ヴィーゴは今まで感じたことなのない雰囲気を感じ、背中に冷や汗が流れてきた。


「……何者だ!?」


 何とか声を振り絞り、ヴィーゴは現れた男に声をかけた。


「ティノ様! お久し振りです!」


 マルコは現れた男、ティノの顔を見ることなくティノだと理解し、嬉しそうに挨拶をしてきた。


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