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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
140/260

第140話 反逆

 デンオー帝国とリンカン王国の戦争は、歴史的な戦争になった。

 ケトウ大陸に名を馳せる2大国家の内、片方の国家が大陸から名前が消える事になった。

 開戦は朝に始まった。


「マッシモ、最初からチリアーコに魔物を作り出させるのではないのか?」


 リンカン国王のシスモンドは、開戦直前にコレンナ公爵のマッシモに疑問を投げかけた。


「私もそうしようも思っていたのですが、オルチーニ公爵が自ら望んだことですので……」


 マッシモはしれっと嘘の答えを返した。

 オルチーニ家は腐ったが公爵家、マッシモからしたらさっさと消えてほしい存在である。

 その為今回の戦争で、オルチーニ家が名誉挽回を狙って先陣をきる事になったとして、ついでに消し去ってしまおうと考えたのである。

 せめて公爵家の意地を見せて、少しでも多くの敵兵を倒してくれれば御の字である。


「……そうか、奴も最近は失態続きだったからな」


 一人息子を亡くし、仇も討てず、自分を王位に就かせてくれたというお情けからシスモンドはオルチーニ家の降爵は許してあげたのだった。

 現在の処遇に満足がいっていないのは明白、しかし何もない状態で元の地位に戻ることは不可能、今回の戦争で功をたて、元の地位に戻ろうと先陣をきることにしたのだと、シスモンドはマッシモの言葉を素直に信じたのだった。


 開戦はどちらともなく魔法の打ち合いから始まった。

 そしてすぐに状況が一変する。


「何が起きている!?」


 最後方で陣を敷くシスモンドとマッシモは、急変した事態に慌てふためいた。

 そこは戦場からかなり離れているのにも関わらず、爆発音が近付いて来ていた。

 押し込まれるにしても圧倒的に速すぎる。


「報告致します!」


「話せ!」


 2人の前に、1人の兵士が慌てて報告に現れた。

 マッシモは状況の把握をするため、急いで許可を出した。


「オルチーニ様、それに追随するように数家の貴族が離反、更にこちらに対して攻撃を開始しました!」


「何だと……?」「馬鹿な!?」


 あまりの出来事にシスモンドは声を失ったように驚き、座っていた椅子から立ち上がった。

 マッシモも、さすがにエンニオが反逆するとは思っていなかったので、報告が信じられなかった。


「どう言うことだ!? マッシモ!!」


「……分かりません。ですが落ち着いて下さい。まずは兵に反逆者の殺害を命じ、戦場を安定させるのが先決です」


 まさかの公爵家の反逆、戦場の他の貴族や兵は自分達以上に錯乱しているはずである。

 オルチーニが寝返ったのであれば、どうせ消し去る予定だったのだから、理由が出来て好都合だ。


「反逆者の討伐! 討伐者には報酬を増額すると伝えておけ!」


 マッシモは報告兵に命令をして戦場に送り返した。


「チリアーコ!」


「……はい。ここに……」


 2人しかいなくなった陣で、マッシモはチリアーコを呼びつけた。

 チリアーコは何処からともなく現れ、マッシモの前に跪いた。


「……準備に入れ!」


「……よろしいのですか? 反逆者だけでなく味方にも被害が及ぶかも知れませんが?」


 実験により強力な魔物の製作は出来るが、細かい指示が効かないことはすでに伝えてある。

 現在の状況で魔物を作ったら反逆者のみならず味方まで被害が及ぶのは目に見えている。

 念のため、チリアーコはマッシモにその事を尋ねておいた。


「構わん! その代わりとびきり強力な魔物を作り出せ!」


「……畏まりました」


 確認をとったチリアーコは、その場から消えるようにいなくなっていった。


「マッシモ!! それで良いのか!?」


 マッシモがチリアーコに出した指示に、シスモンドは納得いかないような口調で問いかけた。


「反逆者が出るとは思ってもいませんでしたが、念のためチリアーコに特別な魔石を渡しておきました。あの魔石からならルディチの時以上の魔物が作れるはずです」


 チリアーコが人を魔物にするのにも、生物を魔物にするのにも魔石が重要な鍵になる。

 その為に、今まで集めた魔石の中でも特別大きな魔石を、マッシモはチリアーコに渡しておいた。

 本来はもう少し敵を減らしてから出したかったカードだが、今の現状では仕方がないとここで切ることにした。



◆◆◆◆◆


「我々はまだ何もしていないぞ?」


「全くです」


 開戦してそれ程経っていないのにも関わらず、明暗が別れていた。

 慌てるリンカン軍とは反対に、ヴィーゴが率いる帝国軍は大した被害を受けていない。


「ちょっと唆したらあっさり掌を返しましたね?」


「あの国は本当に馬鹿ばかりだな。オルチーニの奴も本当に帝国に寝返るとは思わなかったぞ」


 ヴィーゴは戦争に関係無く、随分前からオルチーニに接触を図っていた。

 オルランドがティノから手に入れた、オルチーニ家嫡男ベリザリオの首はヴィーゴが密かに手に入れていた。

 その首を手土産に接触し、何度か密会をしていたのである。

 首を奪った帝国の大将軍など会うことすら不可能だと思っていたら、首を返すのであればと簡単な条件で接触出来た。


「裏切り者が一番嫌いな父上が、裏切り者を優遇すると本当に思ったのか?」


「奴は馬鹿なので、そこまで考えていないのでは?」


「……まあいい、どうせ奴はリンカン軍が始末してくれるだろう?」


 ヴィーゴとダルマツィオが優雅に高みの見物をしていたら、新たに戦況は変化した。


「ヴィーゴ様! ダルマツィオ様!」


 2人の前にエピファーニオが現れた。


「戦場に巨大な魔物が出現しました!」


「動いたか……」


 その報告を聞いてヴィーゴは一言呟いたのだった。

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