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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第6章
134/260

第134話 帝国潜入

 現リンカン王国王都ナカヤ、その地の城内で現在国王とコレンナ公爵が話し合っていた。


「……それで? マッシモ、例の男の件はどうなった?」


 リンカン王国国王シスモンドは、コレンナ公爵のマッシモに対して質問を投げ掛けた。


「はい、その話ですが……」


「……失礼します」


 マッシモが説明をしようとしていた所に、チリアーコが突如現れた。


「チリアーコ! 王の御前だぞ! 気配を消さずに入ってこい!」


 王の間だというのに、神出鬼没のチリアーコにマッシモは怒りの声をあげた。


「失礼しました。以後注意致します」


 注意されたチリアーコは、余り恐縮した素振りもなく返事を返した。


「……まあいい、実験結果を説明しろ!」


 元々胡散臭い人間だということは理解して協力しているので、いちいちその態度を注意する手間を省いてチリアーコに説明を促した。


「畏まりました」


 言われたチリアーコは、軽く頭を下げて説明をし始めた。


「まず実験自体は、ある程度成功いたしました。予定通り魔物を変異させる事には成功しましたが、こちらの細かい指示を受ける事は致しませんでした」


 チリアーコは、ルディチ王国への襲撃の結果を報告した。


「……そうか、しかし襲撃方向を誘導する位は出来たのだろう?」


「はい。」


 マッシモはチリアーコの報告を聞いて、口の端をつり上げて微笑んだ。


「その結果があれば充分だ!」


 話を聞いていた王のシスモンドも、同じく笑顔になっていた。


「これで我々リンカン王国がこの大陸の支配に打って出れます!」


「あぁ、どいつもこいつも消し去ってやる!」


 2人は未来の野望を思い描き、嬉しそうに話し合っていた。


『……随分おめでたい連中ですね。まぁ、だからやり易いのですが……』


 2人の様子を見て、内心馬鹿にした思いをしていたが、自分にとって使い勝手の良い連中なのでそれを態度に出すような事はせず、黙って2人を眺めていたのだった。


『……それにしても、あの餓鬼が王になるとは……』


 盛り上がっている2人を置いておいて、チリアーコはマルコの事を考えていた。

 ティノとマルコへの復讐を考え、リンカン王国に接触して研究をしてきたのだが、その間にマルコが一国の王になるとは思いもしなかった。


『しかもあのドラーゴを相手にして、あっさり倒す程の実力をつけているとは……』


 今回の実験でマルコの国を潰せるとは思っていなかったが、まさか町に到達する前に沈められるとは思ってもいなかった。

 その為チリアーコはマルコの実力に、これまで以上の警戒をすることにした。



◆◆◆◆◆


『……まずいな』


 いつものようにあっさりリンカン王国の城内に潜入したティノだったが、チリアーコによるものなのか、あちこち結界のようなものが張り巡らせされていて、情報の収集が上手く行かないでいた。

 その為、ティノにしては珍しく軽い焦りが生まれていた。


『まあいい、どこを攻めるか分からないなら、攻める方向を指定してやればいい……』


 チリアーコによる魔物の実験だということは調べられていたが、その成果によってリンカンは他の国より手強い相手になったことは事実だ。

 いつまた、マルコの国に強力な魔物の群れを送り込むか分かったものではない。

 マルコの国を標的にする前に、他の国を標的にするよう誘導してしまおうとティノは考えた。


『だったら一番潰しあってほしいのは……』


 そう考えたティノは、潜入していた城内から転移することにした。


『帝国だな!』


 現在この大陸で最大の戦力と領土を所持している帝国に、リンカンとの争いを起こさせるため、火種を探しに帝国に向かった。



◆◆◆◆◆


 デンオー帝国は現在、時間をかけて手に入れたリューキ王国の支配に力を注いでいる。

 元リューキ王国内の町を支配し、奴隷を増やし、通行を短縮するためにこれまで帝国領土と分断していた山脈の一部を魔法で削らせる事に集中していた。

 その為、他国との戦争に進むのは、しばらく先の話といった感じである。


「帝国にしては珍しく大人しいと思ったら、こんなことしてやがったのか……」


 奴隷による人海戦術で山脈に穴を開けたと思ったら、今度はもっと安全な道路作りを始めているとは思わなかった。

 元々リューキを攻める為に開けた穴は、敵に潰されたらまた行き来出来なくなってしまう。

 とは言え、人の力で地形を変えようとするとは、相変わらず帝国の皇帝は傲慢な性格なのだろう。


「次から次へと攻め込んで行く戦馬鹿かと思っていたけど、ちっとは考えてんのか?」


 この大陸の争いは、そもそも帝国が出来たことにより広がって行ったに過ぎない。

 帝国が領土を拡大しようと隣国を次々奪って行った事で、リンカンも動き出して様々な戦争が起こっていったのである。


「そろそろ罪を償って貰おうか?」


 沢山の命を平然と奪い去る帝国の横暴は、ティノとって、目に余るようになっていた。

 リンカン王国との戦争に向かわせ、本格的に帝国を弱体化をさせる為、ティノは皇帝の周辺を探りに帝国王都のダイーの町に潜入を開始したのだった。

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