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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第5章
130/260

第130話 浮浪

「出ていくのか?」


 マルコが新国王になった事を見届けたティノが、町から去ろうとしていたところを、アドリアーノが待ち受けていた。

 誰にも告げず、マルコの側から離れようとしていたティノだったが、まさか気付かれているとは思わなかった。


「良く分かったな?」


 ティノは質問にイエスと取れる質問をし返した。


「マルコ様が気にしておられた。自分が王位に付くことになってから、お前がおかしいと……」


「なるほど……、マルコに気付かれてたか……?」


 アドリアーノに言われて、ティノは納得してしまった。

 マルコが新国王に即位して、アドリアーノは宰相的な立場になり、マルコを補佐する役目になっている。

 まだ若いマルコを支えて貰うには、ベストな選択だ。

 あの2貴族は、マルコが本当にルディチの人間だと証明されてからは、大人しくなっている。

 だがそのうち何かしらの待遇の改善、地位向上を狙ってくるかもしれない。

 それを察する事は今のマルコには出来ない。

 しかし、アドリアーノならその事をちゃんとしてくれるだろう。


「それだけお前との仲が親密だと言うことだ。羨ましいよ……」


 アドリアーノは少し苦笑ぎみに呟いた。


「国王になったマルコの側に、俺のような得体の知れない奴がいるのは良くないと思ってな……」


 ティノは自嘲気味に呟いた。


「まだマルコ様と接して時間は浅いが、あの方の人に接する時の優しさはお前が育てたからだろう? あのような方を育てた人間が、悪人のはずがない!」


「……そうかな? 自分の都合で簡単に人の命を奪うような奴は悪人だと思うぞ?」


 自分の都合で色々と引っ掻き回したし、沢山の命を奪ってきたのは消すことの出来ない事実だ。

 だからと言って気に病んでいる事は全くない。

 マルコは今12才、ティノが人と付き合うリミットの10年は過ぎている。

 物心ついた時期を考えると、丁度いい別れの時期だと考えたので、ティノはマルコの前から去ろうと決めたのだった。

 ティノは、未だに誰にも自分が不老の能力を持っていると言うことを教えていない。

 最近になっては、もしかしたら他人に知られた瞬間、この能力は消えてしまうのではないかと感じて来ている。

 そのせいか、自分をよく知るマルコの側にいると、マルコに知られてしまうのではないかと考えた。

 まだこの能力を無くす訳には行かない。

 この国が、マルコの手によって平和で豊かな場所になるまでは、まだまだ敵は沢山いる。


「……俺は悪人だが、赤子の頃から面倒を見てきたマルコには、幸せになって貰う事を願っているのは確かだ」


 自分を慕って、普通に考えたら無茶苦茶な訓練を課せられて、口答えせず付いてきたマルコの事を、今では誇りに思っている。


「だからこそ、俺はマルコの側から離れ、悪人らしく暗躍することにした!」


 だからこそマルコの脅威になる事を、排除する事に決めたのだ。


「マルコ様の為か?」


「……ああ」


「ならば止める訳にはいかないな……」


「……マルコにはよろしく言っといてくれ! それに、マルコの危機になったら助けに来るつもりだ」


 最近では以前のような険しい顔をしなくなり、マルコの為に懸命に動き回るアドリアーノに苦笑しつつ話しかけた。


「分かった! マルコ様の事は任せておけ!」


「あぁ、じゃあな!」


「…………ティノ!」


「ん?」


 別れの挨拶をして、アドリアーノに背を向けると、すぐに呼び止められた。

 そしてまた振り返ると、


「マルコ様を救って頂き、ここまで育てて頂いたこと感謝する!」


 呼び止めたアドリアーノは、ティノに対して深々と頭を下げた。

 亡くなったと思っていたマルコが、まさか成長して現れるとは夢にも思っていなかったアドリアーノは、何度も涙を流しながら喜んでいた。

 自分の思い描いていた未来がまだ繋がっていた事に、これまで何を目標に進むべきか苦しみながら生きてきたアドリアーノには、マルコの事は導きの光りのような存在である。

 救えなかったフランコとアイーダの代わりに、これからは自分が命をかけて守って行こうと決意がしている。


「俺が救わなかったら、あんたが救ってたさ……」


 以前アドリアーノから聞いた話だと、戦時中ティノがマルコを連れてその場を去ったすぐ後に、アドリアーノとヤコボがあの場にたどり着いたと言う話だった。

 あの時ティノが放って置けば、アドリアーノのもとでもしかしたら今以上に立派になっていたかも知れない。

 しかし、あの時ティノは、マルコの姿に息子のカルロを見たのかもしれない。

 亡くなったティノの妻、ラウラと約束したカルロを頼まれた事がよぎったのかもしれない。

 カルロの子孫のマルコを、そのままにしておく事が出来るはずがなかった。


「……でも、マルコとの日々はとても楽しかった」


 初めて自分を見て笑った事や、舌が回らない幼少期、大会で強くなった姿を見ることが出来た少年期、沢山の事が思い出され、ティノは珍しく胸が熱くなった。

 長い間生きてきたティノは、最近では驚きや感動など無くなりつつある中、マルコの事では沢山楽しませて貰った。


「……じゃあな!」


 アドリアーノに一言挨拶をして、ティノはまた浮浪の旅に向かっていったのだった。

マルコから離れるティノを書きたくて書いていたら、後から後から付け足しした為、もしかしたら変な文になっているかもしれません。

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