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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第5章
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第120話 決勝戦

 大会の決勝戦を迎えたマルコだったが、前日の夕方から姿を消したティノ事を考えていた。


「先生どこ行ったんだろ?」


「……そうだね」


 育ての親としてずっと側で見てきたので、前日のティノの様子から、マルコは何となく想像がついている。


『きっとブルーノさんを探してるんだろうな……』


 そもそも昨日宿に帰った時、決勝の為に早く休めと言ってたのも、自分が揉め事に巻き込まれない為だろう。

 そうなると、ティノがいないのはちょっと手間取っているだけなのだと、マルコは思っている。

 それだけマルコは、ティノの実力を信用しているのである。


「……まぁ、その内来るよ。じゃあ、行ってくる……」


「ん? あぁ……」


 なので、結構素っ気ない様子で、マルコは控え室に向かって行った。



◆◆◆◆◆


「…………じゃあ、そろそろ行きますか?」


 昨日連れてこられた牢屋の中で普通に睡眠を取ったティノは、寝癖のついた状態でブルーノに話しかけた。


「……あぁ」


 ブルーノは自分以上のだらけっぷりに、色々突っ込みたくなったが、そのティノの余裕ぶりにスルーする事にした。


「…………よっ! …………むんっ!」


「「「………………」」」


 ティノは立ち上がると、まず魔力封じの手錠を力ずくで壊し外し、恐らく触った感覚から魔力封じの牢屋の縦棒を、自分が通れるようにこれまた力ずくでこじ開けた。

 それを見ていた見張り役の2人とブルーノは、あまりに普通に、あまりにあっさりとティノがおこなったので、ただ黙って眺めていた。


「…………!!? きっ、貴様! 何をした!?」


「おいっ! 来てくれ! 1人牢屋から出やがった!」


 思考停止から回復した見張り役の1人が、慌てて懐から取り出した短刀を構えた。

 もう1人の見張りは、隣の部屋にいるであろう他の仲間達に声をかけていた。

 その言葉に反応した仲間達は、隣の部屋からドタバタしながらこの部屋に入ってきた。


「………………」


 総勢6人の敵がいたが、ティノは無言で一瞬の内に殴り倒した。


「むんっ! よっ!」


「…………」


 ティノはブルーノの牢屋の棒をこじ開け、手錠を取り壊した。

 やる事なす事まるで夢でも見ているようなティノの行動に、驚きよりも呆れに近い感情でブルーノは眺めていた。


「さっ、行きましょ!」


「……あぁ」


 その後も、この建物らしき場所から外に出る為廊下を動き回り、出てくる敵を虫を払うが如く叩き潰して行くティノに、ブルーノは黙って付いていった。



◆◆◆◆◆


【ご来場の皆様、これよりハンソー王国全国初等部対抗武道大会決勝戦を行います!】 


 超満員の会場の中司会の挨拶が始まり、会場はかなりの盛り上がりを見せていた。


【東口からは現在3連覇中の我らが王国が誇る絶対王者、チョーヒヤ校代表4年生、イラーリオ・ディ・ハンソー王子の入場です!】


 会場を熱気を煽るかのように紹介され、イラーリオが大歓声の中登場し、舞台の上に上がった。


【続きまして、西口からは1年生でありながら、素晴らしい実力で勝ち上がって来たまさに王子の再来、ジョセン校代表、マルコ選手の入場です!】


 マルコ入場に、小さい体で決勝まで勝ち上がって来たことを称え、会場は拍手をもって答えていた。


【……おっと! 流石王子、試合前に相手選手を称え、握手をしに行きました!】


 司会が言ったように、イラーリオはマルコに近寄り握手を求めた。


「……王子自らありがとうございます」


 その態度に、これまでの裏の事を王子は知らなかったのではないかと、マルコは内心思いそうになった。

 しかし、


「……お前の引率者は預かった。彼を救いたければ黙ってやられろ!」


 握手をした別れ際に、大歓声があるとはいえ、舞台袖の審判に聞こえないような大きさの声でイラーリオは、マルコに向かって囁いたのだった。


「………………」


 それを聞いたマルコは、ただ黙ってうつむいてしまった。


 開始線に戻り、イラーリオは若干の笑顔で武器の木剣を構えた。



◆◆◆◆◆


「ここ失礼するわよ」


「ん? あぁ、あんたか……」


 会場が静まって行くなか、会場の一角に座っていたロメオの隣の席に、パメラが座って来た。


「一応私は年上よ! 口のきき方の悪い子ね!」


「ヘイヘイ、俺はマルコと違うんでね!」


「ぐっ!?」


 ロメオの口調に注意するパメラだったが、ロメオの返した言葉に続きを出すことが出来なかった。


「全く……、それより、あんたの学校の先生は?」


「……さぁ? 昨日から帰ってない。……まっ、会場のどっかにいるんじゃないか?」


 ずっとティノと一緒にいるマルコが気にしていなかったので、ロメオも今はティノがいない事を気にしないでいた。


「そう……」


『……まさか、あの人もブルーノの様に……』


 ロメオとは違い、ブルーノを任せろと言っていたティノがいない事に、パメラは内心不安が募っていた。



◆◆◆◆◆


「おぉっ! 間に合いましたね……」


 丁度その時、ティノとブルーノは客席の端の立ち見場所にたどり着いた。


「あぁ! それよりお嬢の所に……」


「パメラ嬢はあそこです。しかし悪いのですが、試合が終わるまでここにいて貰えますか? 隣のロメオの位置はマルコも知っているでしょうし……」


「え? まぁ、助けて貰ったんだし、構わねえよ……」


 ティノの姿を確認したら、マルコは本気で怒らないかも知れないので、この位置から隠れるように観戦することをティノはブルーノに頼み、ブルーノも理由は昨日聞いていたので、ティノの頼みを受け入れた。



◆◆◆◆◆


【……決勝戦、始め!!】


 そんな中、マルコの決勝戦の幕が切って落とされたのだった。

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