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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第5章
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第118話 無反応

「えっ!? 拐われたのですか?」


 マルコは準決勝をあっさり終わらせ、気になっていたパメラに起こった事を話していた。

 敢えて言うと、マルコの相手はガチガチの近接戦闘タイプで試合開始と同時にマルコと打ち合い、ある程度マルコが時間をかけた後、ちょっとイラついていたのもあって腹に強めのパンチが入り、気を失わせて勝利を収めた。


「まぁ、俺の予測だがな……」


 ティノはブルーノが拐われて人質になり、それを知ったパメラが、まともに戦う事が出来なくなり、やられたのだろうとマルコに話した。


「……あの王子は知っているのですか?」


「分からん。恐らくだが知っている可能性はある」


 宰相が動いている事は確実に分かっているが、流石のティノでも王子の介入までは確証がなかった。

 しかし、パメラとの戦いを見た感じとしては、イラーリオが知っているのではないかと思っている。


「そんな……」


 マルコは人の上に立つべき人間が、その権力を利用して悪事を働いている事に、怒りを通り越して悲しい気持ちになっていた。


「……まぁ、お前はあまり気にするな。ブルーノさんは俺が今夜にでも探し出して連れて帰るから……」


 そう言ってティノは、マルコの頭を撫でて控え室から出て行こうとした。


「…………あっ!?」


「!!? どうしました?」


 控え室から出て行く一歩手前で、ティノはあることを思い出したように声を出した。


「マルコ、まだいるだろうから、医務室に行ってパメラ嬢を回復してこい!」


 ティノの反応を疑問に思ったマルコが問いかけると、ティノはこのように言った。


「……何故僕なのですか? ティノ様が行った方が早いのでは?」


「…………いいから行け!」


 どうやらまだマルコには色恋沙汰は関係無いようで、正論で返してくる言葉に言い返しづらくなったティノは、若干強めに言って無理矢理マルコに行かせることになった。



◆◆◆◆◆


「……失礼します」


 ノックをした後医務室に入ると、体のあちこちにガーゼや包帯を巻いたパメラが、ベッドの上に座っていた。

 治療は一通り終わったのか、医者や看護師はいなかった。


「ハハ……、負けちゃったよ……」


 入ってきたマルコの顔を見て、パメラは自嘲気味の言葉を呟いた。


「……そうだね」


 マルコは下手に励ます事はせず、一言だけ返事を返した。


「……今私の町は少しずつ治安が悪化していっている。王族貴族に見捨てられた市民は、町から出て行くにもハンソー軍の厳しい審査が必要……」


 2人の間に少しの間が空いた後、パメラは話始めた。


「仕入れに他の町にも行けず、様々な店は成り立たなく開店休業状態……、町の全ての人が沈んでいる状態だ。」


「…………」


 パメラの話すことを、マルコは黙って聞き続けた。


「町の人達に少しでも明るい話題を与えたいとこの大会に参加したのに……」


 最後の方になると、パメラは耐えきれなくなったように涙を流し始めた。


「…………」


「!?」


 泣き出したパメラを前に、マルコは黙って手を握った。

 それに驚いているパメラに回復魔法をかけ始めた。


「……回復魔法!?」


 高度の回復魔法師は王族しか相手にしないので、パメラの手当ては多少の傷以外は自然治癒に任せた感じの手当てだった。

 パメラは、自分より年下のマルコが回復魔法をかけてきた事に驚いたが、すぐにそれよりも握られた手に目が行き、顔を赤くしていた。


「……はい。これで骨も怪我も大丈夫だよ」


「……ありがとう」


 満面の笑みで治療を終えたマルコに、パメラは少しうつむいたままお礼を言った。


“コンッ!”“コンッ!”


 丁度その時、ティノがノックをした後室内に入ってきた。


「いい感じの所邪魔して悪いが、そろそろ宿に帰ろう」


「なっ!!?」


 ティノの少しからかったようなセリフに、パメラだけが慌てた様子になった。


「はい」


 パメラとは反対に、マルコは全く変わらずティノの指示に従った。


「……お嬢さんも送っていこう」


「……ありがとうございます」


 マルコの反応に少し落ち込んだパメラを気遣って、ティノは優しく話しかけた。

 そしてティノ達は、1人で観戦していたロメオと合流して宿屋に向かって帰っていった。



◆◆◆◆◆


 先にマルコ達を送った後、ティノはパメラを宿屋に送って行った。


「ブルーノさんの事だけど、俺に任せてくれないか?」


「!!? ブルーノが今どういう状況か分かっているのですか?」


 ティノがブルーノの事を話し出すと、パメラはブルーノが捕まっていることを理解しているのか聞いてきた。


「君の試合を見ていて理解した。」


「……そうですか」


 パメラは、確かにあの戦いを見ていた人は違和感を覚えても仕方がないと考えた。


「君は自分で救いに行きたいだろうけど、ハッキリ言って実力不足だ!」


「!!? ……そうですね」


 ティノの発言に反発しようとしたが、ブルーノに劣る自分では当然だとうつむいた。


「俺ならそれほど難しい事ではない。安心して今日は休みなさい」


「……ブルーノが言ってました。自分では敵わない程あなたとは実力差があると……、だから信じます。ブルーノの事、お願いします!」


「……了解した」


 パメラが宿屋に入って行くのを確認したティノは、夕方になると昨日ブルーノと別れた空き地に向かって行った。

 空き地には、昨日ブルーノが振り回していた大剣が地面にそのまま刺さったまま残っていた。


「…………」


 ティノは、それを魔法の指輪に収納した。


「……動くな!」


 その瞬間、ティノの前に昨日ブルーノを拐ったであろう集団が、ブルーノの時と同じ様にティノを囲むように現れた。

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