第11話 スタンピート
2拍3日の実家での生活を終え、ティノとカルロはダイトウ村を発つことにした。
「父ちゃん、これからどこに向かうの?」
借りていた実家を掃除し終わり、村長に挨拶に向かおうとしていた頃、カルロがティノに尋ねた。
「そうだなぁ……、カルロが初等部に通う時のために王都に向かおうか?」
「王都? 行ってみたい!」
「それじゃあ、行こうか?」
「うん!」
そうして2人は村長に挨拶をしに行った。
「お世話になりました。また来年伺います」
「おぉ、そうかい? お主等はこの村の守り人の子孫じゃ、来たときは何も出来んが歓迎するぞい」
「ありがとうございます。それではお元気で」
「お主達もな」
別れの挨拶をし終えた後、2人は村の入口に向かって歩いて行った。
「父ちゃん、王都ってどんなところ?」
歩いているとカルロは、王都への好奇心でいっぱいの質問をしてきた。
「たくさんの人や物でいっぱいだぞ!」
「へ~、楽しみ!」
ニコニコと笑顔のカルロと手を繋ぎ、楽しそうに歩いて行った。
“ピクッ!”
「どうしたの? 父ちゃん……」
突然、ティノは村の方から嫌な予感がして歩みを止めて振り返った。
「…………」
「父ちゃん?」
ティノは、無言で村の方向を見続けた。
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それは長閑なトウダイ村に突然起こった。
“ドーーーン!!!”
「!!!?」
木が倒れ、その周辺から色々な魔物が現れ出した。
「魔物だーーー!!! 魔物が現れたぞーーー!!!」
魔物達が突如現れた事は、すぐ村中に知れ渡った。
若く体力のある40人位の男達が集められ、魔物の討伐に向かった。
村長を初めとする老人と若い女性、そして子供達は1ヶ所に集まり避難をしていた。
「村長!」
「!? お主達は出て行ったのではないのか?」
村人が集まる避難場所にティノとカルロが現れた。
「嫌な予感がして戻って来たのです! 何があったのですか?」
「魔物の大発生じゃ! 若者達が今退治に向かっとる!」
魔物の大発生、スタンピードとも呼ばれ、予兆などが無く突如として起こる魔物の氾濫である。
「カルロ! お前は皆と避難していろ!」
「父ちゃん!!」
若く体力があるとは言え、戦闘の初心者では危険だと思い、ティノは援護に向かうことにした。
「村長! 息子を頼みます」
「分かった! 任せておけ!」
「父ちゃん! 俺も連れてって!」
カルロは、自分もティノの役に立ちたいと同行を求める。
「カルロ! もしもの時にはお前がここの人達を守るんだ! 良いな!?」
「……分かったよ。父ちゃん」
ティノに言われ、やや不満げながらカルロは納得した。
「父ちゃん! 帰ってきてくれよ!」
「ああ、帰ってくるさ。カルロの為にも、ラウラの為にも……」
カルロに向かって小さく呟き、ティノは踵を返して動き出した。