第102話 本命
「久々だなマルコ」
マルコに背を向けつつ、ティノは話しかけた。
「何故!? ……ここに!?」
突如現れたティノに、マルコは嬉しそうに問いかけた。
「ちょっと色々あってな……、ほれ! 回復薬でも飲め!」
ティノはマルコの質問に軽く返し、ボロボロの状態のマルコに回復薬を投げ渡した。
“スッ!”
〔……どうも! 旦那!〕
次にティノは、少し離れた場所に横たわっていたパルトネルを、マルコの隣に闇魔法で転移させた。
ティノの側に来たパルトネルは、緊張したような口調でティノに挨拶をした。
子供の頃に受けた印象が強かったのか、パルトネルは未だにティノに従順である。
「よお、パルトネル! お前も飲め!」
そう言ってティノは、回復薬の液体が入ったビンのフタを開けて、パルトネルの口に向かって放り投げた。
〔どうもです!〕
パルトネルはティノに礼を言い、飛んできたビンを口で受け取り器用に飲んだ。
「さてと……」
一言呟き、ティノはマルコ達に回復薬を渡している間に立ち上がっていた化け物に、ゆっくり歩いて近付いた。
「ガアァーー!!」
吹き飛ばされ倒された化け物は、腹を立てたらしく怒りの声を上げてティノを睨み付けた。
「…………うるさい!」
化け物が放つ強力な殺気を受けても、ティノは平然と呟き近付いて行った。
“バッ!!”
地面を蹴り、その体からは想像できないほどの高速でティノの目の前に現れた化け物は、ティノの事を殴りかかった。
「よっと!」
禍々しいオーラを纏った拳を余裕で躱し、その勢いを利用してティノは化け物を投げ飛ばした。
“ドスーンッ!”
大きな音を立てて、化け物の巨体が地面に叩きつけられた。
「……グガッ!!?」
まともに背中を打ち付け、化け物は声が出た。
「……そろそろ出てきたらどうだ!?」
「!?」
ティノは会場の客席の一角に向かって声をかけた。
会場にいた人は全て外に避難したので、そこには人など存在していない。
その事に回復薬を飲んで、体力が少し回復したマルコは首を傾げた。
「隠れてないで出てこいよ!」
反応は無かったが、ティノはそのまま話しかけた。
「……フッフッフッ! よく分かりましたね?」
「!!?」
ティノが見つめる先から1人の男が現れ、その男は顔を隠すように、黒いローブを被っていた。
マルコは全然気付かなかった為、男が現れた事に驚いた。
“ズズッ!”
客席から、起き上る途中の化け物の側に闇魔法で移動した男は、化け物を制御しているのか、立ち上がった化け物はティノに襲いかからず、ただ突っ立っていた。
どうやら男はティノに話があるようで、化け物を抑えているらしい。
「かなりの時間をかけてようやく息子を見つけ、憂さ晴らしに殺そうとしたら本命が現れてくれましたか?」
「……?」
男が言っている意味が分からず、ティノは首を傾げた。
「お久しぶりですね……」
どうやらティノと会った事があるような口調で、男はローブを取って顔を見せた。
「…………え!? 誰……?」
感想でも頂きましたが、毎回ステータスを載せていたのですが、自分でもあまり意味が無かったので、特別な時以外載せるのを止めようと思います。
その方が見やすいかと思ったので……