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新社会人 3

 アロサウルスに喰われ掛けてから3年がたち俺も18才になりました。

"そっち行ったぞ"

この大切な十代の日々を1日 1日大切にしたいと思っています。

"オラァ虎二郎、野生化した牛だ高級食材様だぞ!何が何でも捕まえろ〜!"

・・・

"風間さんラプトルの群が牛さんを狙ってます!"

・・・

"虎二郎〜命を懸けて牛さんを護れ〜!"

・・・"ウルサ〜イ!" "トウ"


突っ込んで来た牛さんを払い腰で倒し優しく抑え込みつつ寄って来たラプトルを牽制する、相も変わらぬハンター生活です。

十代の切ない気持ちとか全く無縁な狩暮らし真っ最中・・・ウゥゥ・・・


「虎二郎君最近大分煮詰まってる感じですね。」

うん?遠山さん、

「すいません心配掛けて。」

「嫌々気にしないで下さい。これも年長者の努めです。」

「最近仕事々々で全然友達と遊べないって云うか、」

「まぁ社会人に成れば学生時代の友人とは疎遠になりやすいのは確かですね。」

「やっぱりそうですよね。」

"ハァ〜"


「風間さん虎二郎君の事なのですが・・・」

「全くしょうもない事で悩みおって!そんな理由でボーっとしてやがったのかあの馬鹿は!」

「まぁまぁ若い時にはまま在る事です。

其処でご相談なのですが確かあの依頼はこの時期だったかと・・・」


俺の事で親父と遠山さんが話してる何て露知らず俺はスナック純子でママに愚痴をこぼしてた。

「も〜信じられないっすよ!回りの子達は青春をキャッキャッウフフっしてるのに、俺なんて仕事ばっかりそれも毎日々々血で血を洗っちゃう的な〜ママ〜聞いてます〜?」

「聞いてるわよ〜!まぁ確かに昼間っからスナックで飲んだくれている十代は少ないわね〜。」

「でしょ〜も〜ママ慰めて〜」

「もう本当に虎男さんにダメな所が似て来たわね?」

「・・・馬鹿親父?やっだ〜あ〜り〜え〜な〜い〜!」

そんな馬鹿っ話をしていると店のドアが開き遠山さんが入ってきた。


"ガチャ カランカラン"

「おっ!居た!虎二郎君探しましたよ!」

「? 遠山さんろうしたろ?」

「大分出来上がってますね、コレは。」

「全然ロンでませんよ。さっ叔父さんもロンでロンれ。」

「虎二郎君に仕事です。」

「え〜ヤダ〜今日はもうお休みれす。」

も〜何を言い出すかと思ったらプンプン!

「今日じゃ在りませんがね、今度ハンター高校の実習に参加する事になったんです。」

「実習〜?」

「そうです。ハンター試験の前に外に出て狩の練習をするのです。その時の護衛任務が今回の仕事です。」

「・・・」

「うん?虎二郎君・・・」

「・・・スピースピー」

「此は起きてからもう一度説明した方が良さそうですね。」

俺は遠山さんとママさんの苦笑いの中、意識を手放していた。




今日とうとう私達は外の世界に足を踏み出す。

映像では勿論見た事はあるが実際にこの目で見るのは初めてだ!

私の様な子はうちの学校でも結構多い。嫌、大多数がそうだ。

大人でもこの街を一歩も出ずに死んで行く人が珍しくない世界。

だからこそ私は安定した生産係クラスから戦闘系クラスに移ったんだ!

そうしてハンター高校に進学してやっとの事でここまで来た。

私はもうすぐ外に出られる。



早朝街のゲートの前本来で在ればまだまだ人の疎らな時間にも関わらず大勢の人間が集まって居た。


"皆さんおはようございます。

皆さんが待ちに待った野外実習の日がやって来ました。

今日は各自班に分かれて実際の狩とはどう云った物かを学んで貰います。

今日の野外実習の後はハンター試験がやって来ます。

皆さんの中には試験に受かる事がゴールと勘違いされて居る方々が見受けられます。

其処で今回の実習には皆さんと同年代のハンターにも参加して貰います。

皆さんの中にはかつてクラスメイトだった人も居ると思います。

よく話を聞き此からの参考にして下さい。"


"では野外実習出発!"


大きく重厚な門が開き私達は外に向かって歩き始めた。

眩しい朝日が目に染みながら私達は瞬きする事が出来なかった。

"美しい"

誰かの呟き、呟いたのは私かも知れない、しかしここに居る皆の想いを代弁する言葉、

"美しい"

果てなき大草原、遥北には万年雪を抱く山々、西に目を向ければ何処までも続く深き森、私は知らないうちに涙を流していた。


"さぁ涙を拭きな。そして今の気持ちは大事に取って置くと云い。"

そう言って年配のハンターは優しく私の涙を拭いてくれた。

"さぁさぁ学生さん先ずは各自の班に別れて出発の準備をしな!ボーっとしてたらアット云う間に時間が過ぎちまうぞ!"


先程のハンターさんが皆に発破を掛けて歩いてる。そうだ!此処で良い点数を取らないと私の場合は試験にさえ望めない、情けない話、戦闘系のクラスでは私は下から数えた方が良い成績だ。


私達の班は通常6人で構成されて居るが今回は3組18人で1つの班に分かれているその班を指導するのは一人の教官とベテランのハンターが二人と聞いて居る。

私達は集合を終え指導教官を待っていた。


"全員気を付け 上田、石原、三沢、各3班全員集合完了してます。"

「ご苦労。今日は皆素早く集合してくれて大変結構、何時もこのように規律正しく行動してくれると助かります。」

「先生のご指導のお陰です。」

指導教官の林田先生正直生徒からの人気は無い、何かにつけて規律々々と喧しい、正直言えば私も嫌いだ、それでも私は媚びなければならない。

「結構、皆が上田さんの様に道理を弁えていてくれればどれ程楽か分かりませんね。さて今日は皆さんの補佐に現役のハンターを二人呼んで居ます。迷惑を掛けない事を期待してます。ではお二方此方へ。」


一人の方は先程涙を拭いてくれた年配のハンターだ。そしてもう一人は!


「ご紹介します。皆さんの手伝いをしてくれる風間虎男さんとご子息の虎二郎さんです。お二人とも今日は宜しくお願いしますよ。」


「へい!こちらこそ宜しくお願いしやす。」

「うむ。」


"では出発!"


風間虎二郎!

まさかこんな所で会うなんて、彼との出逢いは私が14才の時生産係クラスから戦闘系クラスに編入した日からだ。

家がハンター業種の子は余程他の特性が優れてなければ何の苦労もせずハンターに成れる。

私の様な人間には本当に羨ましい存在だった。

その上遺伝子検査の結果も才能有り、国費で遺伝子組み換えもして貰ってる。

私がマトモに使えない様な重火器も楽々使える体!それでも才能の違いと諦めていた。

しかし私が許せないのはそれほど恵まれていながら彼はやる気が全く無かった!

たまに口を開けば働きたくない!冗談じゃ無い!だったら代わってよ!何時しか私の中で風間虎二郎は羨ましいクラスメイトから憎むべきクラスメイトに変わっていた。



「いよ〜虎二郎〜元気だったか?しばらく見ない間にまたでかく成りやがって!」

俺が担当する班には結構な知った顔がいた。

「祐太郎久しぶり!デカいは余計な!」

「ハッハッハッ!デカいしちゃんと喋れる様に成ってるじゃないか!」

「当たり前だ。コチトラ社会人三年目だぞ! 」

後は、「上田さんも久しぶり!」

「ええっおひさしぶり風間さん。」

「虎二郎で良いよ?」

「おい!虎二郎コッチに来いよ他の奴らも紹介するから!」

「あぁじゃまた桜子さん。」


う〜んやっぱり3年振りだとあんな感じになっちゃうのかしら?

「虎二郎気にするなよ、桜子の奴は戦闘系のクラスでは結構落ちこぼれちゃってるんだよ、ペーパーの試験は良いんだが如何せん実技の方が厳しくてな、今日の実習如何に寄っては落第も在るんだよ。」

何ともまぁあの桜子さんがそんな事になってたとは言ってくれたら良いのに。

「詰まり獲物が居たら桜子さんに殺らせれば良いわけか。」

「う〜んどうだろうな、今の彼女はお前が何をしても、悪い方にしか感じないんじゃないかな。」

なんじゃそりゃあ幾ら何でもそれは無いだろ。

「まぁ気にしないで頬って置いてやるのが良いと思うぞ。」


生徒達は徒歩で休憩を入れながら三時間程歩いた所にベースキャンプを設置した。

「なぁ祐太郎さん。」

「何ですか虎二郎さん。」

「たかが街から三時間なら日帰りで良くね。」

「もうお馬鹿さん何だから!此れは一応サバイバル訓練も兼ねてるの?」

「ふ〜ん。」

「俺なら絶対草原でお泊まり何てしたくないでゴザル。」

「出た!ゴザル。」


ベースキャンプについて直ぐに林田教官が全員に問いかけた。

「さぁ皆さん今日の狩り場につきました。この辺りに出没しやすい恐竜について誰が答えられますか?」


"はいっ!"

"上田さん、"

「この地域に多い肉食竜はラプトル類です。草食竜はケラトプス類どちらも体長5メートルクラスの小型の竜が主流です。」

「ふんっ、宜しい。実技もそれくらい出来れば良いのですがね!」

"くっ!"


「皆さんも良く聞きなさい!特に肉食ラプトルは二足歩行で、すばしっこい物が多い、今回の狩りではハンターの同士討ちを避ける為にも為るべく接近戦闘で処理する様に、良いですね。」

""はいっ!""


クソッ最悪だ遠距離が得意と云うわけでは無いが接近戦闘のみと縛りを掛けられたのは痛い。私の様な非力な者は使える物は何でも使っていかないとダメなのに。


「さぁ〜では各自班に分かれてベースキャンプから出て獲物を狩って来なさい。付き添いは石原班は私が、上田班は風間虎男さんが三沢班はご子息の虎二郎さんお願いします。」

「分かりました。」

「ウム。」


うゎ〜出来れば祐太郎の所が良かったな〜三沢班は皆さん身長が180㎝を越えて中でも三沢さんは190㎝を確実に越えている、・・・何か怖いんですけど・・・

「初めまして、三沢です。大きいですね。何㎝位在るんですか?」

「この前の健康診断では2メートル50でした。」

「はぁやっぱりそれぐらい無いとハンターってキツイですか?」

「嫌、そんな事は無いですよ。ムカつきますが、うちの親父は身長180無いですか俺より強い。」

「へぇ〜そうなんですか?」

「えぇムカつく事に。」

""ぷっアッハッハッ""


ありゃ皆に笑われちゃった。

「すいません。正直虎二郎さんっておっかない方かなって思ってたもんですから。」

「そうですか、やっぱり背が一寸だけ大きいからですかね?」

「嫌、本当にすいません。でも身長がそれほど関係ないって話は、気休めでも嬉しいな。」

気休めじゃ無いんだけどな。

「う〜ん何て説明したら云いかな?

今の次代、武器の性能が格段に上がってるのでよっぽどの零細企業や金勘定が出来ない個人事業主じゃ無い限りソコソコの武器は所持出来ます。

そうなって来ると狩る獲物にも因るけど相手から見つからないって事が凄く大切になったりします。」

「はぁ〜成る程。確かにそうですね。しかし虎二郎さんの武器って凄くゴツいバトルアックスですよね。」

「それはうちの家が零細企業で金勘定も録に出来ない個人事業主だからです。泣きそうです。」

「アワワワそんな涙目にならないで下さい。僕ら元々生産係ですから経理関係の相談も出来る友達いますし紹介しますからねっ!」

「グスッありがとうございます。それとデカいと向こうからコッチを見つけてくれたりするんですよね。」・・・来ますよ!支度して下さい。


草原の50メートルばかり先から5頭のラプトルが掛けて来た。此方は俺を入れても7人、襲って良いもんだとか警戒してるな?

「皆さん向は此方の数にビビってます。正直言ってこうなると時間が掛かってしまいます。其処で本来は決してやってはいけない方法を使います。」

「虎二郎さんその方法とは?」

「ラプトルに背中を見せます。」

""えっ!""

「しかしそれは・・・」

「はい。本来なら絶対やっちゃダメダメです。しかし今回は時間も無いので遣っちゃいます。皆さん僕の後ろにくっついてラプトルから見え難く隠れる様にしていて下さい。では。」

そう言うと虎二郎は一人ラプトルに背中を見せた。そうした所、先程から警戒して近づいて来なかったラプトルが一斉に走って来た。

「ラプトルって何でか知んないけど他のハンターが隠れると居なくなったと思うらしいんです。それと背中見せてる獲物が大好きなもんだから、こうなると・・・」

"虎二郎君背中〜!"

"じゃあ殺りますか!皆俺の背中から飛び出して大きな声で叫んで!"

僕らは言われるがまま虎二郎君の背中から飛び出して叫んだ!

"ウォォォォ〜"

すると驚いたラプトル達は揃ってスッ転んだ!


"はいっ!今ですよ!慌てすに長めの武器で刺しましょう。ラプトルは直ぐには立てません。安心して処理しましょう。"

それを聞いた僕達はビームソードの長さをスピアモードにまで伸ばしてラプトルを刺し殺した。


"ご苦労様です、皆さんバッチリでしたよ。最初、獲物を殺るときって結構躊躇ったりするんですけど皆さんサスガですね。"

嫌々待ってこんな簡単なの?・・・違うか!僕達だけならこんな風にあっさり片ずくはずが無い、コレがプロのハンターの仕切りか!・・・

"あっ!失礼ノルマは確か後2頭ですよね"

「へっ?あぁそうですね。このサイズなら後2頭狩ればノルマは終了ですね。」

"では此処で討伐部位の切断をゆっくり遣りましょう。"

""ハァ〜""

「嫌々、虎二郎さんこんな所でゆっくりしてたら他の肉食竜が集まって来ちゃいますよ。」

「えぇそうですね。ですので後2頭狩ったら急いで離脱しましょう。」

「しかし万が一大型竜でも現れたら・・・」

「此だけなだらかな平原ならまず此方が先に見つけられますよ。その時はこのラプトル達を餌にして逃げましょう。ただしゆっくりと慌てずに。」

それから程なくしてやって来たラプトルを殺し、僕らの班の初めての狩は終了した。

多分この人は幾つもの場数を踏んで今の様な狩猟方法を身に着けたんだ。此を僕らだけで出来ると思ったら大間違いだ。この事は皆にしっかり話さなきゃ。

「ちなみに虎二郎さんの失敗談って有りますか?」

「そうですね。油断してアロサウルスに丸飲みされ掛かった事ですかね。」

絶対に真似しちゃ駄目だ!


側で聞いていた三沢君以下全員が心に深く誓ったのは云うまでもない。









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