新天地3
朝飯を食い休憩をして居ると、兵隊さんからトランシーバーを渡された。
「君達のグループにはまだ渡してなかったがここでは各班に1つこいつを渡して在る。定期的に連絡を入れてくれ。」
サスガ兄ちゃん優しい所在るな!
何て思って居ると、
「あぁ間違っても危ないから助けて貰おうとか思わないでくれ。此れは貴重な動植物を保護した際に使う為の連絡用の無線機だ。」
要らん釘を刺されてしまった。
俺達は幾つかの各グループに纏められ大型バスに乗せられ森に運ばれた。
「皆さん夕方にはこのバスは砦に戻ります。遅れずに戻って下さい。」
バスの運転手さんの言葉に皆が頷く。
"さぁ出発だ!"
仕切り屋の祐太郎の一声で皆が動き出す。俺としてはこのままバスの中でじっとしてようと言って欲しかったのだが。
「虎二郎さん頑張りましょうね。」
珍しく橋本さんの娘さんが話し掛けて来た。
"う〜ん?"
「どうしたんですか?もしかして調子悪いんですか?」
「嫌、橋本さんの娘さんの名前なんだったか?」
「コラッ!本人を前にして言う言葉ですか、愛!橋本愛です。」
「此れはご丁寧に、風間虎二郎です。」
「知ってます。もうちゃんとして下さい。」
「すいません。」
何故か怒られてしまった。
各グループに別れた俺達は森の中に入って行った。
「なぁ祐太郎。」
「どうした虎二郎。」
「俺さ、1つ別らない事が在るんだが?」
「言ってみ。」
「保護動植物って何?」
「はぁ〜地球からこの星に跳ばされた際に人間に巻き込まれた生き物だ例えば家畜なら牛や豚鶏、ペットの犬や猫なんかがそうだ。そういった動物は成るだけ保護するって決まりだ!学校で習ったろ。」
「でも牛さんの肉って売ってるじゃん、すんごい高いけど。」
「あれは養殖したり培養した物だ。天然物じゃ無い。」
「つまりクローンって事?」
「そうだ、後はこの星の環境でどう変化したかの調査だな。」
「例えば?」
「良く知らんが軽トラ位大型化した豚とか発見されてる。」
「それは食いで在るな。」
「発見した時ハンターに襲い掛かりハンターを食い殺したらしい。」
「俺さ豚よりは牛派だから豚は祐太郎に任せる。」
「俺は鶏派だ。」
祐太郎が鶏好きと言うどうでもいい話をしながら俺達は森の中を進んで居ると、何かの鳴き声が聞こえた。
"シッ皆静かに!"
"ミャーミャー"
「私この声知ってます。」
そう言った愛ちゃんが偉く興奮して説明しだした。
「昔の地球って映画で見ました。これは猫っていうペットです。凄く可愛いんですよ。」
ほうほう話では聞いた事あったがこれが猫の鳴き声か、俺がそんな事を思って居ると、武藤さんが言い出した。
「この猫ちゃん保護してバスに戻ったら良いんじゃない。」
おぉ素晴らしい天才だ。伊達にムチプリなお色気をしているわけじゃ無い。俺は心から感心していると、
「それじゃ取り合えず保護するか、俺と虎二郎でやるから皆は周りを警戒してくれ。」
などと勝手に祐太郎が指示を出した。
そこは俺がやるから虎二郎さんは休憩してて下さいだろっ!
そうは云っても正しい指示には違いなく俺は渋々前に出た。
"ミャーミャー"
"猫ちゃん出ておいで、恐くないからね"
"ミャーミャー"
"この鳴き声はまだ子供かな"
祐太郎のこの一言を聞いた瞬間に気がつくべきだった、子供の側には親が居るって事を。
"グルルルル ガァ〜"
俺達の前に現れた猫ちゃんは体高2メートル鋭い牙をむき出しにした猫ちゃんだった。
「祐太郎さん、」
「何です虎二郎さん、」
「この猫ちゃんあんま可愛く無いんですけど。」
「同感だ。因みにこれは猫じゃなくサーベルタイガーって生き物だ。」
「そっか、猫じゃ無いのか、じゃあ殺っちゃってOKな奴?」
「正直微妙だ、学校で習ったサーベルタイガーはこんな縞模様は無かった、これはまるでトラとサーベルタイガーの雑種だ。」
「難しい事は措いといて殺すとダメな奴か?」
「だから微妙だって言ってんだろうが!」
「微妙じゃ分かんね〜て言ってんだ俺は!」
俺はついつい二人のトークに霧中に成りサーベルトラさんの事を忘れて居た。
"ガルルル〜ガァ〜"
無視された事に怒ったのかそれとも隙在りとでも思ったのか、サーベルトラさんは俺に襲い掛かって来た。
俺は突っ込んで来たトラさんの頭をバトルアックスの横っ腹で思いっきりぶった叩いた。
まぁ言っても相手は大っきな猫さん、ぶっちゃけ殺るだけなら、然程手間を掛けなくても殺れるのだが、如何せん捕獲となると難しい、死なない程度にぶん殴るってどう殺るのよ死ぬかどうか何て相手次第だし!そんな事を考えてると、
虎二郎逃げようと、祐太郎が言って来た。
"何で?"
俺がそう思った瞬間にそいつはトラさんに襲い掛かって居た。
あぁこいつは分かるなんぼ俺が学校で居眠りしてたとしてもまだ1度も殺り合った事がなくてもこれだけ特徴のある奴はいない。
スピノザウルス全長18メートルにもなる最悪の肉食竜。
全くこれからは祐太郎の言う事も真剣に聞こう。
俺はそう思いながらも相手を観察した。
こいつは予想より大部小さい体長はせいぜい10メートル程度、恐らくまだ若い個体だ、よっぽど腹を空かせてたのか狩った獲物を喰らうのに夢中でこちらに対して意識が向けられて無い。
ここは祐太郎の指示に従おう、俺が気配を消しながら下がろうとすると、
"ミャーミャー" "ミャーミャー"
あ〜まだ居た、も〜何で逃げないかな〜出来れば聞かなかった事にした〜い、でも聞こえちゃったしな〜、命令無視したのばれたら兄ちゃん怒るだろうな〜恐そうだしな〜・・・何よりこの若いスピノザウルスなら殺れそうなんだよな〜
"虎二郎早く逃げよう、"
"どうしたんですか虎二郎さん早く急いで!"
コイツら分かってんのかね?
俺の足なら逃げ切れるが皆の足では追い付かれかねんて?
まぁ良いか。
「祐太郎、皆、子猫拾って一寸下がってろ。」
俺はバトルアックスを肩に担ぎ上げスピノザウルスの足下に向かって走り込んだ、
スピノザウルスもこちらの動きに気づいた様だが如何せん遅い。年を取った個体ならばこちらの動きに対応出来たろうがコイツは駄目だ。
走り込んだ俺はスピノザウルスの足を目掛けてバトルアックスを降り下ろした。
"ギャ〜!"
足の腱を斬られたスピノザウルスは必死で俺を振り払おうとしたが、如何せん動きが鈍い。
俺は尻尾の動きに気を付けながらもう1本の足にバトルアックスを走らせた。
"ズバッ"
"ズシ〜ン"
パニックなったスピノザウルスは足を絡ませ横倒しに倒れこんだ。
あっぶない!大型恐竜殺るときは身体に巻き込まれるなってあれほど言われてたのすっかり忘れてたわ!
危うく下敷きになりかけた俺だが、気づいて見れば、倒れこんだスピノザウルスの頭を見上げるベストポジション・・・やっぱり日頃のおこないが良いからかね、
俺は首と頭の境目と思われる場所にバトルアックスを叩きつけた。
一撃で首を切断することは出来なかったが致命傷は与えられたらしい。
スピノザウルスは必死で立ち上がろうとして足をもつれさせ何回か倒れ混みやがてその動きを止めた。




