五章
雪村悠美は、木々の隙間から降り注ぐ太陽光に目を細めながら民宿を出た。
七年ぶりに会ったクラスメイトたちは、皆堂々として、身体つきも大きくなり、逞しさを増しているように見えた。
それに比べ、自分は何一つ成長していないように思えてならなかった。背だって、高校の中では一番低いし、なにより、性格が変わっていない。遠藤桃花や吉見愛のような明るい女の子ならば、別に変わる必要はないと思う。けれど、自分はそうじゃない。
気持ちが上手く伝えられず、人との付き合いが苦手だった。
夏休み前の進路希望用紙には、動物関係の仕事に就きたいと書いたが、教師からは、見透かされたかのように、もっと積極性を持ちなさいと言われた。
動物と触れる仕事に就くとしても、人間とのやり取りがゼロになるわけじゃないのだから、と。
その言葉は、まるで、動物が好きなのではなく、人との関わりを避けたいからじゃないのかと指摘されたような気がして、一気に自信がなくなった。
同窓会の参加を決めたのは、それを少しでも改善したかったのかもしれない。昔の仲間たちとなら、スムーズにコミュニケーションが取れると思った。何か、掴めるかもしれない、と。
しかし、今のところ、それは上手くいっていなかった。
思わずため息を吐いたとき、先程通った野菜の無人販売所が横にあった。いつの間にか、こんなところまで歩いてきていたのだ。
地元農家が作った、少し歪な野菜たちを何気なく眺めていた雪村は、あることを思い出した。
そして少し考えた後に、募金箱然とした箱へ、百円玉を一枚、投入した。




