変遷
《心力》基本四型の一つ、青型。
長時間の《心力》発動を得意とする型だが、その反面、赤型のような出力はない。が、試合中自軍の球を浮かせ続ける球操手には打って付けだ。
加えて、青型には《心力》を「溜める」特性がある。
セカンドバイタル。
戦闘などで直接使う《心力》とは別に出力された《心力》のことで、使用されるまでは本人の全身を覆う膜のように留まっている。つまり、戦いながらセカンドバイタルを溜めておくことで、青型でも試合後半には爆発的な出力を発揮することができるのだ。
そして、優那はこの「溜める」技術に長けた選手である。
戦いながら《心力》を貯蔵することは簡単なことではない。球操手であれば、球の操作にも気を配らなければならないため尚更厄介だ。
が、そんな困難な条件下でも、優那は青型使いの平均を遥かに上回る速度で十分なセカンドバイタルを確保できる。
それを可能にしているのは、センスや総《心力》量という才能的な理由の他に、彼女の努力と気の利く性格のおかげであろう。
そして。
「――バースト!」
試合開始と同時に全力全開でセカンドバイタルを溜めていた優那の一撃により、《闘技場》内の高度限界まで砂柱が上がる。
そのあまりの威力によって九十九が戦死したかどうかは定かではない。が、誠人には確かに分かった。
「……命中しました」
「――けど、ボクが戦死してない、と」
そう、砲撃が当たったのは九十九の創り出した、本人そっくりの人形だ。
その事実に多少の落胆はあったが、誠人はすぐに別のことを考え始める。
(人形を使った……? 戦死しない個心技なのに……?)
高威力の攻撃を食らうと復活できない?
だとすれば、優那の砲撃は決定打になる。
「神動、二人で相手の隙をつく――」
「させないよ」
耀たち三人は、横薙ぎに振るわれた大蛇のような剣によってまとめて吹き飛ばされた。
転倒した誠人はすぐに立ち上がり、優那の盾になるように位置取る。
自軍の球操手を戦死させるわけにはいかない。
「走って!」
四方八方から迫る大蛇の刃を掻い潜りながら、誠人たちは走る。走る。走る。
しかし、そこで耀が転倒した。
「耀ちゃん!?」
「行ったらダメです、上妃先輩!」
引き返そうとした優那を、誠人は制止する。
そして、倒れた耀にギザギザと無数に生える刃が迫り――
「達花、くん……!?」
「言っておくが、これは友情で助けたとかそういう甘い理由じゃないんだからな」
誠人は、背を向けたままそう言った。見れば、大蛇の刃が脇腹から身体の真ん中まで食い込んでいる。
「色々と武器を使い過ぎた……もう《心力》が尽きかけてる。戦略的に考えて、神動、キミが生き残るほうが賢明だ――キミが上妃先輩を守るんだ」
その言葉を最後に誠人を捉えた大蛇が動き出し、誠人は宙に投げ出された。
空中で刃が消失した大蛇に弄ばれる誠人。
耀はそれを見ながら心臓部を押さえる。
理由は分からないが苦しい。戦用複体に変身しているというのに、身体がバラバラになりそうなほどの激痛が全身に走っている。
自身の身体に生じた異変。河川敷で勇美と決闘したときから感じ始めた違和感。
それが普通ではないことくらい、耀には分かる。
それでもこの決闘に負けるわけにはいかない。この決闘に勝って一軍に上がり、大会で活躍してプロから注目されて、プロになったらプロの中のプロになって――そして。
「……たくさんの他人を楽しませたい」
瞬間、耀の手元から燃え盛る炎のような紅光が迸る。火柱のように噴出した《心力》に伴い、思わず意識を失いそうになるほどの衝撃が走る。
が、耀はそれに構わずにアクセルを踏み切り――
「「「「!?」」」」
そこで突然《闘技場》が解除された。
何者かが第三闘技場に据え置かれた筺体を操作して、決闘を強制終了したのだ。
「九十九先輩」
そしてその声に、場内にいた者全員の視線が集まる。
果たして注目を集めていたのは、遠征に出ていたはずの剛羽だった。




