夏休み業務14
今回短いです。そして長期休暇は終わります。
「……」
声が出しづらい。周りがざらざらする。
……どうやら砂の中に顔面ダイブして埋まっているらしい。
身動きが取れないところから察するに、俺はロケットのように打ち上げられてどこかの浜辺に着陸したのだろう。
とりあえず顔を全身を使って抜く。顔全体にまとわりつく砂が嫌な感じだが、そこは我慢するしかない。
が、すぐさま顔が砂浜にダイブ。
「…………」
とりあえず手と足をこのまま動かす。そして力を込めて能力を発動させ拘束を食い破る。
自由になったのが分かったので俺は顔を出し周りを見渡す。
空は暗く、星がきらめいている。周りに人の気配はなく、街灯が道を照らしているだけ。
スマホを取り出してみたところ、壊れた様子がなく普通に起動。
時間を確認してみたところ午後八時になっており、大分拘束されていたのが分かる。
つぅかここどこだ……? 今更な疑問を浮かべた俺は砂をある程度払ってから地図を起動させて現在位置を確認する。
「……あの野郎のことだからさっきまでいた場所から離れた場所に飛ばしてくると思ったんだが」
現在位置は俺達が昼間居た海岸。道理で人の気配がないわけである。
さぁって俺はこのまま無事にホテルへ向かえるのだろうか。そう思いながら気持ち悪いと砂を落としつつ歩きだした。
スマホが無事だったためにホテルまでの地図を開いて一人寂しく歩いていると、「また何かに巻き込まれたようですね」とシスターがたたずんでいた。
「俺は終わりか?」
「大丈夫です。今の私は休暇の身。報告することはしませんし、報告しても上は『大丈夫』とお判断するでしょう」
「……『元凶』と遭ってきた。そいつも、俺と同類になっていた。デリャージャの方にな」
「……それは………なぜでしょうか?」
「顔見せして世間話したかっただけのような気もするし、ヒーローの研究について語っていた気もする。俺の様子でも見に来たんだろう」
「…………」
俺にもよくわかっていないので可能性がありそうなことを述べていると、彼女は沈黙を貫いていた。
だろうな。反応に困るような発言をしたことは重々承知だ。だが、それ以外に推測出来ないのだから仕方がない。
肩も竦めたから分かり易いだろうと考えながら通り過ぎようとしたところ、「私は、これ以上……あなたに災厄が降りかからないことを願っております」と言われたので少し通り過ぎて足を止める。
「あ? どうしたシスター」
「貴方は不幸過ぎた反動で今の状況にこれた。その状況が続くことを願っているのです、一人の人間として」
「……」
シスターってこんなに心配性だったか……? なんて背中から聞こえた内容に内心で首を傾げながら、俺は再び歩き出しつつ片手を挙げて答えた。
「心配してくれてありがとよ。だけど、幸運なんざずっと続かねぇよ。そんな希望も抱いてねぇし」
「――それはっ」
そのあと後ろから何か叫ばれたが、俺の耳にはもう聞こえていなかった。
旅館に何とか到着した。まだ空いていたおかげで何とか中に入ることができた。ところどころ砂がついてるのが不思議に思われているのだろうが、一般人に言えるわけでもないので勝手に想像してもらう。一応大体掃ったんだがな。
このまま部屋に戻る他ないんだが、戻る前に電話入れておけばよかった。
今更な事実に気付いた時にはすでにエレベーターに乗って部屋を目指していた。
当然、大騒ぎになった。
現在時刻午前零時。疲れたのか俺を心配してくれたのか彩夏達は既に眠りについたので、一人外にいる。
風邪をひくこともないし、そもそも夏なのでそこまで寒さを感じない。
捕まったばかりだというのにこうして外で一夜を過ごす俺も大概頭おかしいなと思いながら夜空を眺める。
綺麗な星空だ。これがずっと前の光だという事実に改めて驚かされる。
「普通の奴らはみんなどこかしらに輝きを持ってるんだろうな……」
羨む様にぼやく。自分の中に存在できないそれを持てる「普通」に対し。
博士に遭ったせいか久し振りに考える。なぜ自分だったのかと。
なぜ自分だけ生き残ったのだろうか。なぜ博士は自分たちを対象にしたのだろうか。なぜ自分は殺されていないのだろうか。なぜ、なぜ、なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ…………
希望のないこの世界は、今になって優しくするのだろうか。
ザワリと背筋が凍り、反射的に部屋の中――彩夏達の方へ振り向く。
心臓の鼓動が速まっているのを自覚しそれらもすぐに戻るが、嫌な感覚は消えてくれない。
「…………あーくっそ。久し振りじゃねぇかこれ」
これが起こること自体あの収容所にいた時以来だ。こんな
世界のすべてをぶち壊したいなんて




