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夏休み業務9

こちらの方もお久しぶりです。

 さて。病院からその日――つまり目を覚ました午後四時に退院し、普通に彩夏と泊まるホテルへタクシーで向かう。


「他の奴らは?」

「まだ避難所の方にいるわよ……私は連絡を受けて来たけど」

「ありがとな」


 そう言って彩夏の頭を撫でると、ボッ! という音が聞こえた。

 すぐさま手を離してから「大丈夫か?」と訊ねると「も、もう!」と嫌そうな声を上げながら顔はすごいほころんでいるのがちらっと見えたので大丈夫なのだろうと思いながら「んじゃ、連絡しておくわ」とスマホで綿貫に電話を入れる。


 …………。

 電話に出たのは四コール目で、そろそろ切ろうかなと思っていたところだった。


『は、ひゃい! 綿貫でございます!!』

「なぁ綿貫。そこにさっきから一緒にいるであろう少女三人いるか?」

『……はい。おりますよ? ところで、肩を撃たれたという話でしたが……大丈夫ですか?』

「問題ない。ともかく、そこにいるなら動かないでと言っておいてくれ。ホテルの迎えをそっちに向かわせることにするから」

『え!? 希望坂さんそれは犯罪なのでは!?』

「……どう飛躍したが知らんが、俺は一人部屋だぞ当たり前のように。二部屋空いてたから普通に」

『あ、そうでしたか……』


 ホッとしたような口調に何考えてたんだこいつはと思いながら「どうせ宿違うだろお前」と言っておく。


『そ、それは……そうですけど……』

「関係ないだろ。任せたぞ」


 そう言ってすぐさま電話を切る。

 その後すぐにホテルに電話をかけて俺ともう一人はタクシーでそちらに向かうから他の三人をヒーロー協会提携の避難場所へ迎えに行ってくださいと連絡する。

 それも終わったのでスマホを仕舞うと「私が連絡しても良かったんだけど?」と隣の彩夏が言ってきたので「ああそうだったな」と本気で失念していたのを隠すように同調する。


 身近な手段程目に入りにくいって本当なんだなと思いながらそっと窓の方に視線を向けると、俺のスマホが鳴りだしたのでもう一度取り出して電話に出る。


「もしもし」

『先程お電話をくださった希望坂様のお電話でございますか?』

「はいそうですが」

『大変申し訳ないのですが、先程の騒動が原因で当ホテルにも駆け込みで宿をとるお客様が増えましてお連れ様がいらっしゃりながら二部屋とっている方たちに移ってもらわないかという電話をしておりまして』

「そうなんですか」


 ピクッと隣の彩夏が反応するのが分かる。


『その際ですがご迷惑をおかけしたという事ですのでおひとり様の宿泊代を無料に、そして次回ご利用の際の割引券を移っていただくお客様にお渡しします。よろしいでしょうか?』


 ちらっと彩夏を見ると、どこか緊張した様子で頬が若干赤くなっていた。


 これ確認とってないけど大丈夫だろうかと思いながら「まぁそれなら仕方ありません」と了承しておく。

 まぁ最悪外に出て一人月明かり徹夜で勉強してるのもいいか。なんて考えていると『申し訳ございません』と言ってから電話が切れた。


「悪いな彩夏。同じ部屋になることになった」

「……へ? あ、うん! ……え?」

「聞いてたんじゃないのか?」

「え、ちょ、ちょっと聞いてなかったけど」

「そうか。ホテルの事情で俺もそっちの部屋に移動することになった」

「そう…………って、えぇ!?」


 タクシー内に響き渡る驚きの声。運転手は顔色一つ変えていないだろうが、相当うるさかっただろう。


「うるさいぞ彩夏。ホテル側も苦渋の決断だったんだよ」

「で、でも! だ、だって!!」

「んなこといわれてもな……最悪部屋の外で寝るし」

「そ、そこまでしなくていいけど……みんなに言わなくていいの?」

「それは言ってくれ。俺から言うには憚れる」

「あ、うん分かったわ」


 そう言うと自分のスマホを弄り始めたので俺は運転手に「すいませんうるさくて」と謝る。

 それにたいし運転手は「いやぁ若い子は元気があってこそですからね」と笑いながら言ってくれた。


「そうですね」

「勤さん。大丈夫だって」

「ん? ああ悪いな」

「まぁホテルの都合なら仕方ないわよ」


 どうやら納得してくれたようなので行っても何とかなるだろう。

 部屋代浮いたとか言う話はしなくていいな。そう思った俺は黙っておくことにした。



 で、ホテルに到着したところ先に三人が綿貫と一緒に来ていた。


 タクシーの代金を払い降りたところ、なぜかその四人に詰め寄られた。


「だ、大丈夫でしたか!?」

「げ、元気そうでよかったです」

「大丈夫でしたか。彩夏がとても慌てていましたよ」

「勤さん撃たれたって聞いた時の慌てっぷりは凄かったよ!」

「ちょ、明美に由梨!? な、ななな何言ってるのよ!!」


 隣で一気に動揺し始めた彩夏を見た俺はすぐさま視線を外して各々の荷物を渡していく。

 それを各々受け取ったのを見てから「それじゃまたな、綿貫」と言ってそのままホテルの中へ入った。


「はい。また」


 やけに素直だったのが怖いが、そこら辺は部屋からでなければ……なんて言っていられないことを思い出したのでこっからどうすっかなと天井を見て思った。

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