表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/44

夕飯前業務

一週間ぶりです。思考が少々ダーク方面で集中できませんでした。

 とりあえず初日の練習は終わった。

 恐怖心というものが在るというのが常なのだが、俺自身の精神構造が冷静でしかなりえないせいかそういうものが存在しなかった。


 つまり、円谷が想定していたリアクションをしなかったため呆れられた。


 まぁエンストしたので彼女は普通に笑っていたが。


 あんなの初日で普通にやれというのは難しい話だ。開度が少し違うだけでエンストとかどんだけ繊細な作業しないといけないんだよ。普通にやってる円谷がすごすぎるっつの。


 で、夕方。


「さて夕食だな」

「そうだね勤。一体どんな料理があるのかな」

「……って、なんで一緒に居るし」

「僕だってここで食べるのさ。当たり前じゃないか」


 そう言って隣で気障たらしくウィンクするが、俺は無視する。

 一々真面目に受け取る必要性がない……というのもあるが、そもそもの話相手にしてないのが正直なところである。


 いや、何かしらの感情を抱かれているのが分かるんだが、基本的に受け取らない人間になっているからすべからくどうでもいいと思えてしまう。

 あぁ最低だな本当。しかしそうとしか考えられないからこんな風になっているんだよな……。


 ふぅと息を吐きながら歩いていると、「どうしたんだいため息なんてついてさ」と聞いてきたので「別に。運転って難しいなと思っただけ」と返す。


「慣れればどうということはないさ」

「まぁそれが一番だろうけどな」


 結局のところそれが一番なのだろう。慣れることが最大の近道なのは間違いないし。

 まぁ面倒だよなと思いながらホテルに入ったところ、丁度フロントで雑誌を読んでいたらしい綿貫が視界に入った。


 あっちはもう終わったのかと思いながら鍵を受け取り、「じゃぁな円谷」と言って部屋に向かうことにした。

 夕飯まで時間はないが、特に食べなくても俺は生きていけるのでわざわざ向かう必要性がないし、どうしても食べたいなら時間帯ずらせばいいだけ。二時間ぐらいあるし。


 などと考えながらエレベーターへ向かっていると、向こうが俺に気付いたのか「勤さん。終わったんですね」と話しかけてきた。

 無視する状況じゃなくなったために足を止めて「ああ。一人だったから勉強してからずっと運転してた」と答える。


「そっちは?」

「受講してる人がたくさんいましたけど、皆さん普通に乗って運転できました。かなり広かったですね。一台だけよく止まっていましたのは勤さんですよね?」

「よく見てたな。エンストで結構止まったんだよ」


 つぅか他の車なんて気にならないほど焦ってた気がする。周囲に車が見えなかったからそうでもなかったろうけど。

 振り返りながら総括していると、なぜか綿貫がうつむいて何かを言っていた。


 というより。


「なんでくっついてくるんだ?」

「お部屋にお邪魔してもよろしいですか?」

「……ああ、そういうことね」


 納得できたので俺は早足でエレベーターへ向かう。

 別に入れてもいいのだが(どうせ部屋はどこも変わらないだろうし)、少しでも俺の情報を漏らしたくないと考えるとあまり入れる訳にはいかない。特につながりそうなものはないが、何がつながるか分からんので……うん。


 ついてくるのが分かっているのでさっさと入って二階と八階のボタンを押して入口を閉める。

 急いで入ってきた綿貫と円谷にボタンを見えない様に移動した俺はすぐに到着した音と同時にドアが開いたので閉じるボタンを押してからすぐに出て行き、二人が気付く前にエレベーターは上に向かった。


 と、ここまでやって最初に部屋番号を教えたことを思い出した俺は意味ないなとため息をついて夕飯を食べるために階段を降りることにした。


 そんな、階段を一歩降りた瞬間にそれは起こった。

 ブゥンという音と共に一斉に電気が消えたのだ。


 突然のことに俺の脚は止まり、その場に留まる。階下からのパニックの声やら何やらが聞こえながらゆっくりと俺は階段に座り込む。


 これで一応の安全は確保された。何かが起こって俺の近くに来たとしても暗闇の中で瞬時に制圧できる。気配も分かるしな。


 そう考えながらじっとしていると、上から勢いよく階段を突き抜けてくる音が聞こえ、しかもそれが俺の当たることが予測できたために反射的にジャンプして階段を降りる。


 無事に着地できた俺はドガン! という音が聞こえたことにビクッとしながら振り返る。

 辺りは真っ暗。故に何も見えない筈なのだが、上から突き抜けてきたせいか穴から光が射しこんでいる。

 その光は更にここの階段を突き抜けたことを示しており、反射的に俺の部屋に置いてあった紙の内容を思い出した。


 何が降って来たのか分からない。だが、確実にものではない。

 つぅかどっから落ちてきたんだと思い顔を上げたところ、靴底が間近に見えたので反射的に顔を引っ込める。


 それはそのまま下に落下していった。誰なのかはさっぱりわからんまま。


 ここでも厄介ごとに巻き込まれるとかふざけろコンチクショウと思いながら穴を覗きこもうと思ったが面倒だったのでやめ、そのまま放っておくことにした。


 知らない方が良いことがあるしな、きっと。


 そう思いながら電気が復旧したようなので、夕飯が食べれるかどうかを確かめるために地下へ向かうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ