表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/44

研修業務その二

タイトル思い浮かばなくて安直に。

 研修が始まって一週間が経過した。


 その間連続通り魔は警察の手によって逮捕され、協会に護送された。ヒーローが出てこなかった理由は興味がないので知らないが、ともかく一件落着した。


 が、そんなのはこちらに関係ない。現在も報告書類などをまとめている。


 で、俺はというと。


「――――で?」

『ですから……もう一度会ってもらえませんでしょうか。娘がもう居た堪れなくて』

「はぁ……」


 いつぞやに告白をバッサリ切って以来話を聞かない社長令嬢の親に懇願されていた。


 なんでそんなことになっているかというと――どうやら彼女、生まれて初めてきっぱりと拒絶されたのが心底ショックらしく、何をやるにも生気がないらしい。

 まぁ一応業務が回っているのだが、問題が男性らしい。

 何かをかけて逃げ回るようになったと。そのせいで引きこもりがちになりかけているとのこと。

 それを危惧して原因となる俺が所属している協会に相談したところ、『直接交渉して何とかしてくれ』と言われた、という。


 で、現在その交渉になっている。ちなみに研修生達はまだ掃除中だとのこと。抜き打ちで一回テストやって散々だった点数を突き付けたとか笑って言ってたな貴臣さん。

 あの人もストレス発散してるのだろうかあれでなんて考えながら、俺は「確かに俺の責任もあるのでしょうが、会いに行くことはできません」と答えた。


『なぜですかっ!?』

「こちらの仕事を承知していただいてるでしょうが、そうほいほいと仕事を抜け出すことができないんです。その上研修期間。代役がおりませんので尚更抜け出すことはできないんです」

『そこを何とか……お願い出来ませんでしょうか…!! このままですと取り返しのつかないことに……』


 とんでもなく必死に懇願する相手。が、そんなものは時間で解決するか自分で切り替えてもらう以外に俺が提示できる解決策がないので「何と言われようがしばらくは忙しいのでそちらの要望に応えられません。失礼します」と言って強引に電話を切った。


 親バカなのか本当にショックを引きずったのか。なんにせよそう言う風に心配されるだけましだと思った俺は、書類の進行具合を確認するために二階へ行くか掃除をするか悩んでから掃除することにした。




 前回掃除する人間がいると説明したのにどうして俺が掃除をしているのかというと、三階には研修生を連れてこさせない様にしているからだ。社長のフロアに関して言えば、同じ仕事をする人間だろうが同じ支社ではない限りは入れない決まりになっている。


 もし入ってしまい異動届を出された場合いろいろ面倒というか単に邪魔が増えるだけという認識が、うちらの間(社長達)での共通。

 人が増えたり減ったりするのはその支社にとって資金が減らされるし給料が減るという問題に発展しかねないからな、本当。


 なので一人奮闘しながら掃除をする。基本的に一人で行動しているのでそこら辺は慣れたものだ。


 掃除をすること二十分。まだ廊下の部分の半分ほどしかやってないというのに、中断せざるを得なかった。


 なぜならスマホが振動したから。誰かが連絡を寄越したためである。


「もしもし」

『社長、ひょっとして掃除中ですか?』

「ん? まぁ」

『こっちは丁度書類提出する準備できたんで』

「ああそうか」


 そう言って電話を切った俺は、誰も来ないことをいいことにそのまま放置して二階へ降りた。



「取り来たぞ、書類」

「あ、社長。これです」


 そう言って書類の束を渡してくる。それを受け取った俺は「そろそろ昼なんじゃねぇか?」と言っておく。

 それを聞いた連中が『ああ』と納得したので「んじゃ、俺これ見てから昼にするから。その間食べてていいぞ」と言って部屋を出た。


 うちの会社は十二時になったからと言ってチャイムが鳴ることはない。昼を示すものを鳴らしたとして、仕事に追われてそれどころではない場合が多いからだ。

 そこまで多いのかと問われれば恐らく否定できるぐらいには件数が少ないのだろうが、書類の精密さを売りとしているので少しでもおかしな点があったらやり直しさせる。その結果として昼食が遅れたり仕事がたまったりする。


 一応優先順位位は弁えているから勝手にとってるだろうなと思いながら三階に戻った俺は、掃除道具をそのままにしているのを無視して書類を確認していくことにした。


 前に言ったと思うが、俺は不眠不休、食事をとらなくても仕事はできる。ただし人間の限界以上はできない。精々が一週間。一週間経過でぱったりと倒れ入院する。

 以前それをやって麗夏さんに怒られたので最長でも五日位までその生活を続けたら食事をとるなりしているが、基本的に一食二食は抜いて問題ない。


 こういう時ばかり使うというのに自分を嫌っているのも都合が良いよなと苦笑しながら細かいミスを見つけては直していると、ノックの音が聞こえたので「どうぞ」とドアの方を見ないで返事をする。


「失礼します。社長、三階の廊下に掃除道具が置きっ放しになっていますが…?」

「これ終わったら掃除する。で、わざわざそのために来たわけじゃないだろ、あんた」


 聞き覚えのない声のため警戒を孕ませてそう返事をすると、「おや、ばれましたか」とあっさり言ったので顔を向ける。


 そこにいたのは燕尾服を着た老人。佇まいはきちっとしており、誰がどう見ても執事に他ならない。


「アポイントメントを受けた覚えはないが?」

「それは申し訳ございません。ですが、こちらもそれだけ急だと思っていただければ」

「ここまではどうやって?」

「受付で説明をして秘書の肩に通していただきました」

「そう」


 貴臣さんいらないお節介だぞおいとため息をつきながら考えたが、それでも手を休めることはせずに仕事を続ける。


「ご覧のとおり仕事の最中ですので」

「それが終わるまでお待ちします」

「そこから掃除をするので」

「ではお手伝いでも?」

「結構。自分でできることは自分でしたい性分ですので」

「ではお飲み物はいかがでしょう」

「要りません」


 そう言うとその老人は何も言わなくなった。

 顔を見てないので表情は分からないがきっと感情が見えないだろうなと仕事を続ける。


 そこから十分ぐらいで提出第一陣は終了したので、見終わった書類を揃えてから立ち上がる。


「終わったようですね」


 ずっと立ち続けているだろうに顔色一つ変えないのを見てこちらも顔色を変えずに通り過ぎる。

 部屋を出る際、俺は彼に対し言った。


「一つ、言っておきます」

「なんですか?」

「どれだけ急でも人としての配慮が欠けたら印象を悪くさせますよ」


 その返事を聞かず俺は扉を閉めて外に出た、瞬間。

 部屋の中からブゥウンという音が聞こえた。

 俺が部屋から出て社員以外の人間がその場にいた場合強制的にどこかへ飛ばされるというトラップが発動したようなので、そういやいうの忘れてたと頭を掻きながら書類を再提出させるために下に降りた。



 戻ってきたら案の定誰もいなかったので、無くなったものがないかチェックをしてから掃除を再開することにした。



 掃除も無事に終わり、書類も完璧と言えるぐらいになったのが午前十二時。研修生はここらへん知らないだろうと思いながら腹が鳴っていることを気にせず書類を転送してから能力発動を確認してコンビニへ向かい、夜食を食べながら宿泊室へ戻り寝ることにしたのだが……


 ものすごい爆撃音に叩き起こされ、なんだなんだと窓を開けると遠くの方で煙が上がっているのが見えたので徹夜だなこりゃと思い伸びをしてから顔を洗って情報を待つことにした。



ではでは

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ