5,近い距離。遠い心。
1人ぼっちは寂しいけれど、1人じゃないと信じてた。
共犯者―近い距離。遠い心。
一樹はなくてはならない存在になっていた。
2人で勉強したり、たまに息抜きと言って遊びに行ったり、1度だけ一樹の家に遊びに行ったこともあった。
私と一樹は…本当は付き合ってるんじゃないか…?
2人で居るとそんな勘違いをしてしまう。
そして、廊下を並んで歩く一樹と綾の姿を見るたびに、堕ちていく私がいた。
嫉妬とか…。
罪悪感とか…。
意地とか…。
そういうモノと、好きだという気持ちを天秤に乗せる。
その度に自分がわからなくなる…。
「あれ?一樹、今日は自転車で来てたんだ。」
学校から少し離れた場所で一樹を待っていた私は、単語帳から顔をあげる。
「今日は遅刻しそうだったんだ…後ろ、乗る?」
「いい。私、彼女いる人の自転車の後ろには乗らない主義だから。」
なんでそんな事を言ったのか、自分でもわからない。
もちろんそんな主義を唱えたのは生まれて初めてで、一樹もそんな事お見通しの様子で笑った。
「へぇ。それ、かっこいいなぁ。やっぱり俺、舞子の事好きだ。」
そんな甘く優しい言葉を最近よく聞く。
でも今日の私は、与えられるものだけでは満足出来ないくらい貪欲で、意地悪だった。
「2番目に?」
一樹の顔は見ない。
どんな顔してるかなんて…だいたいわかる。
きっとガッカリした顔だ。
「あ…うん。」
「1番は綾でしょ?」
「そうだけど…どうしたの今日?」
どうしたの?今日はいつもより面倒くさいな。
一樹の言葉を私の頭が自動変換する。
貪欲が許されるのは1番だけで、意地悪が効果を発揮するのは1番であるからこそなんだ…。
笑え。
いつもみたいに…、自分を偽るのは簡単なハズだ。
でも、私は今やっと気付いた。
今の私に必要なのは他人の目を気にせずに好きと言える勇気じゃなくて、ただ潔さなんだ。
「なぁ…何で泣くんだよ。俺が悪かったから、泣き止めよ。な?」
一樹が私を覗き込む。
見てはいけない。
彼の顔を見たら決心が鈍るから…。
「私…もぉムリ。ごめん、距離…おきたい。」
「……。言ってる意味わかってる?」
一樹の声色が変わる。意味なんて1つしかないのに…。
さようならって事。
何も言わずにコクっとうなずく。
涙が邪魔してさようならも言えない。
「そっか…。わかったよ。」
長い沈黙の後、一樹が呟く様に言った。
今ならまだ去って行く一樹を呼び止められるだろうか?
自分と自分が戦ってるって言うのはきっとこういう時の事を言うのだ。
終わった。
全て終わったんだと自分に言い聞かせると、安心感と悲しみが同時に襲って来て、私は声を我慢するのもバカらしくなって久しぶりに声をあげて泣いた。
後悔なんて、山ほどある。
それでも、もう迷わない。
大学生と言うよりはOLやサラリーマン向けの喫茶店が待ち合わせ場所。
早く着いて待ってるなんてカッコ悪いと思って、わざと20分も遅れて行ったのに、片手をあげて
「こっち。」
と教えてくれた彼を見た瞬間に、こんなところまで来ただけで十分カッコ悪い気がした。
絶対って言葉がどれくらいの力を持つのか。
世の中に100%の事なんて存在するのか。
そんな事、私は知らない。
ただ、それが絶対であることを信じていたいだけ。
前回の話とは正反対の急展開をした第5話でした。
もぉ半分は書けました。あとは折り返すだけですが…まだまだ2人は上ったり落ちたりを繰り返します。
誤字発見などでも気軽に感想送ってくれると嬉しいです。




