#2
「………?」
僕は目を覚ました。
「………?」
僕は目を覚ました?
覚ました?
いや、そんなはずはない。
だって僕は、車に跳ねられて死んだんだから。
しかし僕の目には、自分の手が、足が、
はっきりと映っている。
「………」
辺りを見回すが、それはとても表現しにくかった。
強いて表現するなら、白い空間。
見渡す限り、白い空間。
「お目覚め?」
「!?」
突如聞こえた声に吃驚して振り向くと、そこには少女が立っていた。
「………君は?」
「私には名前がない。あるのは感覚と、肢体を司る魂のみ…」
「………?」
何を言っているんだ?
「…そ、それよりもここ、どこなんだよ?」
「そうね…貴方達の世界の言葉で表現するなら、『冥界』と言ったところかしら」
「………!」
「つまり貴方は、『死んだ』のよ」
「………」
死んだ…
死んだ
死んだ。
「やはり、僕は車に跳ねられて…」
「大体わかっているわ」
「?」
少女は腕を後ろで組むと、改めて話してきた。
「私は貴方の運命を伝えるためにここに来た」
「う…運命?」
「まず…貴方の左手…」
「左手って…!!」
僕は自分の左手を見て目を剥いた。
あの時の、
「あの時のエメラルド…。何故持っているんだ?」
「………」
「君、このエメラルドのこと知ってるの?」
僕は少女に聞いた。
「それは暁の翠玉。触れた者が、翠玉の継承者となる…」
「継承者?」
「貴方はあの道で宝石を拾い、それを持った。その時点で次の継承者は貴方に決まった…」
「ちょ、ちょっと待てよ、継承者になったら何しなきゃいけないんだ」
「………」
少女は少し黙ってから、こう答えた。
「貴方は現実世界に起こる異常事態を一つずつ変えて行かなくてはならない。それが、継承者になった者の定め…」
「ミ…ミッション?」
「その不死身の体を活かして、頑張って…」
「お、おい!」
継承者?
不死身?
わからないことだらけじゃないか。
「………?」
気が付くと、少女は消えていた。
「………!」
そして宝石が放つ緑色の光が、僕を一瞬で包み込む。
「………!」
僕は目を覚ました。
どうやら路地に倒れていたようだ。
「ゆ…夢?」
左手を見てみる。
しっかりとエメラルドが握られていることから、どうやら夢ではないようだった。
「………」
(貴方はあの道で宝石を拾い、それを持った。その時点で次の継承者は貴方に決まった…)
僕は何をすればいいんだ?
わからないまま、僕は家へと帰宅した。