又、出逢い~の、採用され~の
「!!」
なんだ、あの君の悪い笑みは!
何度も、さっきの笑みを頭から消そうとしても、どうしても消えない。
それよりか、どんどん脳みそに染み付いている様な気がする。
…………駄目だ、全然離れない。
律が座っているソファーに、俺も腰を掛け、膝に肘をつき、そこに頭を乗せて、一つ溜め息を吐いた。
「どうした?」
俺の顔を覗き込みながら、聞く律。
………………を何故だろう、思わず殴ってしまった。
殴られた律は、わけがわからない、と言う顔で見ている。
滑稽な顔だ、この顔ならさっきの女の顔が、忘れられそうだ。
ああ、そうか、この顔で忘れようと思って、無意識に殴ったのか。
「――なんで殴った!」
血相変えて、涙目になりながら訴えてくる律。
今回は強く殴り過ぎた。
珍しく俺を睨む律に、一応謝罪と理由を話した。
「……スマン、何となくだ……」
「何がスマンっだ!結局、僕が何もしなくても、殴るんだな!お前!理不尽極まりないよ!」
ヘラヘラっと、いつもの律の様に笑うと、珍しく律の拳が飛んできた。
立場が逆だな。
「そう言うとこ、直せよ、ホントに友達いなくなるぞ?」
律は俺を殴った拳を、擦りながら言う。
俺は珍しく、睨んだり、殴ったり、俺に説教した律に、驚いた、が…………別に俺は、友達が欲しい訳じゃない。
寧ろ、いないなら、いないで……それで良い。
その方が気が楽だ、変に気を使う必要も、ケンカの時も足手まといに、ならなくて良い。
だから、本当の事を言えば、律も俺から離れていって欲しい。
なのにこいつは、しつこく俺に付きまとう。
俺は溜め息を吐いて、律に再びスンマセンねと、一言謝っておく、勿論、反省なんかしてないが。
と言うか、こんなところで、喧嘩する俺達って、非常識じゃないか?。
疑問に思ったのも、つかの間、ガチャっと、後ろから音がして振り向くと、さっき俺達が入ってきた扉が開き、見覚えのある顔が入ってきた。
「「――!!」」
その顔は、河原戦車爆走事件の加害者といっても良い、自転車に乗った女だった。
思わず、声を上げそうになったが、下唇を噛んで抑えた。
聞きたいことは、山々だが、頭の悪い俺が、話をしても、はぐらかされるに決まっている。
何より、今は喧嘩しているが、話し合い担当の律が何も言わないのだ。
俺が、しゃしゃり出る必要はない。
しかし偶然にも程がある。
まさか、こんなところで会うとは、思っていなかった俺達は、今だ驚きを隠しきれない。
又、手榴弾を渡されたら、どうしようと、考えていた俺だが、耳に聞き覚えのある声が、聞こえた。
「ボス~、待ってくださいまし」
ああ、このお嬢様みたいな、クソ丁寧な喋り方は、多分戦車に乗って、スピーカーで叫んでいた女だ。
いや、絶対にそうだ。
こいつら、顔見知りだったのか!。
その女は走って、ボスと呼んだ女の、後ろまで来た。
ボスは舌打ちすると、俺達の前のソファーに座った。
言い忘れていたが、この部屋には、俺達が座っているソファーと、今女達が座ったソファー、そしてその二つに挟まれて、テーブルが一つあるくらいの、実に殺風景な部屋だ。
外から見た、感じとは全く違う。
チラッとお嬢様みたいな女を見ると、高そうな服や靴を、身に付けている感じからして、このマンションみたいな家の、持ち主だろう。
だが、座っているボスを見ると、テーブルに足を乗せている、俺は本当はこいつが持ち主なんじゃないかと、思った。
名前からしても、ボスだし。
あるいは、お嬢様女の姉か…………。
いや、それはないか、ボスの服は俺達と、同じ普通の服だし、何より、顔が全然似ていない。
俺が、あまりにボスの顔を、マジマジ見るものだから、ボスは苦い顔をして、睨んで来た。
さっきから、全然座る気配の無かった、お嬢様女がボスの隣にゆっくり、腰を下ろし、口を開いた。
「先日は失礼なことを致しましたわ。申し訳ありませ。」
深々と頭を下げる、お嬢様女。
その隣の、ボスはシレっとした顔で、そっぽを向いている。
覚えてたのかよ!じゃあ、ボスも謝れよ!
「私はマリア、こちらの一見近寄りがたい目をしているのは、ここのボス、希奈ちゃんですわ。」
「日向火景です」
「優樹律です」
いつもは、女を見たら騒ぐ律も、あの髪の長い女を見てからか、全然騒がない。
静かで嬉しいが……。
「貴殿方の事は知っていますわ。バイト募集の紙を見たのでしょう?なら、大歓迎ですわ。二人とも採用ですわ。」
おいおい、何故俺達を知っている。
と言うか、かなり呆気なくないか?。
履歴書も、何も見せていないのに、身元のわからない、男子高校生二人を、採用して良いのか?。
いや、決して、俺達は悪いことをしていない。
ただ、こんなところで働いて、俺達も大丈夫か、と言うことだ。
だが、流石は頭の良い律。
俺が気になった事を、スラスラと聞いている。
「そんな心配、要らねぇよ、これから、お前らをテストする」
ニヤリと笑いながら言うと、希奈さんはスクッと立ち上がり、入ってきた扉に向かって歩き出した。
その後ろを追って、マリアさんも立ち上がって、歩き出した。
俺達は、どうしたら良いのか解らず、半場ボーっと、座っていたら、マリアさんに手招きされて、付いていった。
ボス
高井希奈
年齢・16歳
職業・トレジャーハンター
能力・戦闘
その他・男勝り
史上最年少、共に最速のトレジャーハンター
(↑の意味は、近々本編で明かされます)
綺麗なものが大好き
汚いものは大嫌い
お嬢様
アリエラ・マリア
年齢・不明
職業・トレジャーハンター補佐
能力・戦闘、会計、コック
その他・希奈が集めた、お宝コレクション、金の管理
白人
どこかの国のお嬢様