消えた財布
「ほら、腐った考えしか出さないだろ?」
「誰にしゃべってんの? お前」
あの後、騒ぎが起きた河原のご近所さんや、目撃者が、警察に通報したらしく、俺達が、爆発させて直後、河原を囲むように、物凄い量の、パトカーがやって来た。
川に潜り、その様子を見ていた俺達は、出るに出られなくなり、泳げない律を引っ張りながら俺は、川上まで泳いだ。
真夏の夕方と言っても、びしょびしょで帰るのは、流石に寒い。
「………………なぁ、火景、あの戦車おかしくないか?」
「ああ、確かに可笑しいな、河原を爆走するなんて」
「そう言う事じゃねぇよ! ………………警察が、爆発した戦車を調べていたけど、救急車が来ていないところを見ると、中には誰も乗っていなかったんじゃないか?
だが、そうなれば辻褄が合わない。
僕達が発砲されたとき、確かに人は乗っていた
可笑しいと思わないか?」
相変わらず、そんなことまで考えていたのか、こいつは……。
俺とは、ホント正反対だな。
全く、尊敬に値する。
「へ、へ、へっくしゅ!」
「夏なのに寒いな」
他人事の様に言う律。
こいつの事だから、自分がやったのを忘れているんだと、思う。
「腹へったな?」
「そうだな…………どっかで、食べて帰る?」
「ああ、そうするか」
いくら持っているか、見ようと思い
ズボンの後ろポケットに入れていた、財布を探す。
「………………ねぇ、律君?俺の、財布知らない?」
「知らない、川にでも落としたんじゃないの?」
呆れたように、笑う律に、お前は?と、聞くと
同じくズボンの後ろポケットを、探すと
慌てて、着ていたブレザーを逆さまにした。
「僕のも…………ない…」
「間抜け」
良い高校生が、川で泳いで、財布無くしたなんて、笑い者も良いとこだ。
結局、二人してポケットやら、鞄やらを探して出てきたのが、二人合わせて、300円。
「…………何買える?」
「150円のメンチカツぐらい」
「じゃ、それ買って、食いながら帰るか……」
「それか、お前がカツアゲすれば?」
馬鹿な事を言う律を、思いっきり殴ってやった。
そんなことをすれば、俺は夏休み明けに、呼び出しを食らうことになる。
殴られた律は、殴られた所を擦りながら、冗談だ
と、笑いながら着いてくる。
「冗談に聞こえねぇーよ」
「バレた?実は半分本気」
ヘラヘラ笑いながら、またそんな馬鹿げた事を言う。
こいつの言うことは、大体が馬鹿げた事だ。
だから、友達も多いし、誰とでも仲良くなれるんだろう。
実質俺も、こいつといて楽しい。
だが、言うと調子に乗るのは分かっているから、死んでも言ってやらないが
「馬鹿な事言ってねぇで、さっさと買って、帰るぞ」
「ヘイヘイ」