表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

出逢って

夏休み前日、

終業式が終わり、俺が、喧しい蝉の声を聞きながら、律と下校中の事だった。

いつもは、商店街の賑やかな景色見ながら、帰るのだが、その日は河原で、楽しそうにサッカーをする、子供達を見ながら帰っていた。



「若い子は良いねぇ」

「……ジジ臭い……」

「相変わらず、毒舌だなぁ、だから友達がいな

いんだ」



大きなお世話だと、言わんばかりに睨んでやると、 両手を、口の近くでグーにして、キャーキャー言っている。

確かに律の言う通り、俺は友達が少ない、いないと言っても間違いではない。

昔から、口より先に手が出るタイプの俺。

そのせいか、ガキの頃から、みんな怖がって、近づこうとしなかった。

それに対し、手より先に口が出るタイプの律。

勿論、成績優秀で、友達も多かった。

正反対な、俺達だが意外とうまく行く。

俺がケンカをして、律が言い訳を考える、 律が口ゲンカで負けても、俺がケンカに勝つ、そして又、律に言い訳を考えて貰う。

これの無限ループだ。

中学の頃から、それが続いて今に至る。

こんな俺達が、どうやって出逢ったのか、今じゃお互い覚えてもいない。

きっと、どーでも良い出逢い、だったのだろう。

そんな事が、脳内を駆け巡っているなか、律が目を丸くしながら、急に立ち止まって、俺に話しかけてきた。



「なぁ、火景、前から来るあれってなんだ?」



はぁ? と思い見てみれば、何かが物凄い速さで、走っている…………のか?



「おい、あれなんだ?」

「僕が聞いたんだ!!」



ダンダン近づいてきて、ハッキリ見える様になってきた。

あれは、走っているよりも、物凄い速さで動いているの方が、正しいだろう。




「…………あれ、自転車だよな?」



チラリと律の顔を見ながら言うが、律は釘付けになって見ている。




「そうだな、その後ろから、又なんか追っかけて来たぞ?」

「車?」

「馬鹿が、戦車だろ」



二人で納得し顔を見合わせた。



「「……戦車ーー!!!!」」





ガシャンガシャンと、工事の時にしか聞かないような、音が聞こえる。



「前の自転車!! 止まりなさいですわ!!」



それに混じって、戦車からスピーカで、停止を要求している。



「止まるかー!! お前が先に止まれ!」

「お断りしますわ!」



自転車を必死にこいでいる女は、更に自転車をこぐ。

次第に方向は俺達が立っている位置に向いていた。

俺は、何故戦車がこんなところを、走っているのか、これは本当に現実なのか、実は夢なんじゃないかと、頭がショートしそうなぐらい、考えたが普段使わない頭で、そんな事を考えても何も考えつかない。

ハッと、俺の隣には律がいたことを、考え付いた。

急いで律がいた方を見ると、そこには、もう姿はなく、代わりに、律が起こしたであろう、砂煙が舞っている。



「――あの、野郎!」



俺は、地面を蹴り、走り出した。

だが、流石は、学校マラソン大会毎年べべの律君。

俺が少し走るだけで、隙だらけの、背中が目の前にあった。



「火景、ちょ……へ、ヘルプ」



ゼェゼェ言いながら、もう、息が上がっている律に、呆て溜め息を吐く。



「俺を置いて逃げたのは、どこのどいつだ?」



俺は疑いの目を向けた。



「嫌だなぁー、火景君、君はすぐ、追い付くと、思って、先に、走ってたんじゃ、ないかぁ」



ヘラっと、笑う律に又、呆て、溜め息を吐いた。

俺は、昔からのこいつの、性格を忘れかけていた。

他人を見捨てる、最低な性格を。

だが、一言文句を言ってやろうと、首を右に90度に回すと律が、あんぐり口を開けて、俺を見ている。



「おーい、律くーん、間抜け面になってるぞー」



元々だが、何て思いながら、今だに口をあんぐり開けている、律を見ると、どうやら、目線は俺ではないらしい。

じゃあ、誰だ?と疑問に思い、俺は自分の左側を見た。

そっちを見れば、律が何故口をあんぐり開けていたのか、一目瞭然だった。

そこには、戦車に追いかけられている、自転車に乗った女がいたからだ。

その女は髪が長くて、顔も整った顔付きをしている。

こう言うのを美人と言うのだろう。

俺も律も、暫く走りながら、その女を見ていた。

いや、律の場合は見とれて、いたんだろう。

俺達からの熱い視線に気づいたんだろう、その女は俺達を見た。



「見せもんじゃねぇーぞ!! コルァァ!」

「「ガラ悪いな!!」」



美人な顔に似合わず、鬼の形相で叫ばれ、思わず突っ込んでしまった、俺達を、女がじっと睨む。

俺は、澄ました顔で前を向きながら走り続け、律は女と目を合わさないように、下を向いて走っている。



「女の子なんだから、もう少し綺麗な言葉

を、使ってくださいまし!」



いつのまにか、追い付いていた、戦車がスピーカーで叫ぶ。

まだ、追いかけていたのか!




「ウルセー! ターコ! バーカ!」

「何て言葉使うんですか!! 貴方の方こそ、お馬鹿ですわ!」

「お前も使ってんじゃねェか! この、バイオレンス女!!」

「痛いとこ突きますわね!! こうなったら、男子高校生共々、吹き飛ばして差し上げますわ!」



俺らは顔を見合せて、首を傾げると、戦車の砲身をこちらに向けて問答無用と、言わんばかりに、弾を飛ばしてきた。

弾が、走っていた律の横に、タイミング良く落ちた。

それを合図に俺達は、一つ雄叫びを上げて、無我夢中で走った。

さっきまで静かだった、河原が一気に騒がしくなった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ