第02話 怒った共犯者
加筆修正しました
行動とは逃げの一種であるというのはよく聞かない話である。
それはある種の御伽噺じみていてよく理解できないのだ。
現実味があまり無いのだ。
御伽話じみていて、まるっきりファンタジーそれはまるでフィルムストーリーのように脳を焼くけれどきっとその人の大事な物の一つになるそれとは根本から違うのだとその”本質”から理解出来るのだ。
行動とは逃げの一種であるが故に
だからこそ私は行動する。
このテスト終わりの休み時間にそう考えていた。
鼻を刺すのは飯やおかずの仄かな香り
周りを包むのは喧騒とも言うべき昼ご飯の光景。
がやがやという音の似合うようなその現実は私の心に少しの不安と安寧を齎した。
皆に悪口を言われている事を心配しているのではない。
ただ気になるのだ。
”感じればこそ動く”というポリシーの元探している何故か複数形で呼ばれない彼ら、
神の名を背負い圧倒的な力を持つ最高最大の人類の敵、吸血鬼。
鎖国をする以前交流のあった国の一つ。
しかし彼らの脅威は大きく分けて三つだと考えられている。
一つ場所の関係の無い脅威。
彼らが霞ヶ原や首脳部の集まった宇宙ステーションを攻撃、壊滅させたように彼らの脅威は大地から空、全てに及ぶ。既に都市の数多くが破壊されていることも考えに入れなければならない程の脅威なのだ。
この「座標の無視」という脅威は、未だ顕在であるというのが日本の吸血鬼対策のプロ達の加えて日本首脳部の明確な判断である
して二つ、大規模な破壊
人々を血の海とし肉塊の死体しか残さず殺されるのだ。
そのある種跡形もない破壊はこの国に住む人類にとっては脅威でしかない。
そして三つ、形骸化してしまった故の驚異
しかし人々はこれらの事について知らん顔をするのだ。
当たり前に日常を謳歌し、日々を充実したものにせんと努力する。
経過した600年という時間が故に
・・・そこの神話を背負う彼らはけれどここ600年は現れていないのだ。
600年という時間こそが先程の破壊を、悲劇を骸同然にする。
私は、それが・・
「どうしたの~ソラ~。」
「・・・なんでもない。」
そう言葉にして私は視点を現実に戻す。
皆ここに居るのかいないのか分かりにくい程の時間。
昼休みの佳境、それこそが今だ。
終わりかけのこの時間にまで考えてしまった。私はそう感じた
けれど失敗したとは思っていない
・・”感じればこそ動く”というポリシー上どうにも思わない訳ではないけれどこれだって”感じた”ことなのだ。考えることくらいきっと許される。
むしろ”彼らに会ってみたい”と感じている私としては人殺しとは言え吸血鬼達に会ったとき話すことが多くなる・・筈である、不謹慎ではあるが
「なら~どうするか・・どの作戦に決めるか提案するからとっとと決めてよ~。”感じればこそ動く”のがポリシーなんでしょ~」
そう言って煽るようなエマの口調は全くもっていつもの伸ばし棒付きのセリフのようである。
伸ばし棒というより「曲がった伸ばし棒」と言うべきか、自分でも何お言っているのか理解できなかったその言葉にしかし私は三泊程置いてからこう答える。
エマの無意識の煽りに答えるように
「勿論だ。」
エマの目を正面で見て私はただただ微笑みながらそう言った。
□
「この微分方程式ではここの変形した式を代入してだな・・」
ペンをとんとんとんとしながらも頬杖をつき耳を半分にしながらもしかし私は授業を聞く。
横で欠伸をするエマを見ながらも少し目を閉じ考える。
エマが提案した作戦は三つに分けられる。
まず一つ目
体調不良を装う作戦である。
それが少しだけでもあるいは大げさに思える程でも誰だって心配はする。
それがどんな屑や外道であってもあるいは犯罪者であっても少しだけでも気には掛けるのだ。
それを利用しようというのがエマの作戦であった、外道以下である。
しかしこれでは駄目というのが私の考えだ。
なにせアホロン毛先生には人を思う気持ちという物がない。
生徒が宿題を忘れた時は廊下に立たせながら箒を渡し教室の警備ごっこをさせ
遅刻すれば焼きそばパンを123個買ってこさせようとする奴なのだ・・得体が知れない。
「あの日」であったとしてもあの男はきっと何の情も感じさせないだろう事は想像に難くないというのが私の所感でこのクラス皆の感想である。
ならば二つ目はと言えば
先生トイレー作戦である。
先程の作戦と何が違うのだ「あの日」でもダメじゃないのか・・と皆思っている筈である。
だが少し落ちてついて聞いて欲しいミナはこう言ったのだ。
「生理現象を我慢させる人間などそんなにいないいればそいつは外道以下である」・・と「~」を付けながらも真剣な風に。
外道以下は君である。
・・なんて言葉を与えたエマの反応を少しだけ思いながらもしかし冷静に考えればこの作戦は中々ありな部類であるとエマは考えていた。なにせ生理現象なのだ、あのアホロン毛先生に与えられる試練は。
いくらデリカシーや他人を思いやる心が欠如していたって自身の体験を鑑みればそれを我慢する事がどれだけつらいか分かる筈である。
故にこれは可能性の高い作戦の一つとエマは言っていた。しかし私はこれを却下した
123個の焼きそばパンを遅刻した程度で買ってくる奴がまともにこれを取り合う訳がないのだ。
そしての三つ目は単純。
アホロン毛先生を殺す作戦である。
ついに外道以下に落ちたかというのは待って欲しい。
これにも理由があるのだ・・そうエマは言った。
デリカシーも無く、他人を思いやる心も無いのであれば殺せばいいというのがエマの言葉であった。
単純明快思考放棄の作戦がこれである。
可能性の高さで言えば私がいる時点で成功がほぼ確定している物のこんな非倫理的なことは駄目なのである。
誰だって人なのだ、人を殺したいとはなるまい。
それは私も同じ出あった。しかし私はこれを受け止め、エマの言葉を受け止めた。
部分的に
故にこそ私は目を開く。
そこにあるのは皆が板書を取る姿でありアホロン毛先生が授業をしている姿であった。
横にいるエマを見ればじっと私を見ていた。
ずっと私を見ていたのだという事はその場面だけで理解出来たのだ、はっきりと。
ならばどうするか私の行動は決まっていた。
スッと立ち上がり私はこう言った。
「先生、「あの日」なんでトイレ行ってきていいですか。」
そう・・はっきりアホロン毛先生の目を見ながらもこう私は言った
がらんがらんという椅子が机の支柱に当たる音を耳に入れながらも私は思う。
『何も悔いはない・・』と
□
あの日とは誕生日の事であるという解説をアホロン毛先生に向かって大きな声で言ったあと私は保健室のベッドで眠っていた。
大まか作戦通りそれこそがエマと私の感想である。
横にいるのは保険係のエマである。
・・カチカチと針の進む中でその音を頭の中から追い出し私は振り替えっていた。
昼前の最後の授業。
数学の教師でもあり体育の教師でもあるアホロン毛先生の煩わしいテストを受ける前にパワープレイを得意とする力士のような所業故か意識を失い保健室で起きた私を起こしに来たように思えたのはエマが保険係として保健室にいたからであるという事を皆には覚えておいて欲しい。
きっと重要だから。
・・下らない冗談はともかく
今の時点としてはここはとても都合がいいのだ。
保健室の先生はいるが仲間である。
あの人も私達の"感じれば動く"というポリシーをも共有した同士である。少しだけ変な人ではある者の単純ではあるのだというのが懐柔したエマの言葉であった
次いでに言うなら先の「あの日」改め誕生日なのでトイレに行かせてください作戦は三つの作戦の合一からした物である。
体調不良を装い、トイレに行きたいと訴えてアホロン毛先生も社会的に・・殺す。
誕生日だからなので一時的な効力しか持たないとは言え三つの作戦を一つにした最悪の作戦を思いついてしまったのだそうして目的を果たした私はこれからどうするか知らない。
エマも横に居ると言ったがあれこそ眠っているだけである。
私の横の布団ですやすやと。
ぐっすり就寝中であるエマに思うところが無い訳ではないモノのしかし私はこれを受け入れた。
先の作戦を断行した報いだと断じて
「そうは言ってないでしょ〜起きてるよ〜」
・・・起きていた。
起きていたなら早く言ってほしいエマ。
正直怯えて途方に暮れていた所なんだ。
「小声でそんな風に囁かないで〜変な気分になっちゃうよ〜まぁ冗談はともかく、これからは動くよ〜」
どんな風にそう呟けばけれどエマは言った。
私の耳元に唇を添え少し大きな声で。
「今度は・・・」
「何してるガキども。」
その声に底冷えする。
身が縮こまる、何せ先の声は聞き覚えがあるからだ。
エマですら目をそちらに向けている。
・・最もエマは少々よく動いているから区別は付きにくいモノの私には分かった、彼女が警戒している事を。
時計の針の中が進む中でも
「何してるガキども。」
語調を凍えさせ身を凍させるその声は他ならない"あの先生"のものだ。
そうあの先生・・・
「アホロン毛先生。」
限りない震えを隠した言葉にアホロン毛先生改めて養護教諭はこう言った。エマと私に対して
・・カチカチと時計の針が進む中で
「何してるガキども。」
アホ毛をピンと立たせながらアホみたいに三度言葉を繰り返してけれど厳格にアホロン毛先生ならぬ兆候寺輪廻はそう言った、
共犯者として怒った目と顔で
・・・カチカチと進む時計の針が少しだけ印象的に思えた。




