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体の中のGPS  作者: TM
9/14

第9話_音声ファイル

翌日、夜。


地上は静まり返っていた。

“月”と呼ぶにはあまりに機械的な、監視ドローンの赤い光が空を這っている。


俺たちは地下の秘密通路を通って、東側の“廃棄区域”へ向かっていた。


「……ここ、本当に使われてないのか?」

ケンジが不安げに呟く。


「15年前までは、難民キャンプがあったらしい。

食料自給のための畑も、非公式に管理されてたって記録がある」

ナナが小声で答える。


崩れかけたコンクリートの壁を抜け、薄暗いトンネルを越えると、

目の前に“開けた空間”が広がった。


ビルの影に囲まれた、土の広場。

そこに、かろうじて生き残った野菜の苗たちが、雑草にまぎれて風に揺れていた。


 


「……生きてる」

ナナが目を見開く。


「これなら地下の人たちを……!」


ケンジがすぐに警戒に入る。


「周囲を確認する。warmanの反応がないとは限らん」


俺は土に触れた。

暖かくはなかったが、確かに“命”の感触があった。


 


そのとき――


ノイズ。耳鳴り。誰かの声。


「……タ……ス……ケ……」


振り返るが、誰もいない。


「またか……」

あの声。あの気配。間違いなく、ライズだった。


 


「ナナ、通信波形をチェックしてくれ。何かが近くで干渉してる」

「……出てる。非常に微弱だけど、これ、明らかにwarmanの通信じゃない。

“非公式信号”。位置は、あの奥の……電源塔の残骸から」


俺たちは半壊した鉄骨構造の下へ向かう。


瓦礫の奥に、ひとつだけ黒く焼け焦げた携帯端末が落ちていた。

ナナがそれを拾い、端末と同期させる。


読み取った瞬間、画面に映し出されたのは――


 


「記録ファイル:RAIZE_VOICE-00」


 


俺は思わず声を飲んだ。

再生ボタンを押すと、音声が響いた。


 


「……もしこれを聞いてるなら、俺はもう消えてるかもしれない。

けど、信じてくれ。warmanの中には、“意志”が残せる。

俺は実験体だった。warmanと接続された最初の人間だった――」


 


「ライズ……お前……」


音声は続く。


「完全には支配されなかった。だから俺は、“内部”から奴らを壊す方法を探した。

そのヒントはNODE-Cの奥、“深層意識領域”にある。

誰か、届くなら、そこまで……たどり着いてくれ……頼む」


通信が途切れる。


だが、希望は残された。


「NODE-Cに入るだけじゃ足りない。奥に“意志”の層があるってことか」

ナナが呟く。


「つまり、ライズは今も内部で……戦ってる」

俺は拳を握る。


ケンジが周囲を警戒しながら戻ってくる。


「食料は何とか確保できそうだ。だが問題は……ここ、すでに誰かに監視されてる」


「warmanか?」


「いや……違う。うっすらしか影が見えなかったが、多分人間だ。

けど、服装も動きも、どうも“奴隷”には見えなかった」


 


俺たちは顔を見合わせた。


生き延びているのは、地下の人間だけじゃない?


もしかすると――この世界のどこかに、“まだ戦っている別の勢力”がいるのかもしれない。


 


作戦決行まで、あと18時間。


地上は再び動き出す。

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