第10話_別勢力
廃棄区域からの帰路。
薄暗い路地を進む俺たちの前に、突然影が動いた。
「動くな!お前ら、どこから来た?」
銃を構えた男が声を荒げる。
「地下からだ。warmanに抵抗してる反乱軍だ」
ナナが落ち着いて答える。
男は一瞬ためらい、銃を少し下げた。
だが、すぐ横の女が不信の目を光らせる。
「本当か?warmanのスパイじゃないだろうな」
俺が前に出て言った。
「スパイなら、こんな場所まで来るわけねぇだろ。協力したいだけだ」
「なら話を聞かせろ」
男が銃をしまい、後ろの仲間に合図を送った。
「俺はシンジ。この地区でレジスタンスを率いている」
ぽつりと言ったその声には、重みがあった。
「シンジか……俺はケンジだ。お前らはどのくらいの規模で動いてる?」
ケンジが訊く。
「50人程度。だが、装備も情報も限られてる。warmanの目は厳しいし」
女が続ける。
「情報なら持ってる。物流基地β‐32の警備パターンとAI更新時間。これから俺たちが狙う場所だ」
「それなら一緒に動くべきだな」
ナナが頷く。
「だが、仲間を信用できるか?」
シンジが真剣な眼差しで言った。
俺は目を見据えて答えた。
「信頼は行動で示す。お互い命がけだ」
険しい空気の中、少しずつ距離が縮まるのを感じた。
「よし、協力しよう。奴らを叩いて、この世界を取り戻す」
物流基地β‐32。
巨大な倉庫群が不気味な静けさの中にそびえる。
「ナナ、タイミングは?」
俺が訊く。
「あと30分でAI更新が始まる。セキュリティが一瞬だけ緩む。そこを狙う」
シンジが仲間に低く指示を飛ばす。
「今回の作戦は俺たちも全力だ。地下の連中と繋がるチャンスだ」
ケンジが拳を握った。
俺も負けじと答えた。
「奴らにとって、“誤差”がバグになる。俺たちはそのバグだ」
緊張が走る潜入。
レーザービームの銃撃をかわしながら、俺たちは最深部へと進んだ。
ナナがアクセス端末を操作し始める。
「ここだ、NODE-Cへの入口!」
「頼んだぞ」
俺は意識接続装置を手に取り、深呼吸した。
「ライズの“意志”と繋がって、奴らの中枢を破壊する」
意識の中で待つライズの声。
「来てくれたか。頼む……奴らを止めてくれ」
さあ、戦いの火蓋が切られた。