鉄砲は数打っても当たらない
『下手な鉄砲も数打ちゃ当たる』
私はこの言葉を胸に、日々努力を重ねてきた。
たとえ下手くそでも、何度も何度も挑戦して…経験を積み重ねるうちにいつか成功につながるのだと信じた。
何度も何度も打っているうちに、自分の技量が上がって精度が増し、狙った的を射抜くようになるはずだと疑わなかった。
打てば打つほど己の糧となるのだと…、がむしゃらに弾を打った。
下手でもいい、数を打つことこそが最も優先するべきことなのだと…、無我夢中で弾を打った。
弾を打ち続けるのは、とても…とても大変だった。
弾は、無限に湧いて出てくるものでは…無かったのだ。
弾を打つことだけに執着した結果、弾の精度はどんどん下がっていった。
的を撃ち抜く事はもちろん、的に届かないような…貧弱な弾ばかりを打つようになった。
打っても打っても、かすりもしない弾。
打ったところで、全く当たらない弾。
……鉄砲を撃つ意味が、解らなくなった。
何百、何万、何億と打ってきた弾は、1つも…当たらなかったのだ。
これから先、どれほど弾を打ったとしても…当たらないとしか、思えない。
もう、鉄砲を、むやみやたらと打つことは…やめよう。
私は、太ももに仕込んである小型ナイフを一本、手に取り。
満身の力を込め…、的に向かって投げつけたのだった。