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第7章 後始末

1年後。ようやく地表面上の汚染の除染作業が可能なほどまでに魔法濃度が下がった。人々は、除染が終わった地域から、再び地表に上がり始めた。


「1年ぶりだな」

雪野が、少し古くなったアパートを見て、ぼやいた。

「でも、私は、あまり変わっているようには見えないな。それよりも、今回はいままで歴史書にかかれていないほど、激しい魔法暴走だったね」

「いや、そもそも魔法暴走が書かれた歴史書は、これまでなかったんだから」

宮崎が加賀に突っ込む。

「それよりも、建物が一つも壊れていないのが不思議だね。ちょっとは壊れていてもいいようなものだけど…」

首を傾げる宮崎に、雪野が言った。周りの建物は大破しているものも珍しくないというのに、この古アパートだけは、しっかりと姿を保っている。

「このアパートは、ちょっと特殊な結界を張っているんだ。その影響で、一切破壊されずに残ったんだと思うよ」

「なるほどな。で、雪野は、いつの間にそんなものを付けたんだ?」

平水が、雪野に聞く。

「ああ、ここに来た時に、チョロリッと」

「へ~。そんな事していたんだ…」

加賀と宮崎が、雪野をにらみ付ける。

「な、なんだよ。二人して」

「べ~つ~に~」

そのまま、階段をかけ上がって行った。

「こら、ちょっと待て!」

2人は、なにも聞いていない振りをして、部屋に入った。そして、後ずさりしながら出てきた。

「あ…、あれ…なに…?」

「え?」

慌ててついてきた雪野と平水は、加賀と宮崎が指差している物を見た。それは、真っ黒い何かだった。その中から人の腕のようなものが出つつあった。

言葉を失い、腰が抜けてしまった4人は、ただ、その人が目の前に出てくる事だけを見る事しか出来なかった。


「やれやれ、久し振りに現実世界に出てこれたが…しまったな、場所を間違えたか。ここは、48代後の世界だな」

「お、お前は、誰だ!」

雪野がその人を指しながら叫ぶ。

「自分か?自分は、昔の世界にいた神でスタディン神と言う。クシャトルと言う名前の人が、どこかにいないか?先に出てきて、そのままどこかへ消えたんだ」

「それだったら、俺の会社で働いている。呼ぼうか?」

「ああ、頼んだ」

雪野はクシャトルを呼んだ。5分もしないうちに来た。

「お呼びでしょうか」

「ああ、クシャトル上級役員兼総務大臣。君の知り合いか?」

雪野はスタディン神を指差した。

「お兄ちゃん!」

周りの観客は、何も言う事が出来なくなった。


とりあえず、アパートの中に全員を入れて、座ってゆっくり話をすることにした。

「お兄ちゃんって、どういう事?」

まったく事情が飲み込めない4人に対して、スタディン神とクシャトルは説明を始めた。


「自分が、この世界に到着した時には、すでに、4社が成長しつつある時だった。今の世界、サラマンドラ社、シルフィード社、グノミード社、オンディーヌ社の、4社の事だが、彼らは、元々神でもなんでもない、ただの人間だった。だが、彼らは、他の人達にはない物を持っていた」

スタディン神が流暢に説明を始めた。クシャトルは、それを見ているだけだった。他の人達は、ただ、それを聞いているだけだった。

「さて、その4社の社長が持っていた物とは、この宇宙空間ができる前にあった宇宙空間において、崩壊した神の残骸だ。この世界で魔法完全体と呼んでいるそれこそ、魔法を引き起こす粒子一つ一つが、全ては昔いた神の残骸だ。彼らは、それを持っていたからこそ、ここまで成長できた。さらに、彼らは永遠の命も得た事も、それに起因する」

雪野が話をさえぎった。

「ちょっと待て。永遠の命ってなんだ?」

「永遠の命は、永遠の命だ。彼らは死ぬ事がない。その代わりに、家族はどんどん死んでいった。今使われている名前は無論偽名だ。自分がこの世界に始めてきた時には、別の会議があってあまり時間がなかった。その時に、偶然落したものが、今、平水が持っている魔法完全体だ。君達が大企業に成長できたのも、この魔法完全体によるものだ。ただ、君達はこの世界のいわゆる"神"になる気はないようだが」

「無論です。私たちは、神ではなく一人の人間です。すでに、神ではないと言う事を公言しています」

「だが、君達の心の中に、本当に、神になりたくないという思いしかないのだろうか。実際は、神と言う崇高な存在になりたいのではないだろうか。だが、今回は、それを論じているのではない。この世界が生まれる前、自分達は、君達と同じような人間だった。今は、神と言う存在になっている。しかし、これも仮の宿と同じようなもの。いずれは神ではなくなるだろう。人間だった時、自分は、イフニと言う名前の神の名の下に生まれた。彼も、自分と同じように、元々人間だった。その時の妹が、このクシャトルだ」

「なるほど…。そう言う事か」

雪野はうなずいた。他の3人も同じように分かった時のジェスチャーをしていた。

「さて、これで分かってもらえただろう。なぜ、自分がクシャトルにお兄ちゃんと呼ばれるのか。クシャトル、どうだ?この世界の生活は」

「今の所は、楽しいよ。同僚も仲良くしてくれるから」

「そうか…。では、今日は、これで失礼させてもらおう。今回は、妹の様子を見に来ただけだからな」

そのまま、スタディン神は一瞬でどこかへ消えた。


「神がいるとはね」

クシャトルが、本社に戻っていくのを見送りながら、宮崎がつぶやいた。

「この世界の神は、各社の社長だけだって?それはないね。なにせ、我が社には、本物の神がいるんだから」

平水が言った。

「とりあえず入ろう。ここはもうすぐ暗くなる」

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