第6章 魔法災害
いつものアパートにて、4人は、何らかの実験をしていた。その時、緩やかな振動が、アパートを飲み込んだ。
「今、揺れたか?」
「うん」
雪野が、揺れた事を他の人に確認すると、すぐさま、アパートのドアを開けた。そして、部屋に入れたばかりのテレビをつけた。中古ながらも、性能はとても良かった。
「さきほど、サラマンドラ社魔法開発研究所にて、魔法多重衝突が発生しました。サラマンドラ社社長は、発生直後に、非常事態宣言を布告し、当該施設より半径3km以内の全ての魔法使用を緊急停止させ、戒厳令を敷きました………」
しかし、その途端に、音声が途切れた。いや、音声だけでなく、映像も消えた。
「あれ?どうしたんだ?」
慌てて、ベランダから外を見ると、何か黒いものが、惑星表面を覆っているところだった。雪野は、3人に言った。
「今すぐシェルターに避難だ!」
すぐさま、2階から1階に降り、ついこの前作った、シェルターに避難した。そこから、全ての社の機能が保たれる仕組みだった。しかし、避難する前に、ワマラ国全域に緊急避難命令を布告し、何も言わせず近隣のシェルターに避難するように言った。国民は、大半が従い、地下に潜った。
それぞれのシェルターは、通路でつながっており、不必要時には、倉庫として活躍していた。なので、このような時には、大規模なシェルターのための倉庫が必要になっていた。ワマラ社本社があり、世界最後の先進国と言われているハポンネは、そのような土地がほとんどなく、各戸の地下に、シェルターの2階部分にそのような倉庫が設置されていた。
「現在の地表面の状況は?」
雪野は、平水に聞いた。
「魔法暴走により、全地表面は汚染。現在、魔法使用禁止中」
「他シェルターの状況は?」
「本社シェルターは、作業中の全社員が入った事を確認。他シェルターに対しても、現在確認中」
「確認が終わったらすぐに知らせてくれ。次、他国の状況は?」
宮崎が報告した。
「現在確認終了したものでは、サラマンドラ社は、壊滅的大打撃、死傷者は多数いる模様。シルフィード社は、サラマンドラ社に出向させている社員以外の、無事を99%確認、残り1%は、死亡した様子。グノミード社は、サラマンドラ社より、軽微ながらも、相当な被害を被った模様。オンディーヌ社は、全国民の無事を確認した模様です。サラマンドラ社本社にいた者は、全員死亡したと言う情報が入りました。現在、ワマラ社は87%の無事を確認、残りも急いでいます」
「了解した。では、これより、緊急閣議を招集する。本社へ向かうぞ」
「了解」
一行は、シェルター内通路を通って、いつもなら20分で着ける本社までを、1時間かけて歩いた。
「社長!ご無事で何よりです」
迎えたのは、クシャトル上級役員兼総務大臣と先生だった。
「他の人達は?」
「既に集まっている。君達が来るのを待っていたんだ」
「早く来てください」
クシャトルに急かされ、4人は、急いでシェルター内閣議室に向かった。
「全議員は無事を確認。現在、各行政管区より、報告待ち」
歩きながら、クシャトルに現在の状況を確認してもらっていた。
「何割が報告した?」
「489行政管区中、7割です。現在も増加中」
「現時点での死傷者数は?」
「死亡者は報告されていませんが、第371行政管区にて、将棋倒しが発生したと言う情報があります。そのほかは、現時点ではありません」
「そうか」
その時、閣議室に到着した。
「元首!」
「社長!」
どちらかを言う声が、閣議室に響いた。
「みんな、座ってくれ。今回の事は、今まで報告されていない特殊事態だ。議会の緊急招集を決定したい。それに、緊急事態法に基づく緊急援助も」
「議会は既に緊急招集をかけました。現在、既に定足数の人数が集まっています。すぐに議会を開会できます」
「では、すぐに、臨時議場へ」
一行は、すぐに立ち上がり、ちょうど隣にある議会臨時議事堂へ移った。
この議事堂は、地表面上にある通常の議事堂とほとんど同じ構造になっていた。
「これより、第3回議会を開会する。なお、今回は、左院の緊急集会とし、緊急事態法に基づく、国家元首の名において、国家指揮権を行使するものとする。本議会は、緊急集会であり、右院の事後承認なき場合は、すぐさまその事業を停止しなければならない事を改めて確認する。では、審議内容に入る。本集会は、緊急事態法に基づく、国家内の緊急援助及び、災害時安全保護隊による、国民保護も審議してもらいたい」
議長に、言った。
それから数時間後には、緊急援助資金として特別予算が組まれ、さらに、災害時安全保護隊も、臨時に出動する事が決まった。総指揮権は左院議会議長にあり、左院議会議長は議会に報告をしなければならないと言う内容だった。
「これより、保護態を出動させる。なお、本隊の活動範囲は、ワマラ国内のみとし、活動内容は、緊急物資を輸送する事、傷病者を救護する事とする」
こうして、災害時安全保護隊が行動を始めた。